■「人格によって事故や事件を起こすのは本当に不幸なこと」
精神科医で本郷の森診療所院長の岡野憲一郎氏は多重人格の定義について、「自分の中に複数の状態があり、それぞれが個別に活動すること。自分のある部分がたまたま出るのではなく、Aさん・Bさん・Cさんがその時に1人の人間として活動して、その間、他の人格は裏にいる状態が多重人格障害。患者さんの中には、何人かいるのは当然で、“あなたは1人しかいないの?大変じゃない?全部1人でやらないといけないんだ”とおっしゃる方もいる」と説明。
人格の“切り替え”に対しては、「最初は簡単できないと思うが、治療者が“○○さんがいたら話を聞いていいですか?”という一種の自己暗示、あるいは自己催眠のようなかたちを練習することによって、他の人格に変われるようになることは実際にあると思う」との見方を示す。
多重人格による生きづらさについては、「DIDの方々は基本的には人の心がわかる、もしくはわかりすぎて、強い思いやりの感情から相手に同一化しやすいということがある。人の心がわからなくて敵意を向けるという、パーソナリティとは逆の方向だ。ただ、中には虐待などを受けたことで、粗暴だったり暴力的だったり、自分を傷つけたりする人格が含まれることがある。素直で優しい人たちが、そういう人格によって事故や事件を起こすということは実際に起きていて、本当に不幸なことだ」と述べた。
岡野氏はその上で、「この議論でよく言うのは、『人格の多面化と多重化は異なる』ということ。例えば、私が医者や生徒などいろんな面を使い分けていても、家から息子について電話が来たら“大変だ”と父親になる。このようにすぐ変わることは人格の多面性で、性格の豊かさだ。しかし、多重性の場合はくるくる変わることができなくて、1つの人格から簡単に変われない。非常にリジット(硬い)なかたちをとる」とした。(『ABEMA Prime』より)
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