東京・新宿区の大久保公園周辺で売春の客待ちをする、いわゆる“立ちんぼ”が増えて問題となっている。
SNSで客と女性のやり取りの動画が相次いで投稿され、通報が増えたことを受け、警視庁は9月5日から取り締まりを行い、21歳から46歳の女35人を売春防止法違反の疑いで逮捕した。警視庁によると大久保公園周辺での検挙数は9月の段階ですでに去年の検挙数を大きく上回っているという。
彼女たちが路上に立つ動機の約4割を占め、最も多かったのはホストや“メン地下”と呼ばれるメンズ地下アイドル。ツケの支払いや遊興費を稼ぐため売春を行ったという。4月には新宿・歌舞伎町のホストが滞納している代金を返済させるため23歳の女性に大久保公園で客待ちをするようそそのかした疑いで逮捕される事件もあり、警視庁はホストクラブ110店に対し一斉立ち入りを行った。
4日の『ABEMA Prime』では、現地で売春実態を取材する専門家と、若者の働き方や貧困問題に取り組む社会福祉士を招き、必要な支援の在り方についても考えた。
“立ちんぼ”集中摘発 35人は「思ったより少ない」 動機や実態は?
9月、新宿区の歌舞伎町、大久保公園で〝立ちんぼ〟をしていた女性35人が摘発された。これについて現地で売春実態を取材する慶応SFC在学中でライターの佐々木チワワ氏は「多い日は男女合計で100人以上は行き来をしていた。買わずにお酒を飲みながら見学している男性や、会話だけをしている女性もおり、半ばコミュニティ化している人数を考えると思ったより少ないなと思った」と言及。
また、「大久保公園自体がイベントをやっている時は普通の男女もいる。私が近くで友達と待ち合わせをしていると“この辺に苦情が出ているから君どいてよ”と警察の方に言われ、身分証の提示を求められた。おそらく立ちんぼしている女性の情報を集めていたのだと思う。摘発はいたちごっこなので警察も疲れている様子だった。通常時でも完全に立ちんぼ目的の人々と観光地化している側面が入り混じり、特殊な場所になってきている」と実態を述べた。
では実際に、どのような女性が〝立ちんぼ〟をしている場合が多いのか。佐々木氏は「以前は海外の方や風俗店では働けないような人が来ているイメージだったが、今はほとんどが若い女性で20代が多い。風俗より稼ぎやすいという側面がある。例えばデリバリーヘルスに出勤したらお客さんを待つ必要があり、報酬は60分で約1万円。一方、立ちんぼは買い手の男性が見えている。1時間以内に1万円稼ぐなら、あそこに立つのが一番効率いい」と背景を解説。
続けて「あそこに立ちながらTwitterでの集客や、パパ活アプリでマッチングをして、常にお客さんを探す窓口を増やしている。ある種の風俗のフリーランス化だ。あそこに行けば稼げる。絶対に客がいる。私も実際に立ってみたところ30秒ほどですぐに話しかけられたくらいだ。10秒ほど会話をして30秒でホテルに入っていく男女もいた。これほど簡単に1、2万円稼げるのが常態化したら、そこから抜け出すことは難しいだろう」と指摘した。
今回、売春防止法違反の疑いで逮捕された35人のうち4割が遊興費を稼ぐ目的だったという。これに佐々木氏は「コンカフェなどで未成年の子たちが売っているのはやはり判断能力がないという部分で保護・規制すべきだ。ただ、18歳以上である程度合意があるなか“ホストが抱いてくれなかったから支払わない”といった揉め事も実際にある。もう少し表面的ではなく、現状を調査しなければならないなと思っている」と言及。
逮捕されたうちの4人は生活困窮者だったとされているが、「好きな男性のために自己犠牲をすることがエモいと思う人もいる。そう行った文化が根付いている。ここに貧困問題を関連付けるのはよくない。立ちんぼで1日1万円稼ぐと月給30万円になるではないか。彼女たちはお金を使う瞬間に自分の存在価値を見出す、自分が承認されているという側面もあり、むしろ精神的な貧困の問題ともいえる」と述べた。
「法律がそもそも古い」罰則の対象や現行法にも課題
番組では罰則や法律の問題点にも言及。テレビ朝日の平石直之アナウンサーは「売春の勧誘、客待ちの罰則ということで6カ月以下の懲役又は1万円以下の罰金になる。ただ、現実には初犯なら不起訴処分の可能性もあり、今回のケースでは略式命令で1万円以下の罰金になる見込みという話もある。形だけの逮捕になっていないかという指摘もある。今回の件では、男性が取り締まられていないのに、女性だけ逮捕されるのはなぜかという意見もある」と述べた。
佐々木氏も「法律がそもそも古い。自由恋愛の末なら合法で、売春は禁止という法律がこうした実情を生み出している。そうした点も含めて包括的に法整備を新しく考えてデザインしないと、今の社会には通用しないのかなと」と指摘した。
続けて、警視庁が歌舞伎町のホストクラブを一斉立ち入りした件を念頭に「ホストに使われていたこと全てを罪に問うのはやはり難しくなってくる。明らかに男性側やホスト側が立ちんぼを斡旋している事例もゼロではないので、しっかり規制・摘発をしていくべきだ思う」と述べた。
説教のような支援は「逆効果」本人の意思を尊重することが重要
社会福祉士で若者の貧困問題に取り組むNPO法人「POSSE」の今岡直之氏は「逮捕は解決にはならないだろうと思っている。むしろ、ホストやメン地下などへの依存習慣を脱していけるように支援することが必要。ただ、実際に行政や支援団体がやっていることは、本人の意見や意思をあまり尊重せず、“あなたはこうすべきだ”、“朝から夕方まで定時で働くような正社員の仕事をやりなさい”、“親御さんも一生懸命育ててくれたのだから仲良くやりなさい”など、極端に言えば説教のような話だ。そういうかたちで支援をすると逆効果でそういう人たちは嫌がると思う」と実態を明かした。
そのうえで具体策について「ひとつの考え方として北欧モデルと呼ばれる方法がある。セックスワーカーを非犯罪化して買う側を犯罪化し、かつセックスワーカーの方々を支援するという形だ。ただ、制度を作ったからうまくいくわけではないからこそ、支援の中身やあり方が大きな問題になっている。女性の自己決定・自立性といった部分をきちんと尊重することが大事だ。これは非常に手間がかかることでもある」と指摘した。
(『ABEMA Prime』より)
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