「今回の物価高騰は知恵を絞る限界」 給食がピンチ? 業者の6割が業績不振「質素すぎる」の声も
【映像】大人は豪華?大阪市の学校給食と府庁食堂の比較
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 先月、全国各地の学校や施設で突然、給食や食事の提供が止まり問題となった。そんな中、業務を委託されていた広島市の「ホーユー」が裁判所から破産手続き開始の決定を受けた。負債総額は約16億8000万円。山浦芳樹社長は「価格だけ据え置いたまま、物価上昇が続いた。ビジネスモデルが崩壊している」と説明した。

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 帝国データバンクによると、学校給食などを手がける業者の6割以上が業績不振で、3割以上が赤字だったという。それが原因なのか、学校給食自体が質素になったという指摘も。品質を保つためにはどうすればいいのか、『ABEMA Prime』で議論した。

■「売上が立たないぐらい安いお金で仕事を請け負っている」

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 ホーユーの関東エリアマネージャーは「大手と勝負できるのは金額しかなく、売上が立たないぐらい安いお金で仕事を請け負っている」と話しているが、経営の判断ミスと言えるのか。学校給食については文科省が「学校給食摂取基準」を定めており、栄養基準を満たしていなかった市は改善対応を求められる。

 学校給食の制度に詳しい跡見学園女子大学教授の鳫咲子氏は「ガイドラインとして文部科学省が定めている、子どもたちにとって必要な栄養素があるので、メニューもそれに合うように栄養士たちが頭をひねっている。ただ、学校は子どもたちの人数が多いので、やはり規格の揃ったものをということになり、通常よりやや割高な食材を使う」と説明。

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 ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏は「僕の出身の東京都北区は当時、その学校で給食を作るのがルールだった。家庭菜園でできた食材がその日に入るので、フードロスも処理可能だった。しかし、どんどんコストダウンして、自校で給食を作るのは無理だからと外部発注すると、余計フードロス対策もできなくなるという、がんじがらめになっている気がする」と指摘する。

 鳫氏は「日本全体では、学校で作っているところが小学校では6割程度あるが、中学校になると3割以下になる。残りは給食センターがそれぞれ半分ぐらい。中学校はあとデリバリー(食缶)方式という形で、民間がお弁当を配食する。中学校は小学校より給食が始まるのが遅れて、横浜市のように長年問題になっていた所もある。センターや学校に給食室を作ることはできないので、民間のデリバリー給食をということで少しずつ始まって、中学校の給食も100%に近くなってきた」と述べた。

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 そんな中で、業者の6割以上が業績不振だという状況に、「学校で作っていた時は弾力的な費用も出しやすかった。しかし今、民間に業務委託しているのが50%ぐらい。食材費が高騰する中での自治体の対応は、無償化に踏み切るか値上げをするかだが、それがなかなかできないために入札で安い業者に決め、それが業者にとってはリスクにつながってくる」とした。

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 料理家で食育インストラクターの和田明日香氏は「安く手に入る未利用魚や、それこそ無駄になっているような食材を使えば、もう少し安くボリュームを出せるのかもしれない。ただ、見たことない魚に子どもは手をつけないかもと思って、鮭を選んだりする。給食におんぶにだっこという考え方ではなく、どんなものを出されても食べられるように、小さい時からいろんな食材に触れさせるという家庭側の準備も必要だと思う。もちろんご家庭によっては100円、10円の値上げでも厳しいのはわかるが、子どもの体を作るという意味では、痛み分けで保護者が払ってもいいのではないか」との見方を示した。

■「今回の食材費の高騰は知恵を絞る限界」

 内閣府の2016年の資料によると、保護者が年に支払う給食費は小学校が5万1192円(児童・生徒数648万人)、中学校が5万8584円(同324万人)で、合計5120億円。それだけの財源があれば公立の給食費が無償化できることになる。

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 鳫氏は「この試算は少し前で、今は子どもが減っていて4000億円くらいだ」とした上で、「無償化している自治体は近年増えたが、自治体レベルの動きだ。そうすると格差があって、東京23区内や比較的財政に余裕があるところが先行している。首長主導で無償化した自治体が多いようだが、それができない自治体からは“国に支援してほしい”という声があがっている」と説明。

 国は6月に出されたこども未来戦略方針で、「無償化実現に向け、自治体の取り組みを調査」し、2024年に課題を整理して方策を検討するとしている。鳫氏は「先ほどの試算が出た時点からずっと“課題を整理”というコメントだ。家庭間の格差が拡大している中で、給食は唯一、公的な主体が関与できる食のマーケット。どういう食品を献立に出して、国民の食生活をボトムアップするかは、まさに食育だと思う」と述べた。

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 韓国では、入学金や授業料、教科書代、制服(一部補助)などが無償になる中で、給食も無償化された流れがある。「オーガニック食材を使うことによって、中小の農家、オーガニック農家の市場が大きくなる効果があることがわかった。ただ日本では、給食費よりも先に医療費の無償化が全国の自治体で進んだという歴史はある」と説明。

 鳫氏は「昔は給食の調理員さんが公務員で、シングルマザーの方などのいい職場になっていたが、民間委託になってそういう職場ではなくなってしまっている」とした上で、「(全国学校)給食甲子園みたいな仕組みがあって、栄養士の皆さんも本当に限られた予算の中で工夫を凝らしていらっしゃる。でも、今回の食材費の高騰は知恵を絞る限界だと思う」と述べた。(『ABEMA Prime』より)

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