総務省が9月22日に発表した8月の全国の消費者物価指数は、前年同月比3.1%上昇と、依然高止まりが続いている。
そんな中、経団連は2024年度税制改正に関する提言を発表し、少子化対策など社会保障制度を維持するため、消費税の引き上げも有力な選択肢の1つだと指摘。十倉雅和会長も会見で「消費(増)税から逃げてはいけない」と述べた。しかし、賃金が上がらず円安や物価高が続く今、多くの反発の声が上がっている。
長らく日本経済低迷の象徴と言われたデフレを脱却する日は来るのか。日本経済の現在地と未来について『ABEMA Prime』で議論した。
今の状況について、エコノミストで投資スクール「複眼経済塾」塾頭のエミン・ユルマズ氏は「3~5%くらいのインフレはそんなに悪いものじゃない。日本でベースマネーは増えたものの、トータルマネーは増えなかった。つまりどんなに金融緩和をしても、一般人はお金を借りないし、持っているお金を使わない。デフレでは、今日より明日買うほうが安い。しかし、今iPhoneの価格などを見ると今日買いたいはず。そういうインフレ自体は、日本人の消費意欲を高める効果があるので悪いことではないと思う」との見方を示す。
一方、実質賃金は16カ月連続マイナスで、物価に給与の上昇が追いついていない。「大体の企業は、ベースの給料ではなくボーナスを上げたがる。このインフレは長く続かない、好景気にはならない、賃金を上げたら戻せない、と経営者は思っているからだ。逆にパラダイムが変わったと思えれば、間違いなくベースそのものを上げてくるだろう。私は賃金は後から追いついてきて、実質賃金も上がると思う」とする。
ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏は「問題なのは、誰でもできる仕事だ。コンビニやスーパーの店員は賃金上昇がほとんどない。記憶にある限り、労働者が戦って給料を上げるストライキもない。優秀な人はどんどん賃金が上がって、スキルのない人はどんどん苦しくなっていくという、二極化が広がるんじゃないか。」と指摘。
エミン氏は「日本の有効求人倍率は全体で1.3倍だが、セクター別に見るとものすごくバラけている。例えば、建設解体業は10倍を超えていて人が見つからない一方、事務や総務は0.3倍で人があり余っている」「日本が強みとしているような半導体製造装置や機械、素材といったものは今でも技術的な優位性がある。そして、中国とのデカップリングによって日本にサプライチェーンが戻ってくるだろう。要は、給料が高い職が増えれば、全体の底上げに繋がる。さらに、インバウンドのインフラはパンク寸前で、ここには間違いなく人が必要だ。レジャー、宿泊、観光といったところの賃金は間違いなく上がってくる」と答えた。
これにひろゆき氏が「中国とのデカップリングの話で言えば、人経費が安くてクオリティも高いから日本に雇用を戻すっていうのは、利益が高いこととは違う。下請けとして使われてるだけだ。また、儲かっている人たちがいる大都市だけで成立して、産業も無い地方がゴーストタウンになるという、アメリカのような構造になると思う」との見解を示すと、エミン氏は「おっしゃるとおりのことはアメリカでもヨーロッパでも起きている。それはまた別の大きな問題の1つだ。実は5年前から日本への直接投資が増えてきていて、対GDP比では中国を超えた。これからもっと増えていくだろう。日本の地方の問題や高齢化問題というのは、海外からの投資で乗り越えていくという手はあると思っている」と述べた。
さらにひろゆき氏は「観光は日本のGDPで7%程度だ。京都など観光で食えるような都市と、工場と会社があるところはうまくいく。ただ、日本全体はそうじゃないところが多いので、インフレになった時に耐えられない国民のほうが多い気がしている」と続ける。
ジャーナリストの堀潤氏は「地方創生の現場を取材しているとわりと元気だ。宮城県の秋保とかも投資が集まっている。ただ、スケールせずに1~10億円ぐらいのプロジェクトで止まってしまっていて、新しいお金の入れ方や、どういうスキームで大きな産業ができるのかというのは、手探りの状態だ」とコメント。
エミン氏は「ラピダスが北海道に半導体工場を作っているのは、1つ答えだと思っている。あとは、クラウドデータセンターを東北に作るとか。日本は縦に長い国なので、北はものすごく寒くてウィンタースポーツができるし、南はトロピカルアイランドだ。いろんな意味で観光資源が豊富なので、やろうと思えばいろいろ売り込めると思う」とした。
その上で、この先の日本経済や景気については、「結局、日本はそこまでのインフレにならない。新潟の豪農の館に行ったら米価格が書いてあったが、過去240年で15万倍になっている。ただ、これはインフレ率にすると5%未満。つまり、日本は昔から高インフレにならないし、逆に景気もものすごく良くも悪くもならなくて、ある意味安定している。(インフレに伴って)日本の景気は良くなっていくのは間違いない」との見通しを示した。(『ABEMA Prime』より)
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