2022年6月に大分県別府市で起きた「大学生ひき逃げ死亡事件」
1年以上経ったいまなお逃亡中の八田與一(はった・よいち)容疑者(27)は、事件の凶悪性から「重要指名手配」に指定されたが、あくまで罪名は道路交通法(救護義務)違反。遺族や支援者らは、時効のない「殺人罪」に切り替えるよう求める署名活動を行っている。
声なき声を大きな声として、意志決定者に届ける「オンライン署名」。世界最大のプラットフォーム「change.org(チェンジ・ドット・オーグ)」の日本語版は、2022年時点のユーザーが388万人、キャンペーンは1130件立ち上げられた。そのうち87件のキャンペーンが成功したという。
別府ひき逃げ事件の署名は、すでにchange.org上では2023年9月20日時点で5万人に達した。オンラインだけでなく、別府市内や他県でも街頭署名が行われている。遺族や支援者らによる「別府・早期解決を願う会」の事務局長は、紙の署名でも1200人を集めていると語る。
「逃げ得は本当に許さないということを、八田容疑者にもいよいよ感じてほしいです。少しでも人としての気持ちがあるのなら、自分から自首してほしいと思っています」(「別府・早期解決を願う会」事務局長)
同様にオンライン署名を立ち上げた、交通事故被害者の遺族がいる。栃木県宇都宮市の佐々木多恵子さんは今年2月、夫の一匡さん(当時63歳)を亡くした。一般道でバイクの運転中に、時速160キロ以上で走る乗用車に追突されたのだ。
法定速度を100キロ以上も上回る、異常なスピードだった。しかも乗用車は、仲間のバイク2台と追い越しなどを繰り返しながら走行していたが、宇都宮地検は「過失運転致死」を罪名として適用した。
多恵子さんは「なぜ危険運転致死罪にならないのか」との思いから、検察の訴因(起訴内容)変更を求めて、対面での署名とともに、オンラインでも声をあげた。署名は3カ月半で6万3000人超が集まっている。
「自分の思いが世間に認められた気持ちになる。それが本当に励みとなっています。(賛同者からの)コメントを見るのが日課になっていて、皆さんの思いが伝わるようなコメントをいただくと、とてもうれしくて。この活動をして間違ってなかったんだな、という気持ちになっています」(佐々木多恵子さん)
同じ被害者遺族として、多恵子さんも別府の署名活動に注目していたという。
「全国指名手配になって、これもオンライン署名の効果が出ているのかなと。そういう発信の声も届いたのかと思って、私としてはうれしかった。同じ遺族の立場としてやっぱり見てしまうので」(佐々木多恵子さん)
元東京都知事・舛添要一氏は、署名の存在を「政治家や行政の立場から見ても、ものすごいプレッシャーに感じますね」と指摘する。大勢の人々が「行政の不作為」と問題視することは、選挙での投票行動にも影響するため、「ひとつの民主主義。署名活動は意義があると思います」と評価した。
弁護士の清原博氏は、司法でも影響があり、過去には検察を動かした事案があると説明する。大分市内で時速190キロ以上を出して起きた死亡事故で、大分地検は当初、「過失運転致死」で起訴したものの、遺族らの署名を受けて、「危険運転致死」に起訴内容が変更されたという。
「検察庁も警察も、国民の信頼があって成り立っていますから。署名活動は大きいと思います」(清原弁護士)
(『ABEMA的ニュースショー』より)
■Pick Up
・キー局全落ち!“下剋上“西澤由夏アナの「意外すぎる人生」
・「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
・「ABEMA NEWSチャンネル」知られざる番組制作の舞台裏