今、世界9カ国で翻訳されたある書籍が話題になっている。タイトルは『射精責任』(原著:ガブリエル・ブレア、翻訳:村井 理子/太田出版)だ。書籍にはこう書かれている。
「セックスをするから望まない妊娠をするのではありません。望まない妊娠は男性が無責任に射精をした場合にのみ起きるのです」
同書では、男女の身体の仕組み、避妊具の手軽さの違い、出産、子育ての現実などあらゆる角度から避妊をしない男性への訴えがつづられている。
中には「共感したし、モヤモヤが晴れて勇気づけられた」「タイトルみて驚いた人ほど読んでほしい」と共感の声が上がる一方、「女性も避妊できるし断ることもできる」と、すべてを男性の責任にすることに批判的な声もあがっている。
仙台のNPO法人「キミノトナリ」では、思いがけない妊娠で悩む女性たちの支援活動をしている。ニュース番組「ABEMA Prime」が代表の東田美香氏を取材すると、この日は以前から支援している女性(20代前半)と共に区役所に向かっていた。
女性は、彼氏と別れた後に妊娠が発覚。産むか産まないか、親の説得、産んだ後どう育てるか。悩みに悩んで、一人で産み育てる決意をした。区役所で出生届を提出した女性は「まずは一旦、手続きが一段落したのでちょっと心が軽くなりました」と話す。
これまで無責任な射精をする男性たちを見てきた東田氏。「『ゴムしてって言ったんだけどしてくれなくて断り切れなかった』っていうのはよくある。妊娠検査薬で陽性が出たって送ったら『ごめん受け止めきれない』の一言でLINEをブロックされて終わり。私たちのところにご相談を寄せてくださるのは女性が9割だ。ちゃんと責任をとれる男性がいるのも分かるが、この活動だけをやっていると本当にろくでもない男しかいない。避妊を頼んだのにしてもらえなかったというお話は多い」と嘆く。
実際に新生児の遺棄事件も相次いで起こっている。東田氏は「遺棄事件は、誰にも相談できなかった結果、起きている」と話す。
「『誰にも相談できない』のはなぜか。こんなにネットが発達して、ちょっと調べれば相談機関が出てくる。でも、その人の生育歴だったり、今まで人に相談してろくなことがなかった、大人は誰も助けてくれなかったと負の経験を重ねていると、もう誰にも相談できない。それで産んだ結果、遺棄してしまった人が多い」
同書では「排卵はコントロールできないが、射精は違う」「男性用避妊具は、驚くほど簡単に手に入る」「女性は妊娠から途中退場できない」などの訴えが「28個の提言」としてまとめられている。
東田氏は「“途中退場できない”は非常にうまい言い方だと思う」と話す。
「まず『生理が遅れた』という段階から、やっぱり妊娠していたと判明する。判断をしている中で、男性は逃げることができる。ところが、女性は決断をして、少なくとも最終的に決着がつくまでは逃げられない。ここは大きな違いだ」
ギャルタレントのあおちゃんぺは「状況にもよると思う。避妊した上で妊娠してしまったなら、お互いの責任だ。もし、避妊してくれないなら、私は性交渉をしない。許容してしまった時点で女性にも責任があるんじゃないかと思う」とコメント。その上で「女性のほうが危険性が高いのは事実だ。だから、危機管理能力も女性のほうが上げなきゃいけない。『危険だ』と思うなら、自分で避妊すると思う。私は避妊目的ではないが、ピルを飲んでいる。女性だけど避妊具も用意する。『男性に100%責任がある』とは言えないと思う」と述べた。
同書によると、女性が妊娠できる受精可能な日数は一生で見て480日、一方で男性は毎日で2万4800日、生殖能力は女性の50倍になるという。
あおちゃんぺは「性別によって、人生に与える比重が全く違うとは思う」とした上で「家族に相談できないまま産んでしまって、悲惨な結末を迎える女性もいる。養育費の差し押えなど、男性も逃げられないようにするべき。養育権も男性に与えて、両方がちゃんと子どもに関われるようにすることが大事だと思う」と話す。
愛知医科大学病院に勤務する医師の後藤礼司氏は「本を否定するわけではない」とした上で「コミュニケーションエラーの部分をかなり過大広告している」と指摘する。
「確かに男性の避妊具は安価でアクセスしやすい。逆に低容量ピルには、副作用がある。我々循環器の医師が見逃せない血栓症の問題もある。金銭的な支援もそうだが、避妊をしないことで何が起きるのか、具体的なものが見えてない。相手が低用量ピルを飲んでいるから避妊具を付けなくてもいいだろうと判断する人もいるだろう。もし、大事な彼女が低用量ピルを飲んで、血栓症で亡くなってしまったらどうなるか。アクセスがいいからだけではなく、ちゃんと現実を直視しなきゃいけない」
(「ABEMA Prime」より)
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