ハマスとイスラエルの間で大規模な軍事衝突が起きている。鍵を握る「アメリカの支援・介入」について上智大学総合グローバル学部教授の前嶋和弘氏に聞いた。
━━今回の衝突に対するアメリカ国内の関心は?
非常に高い。2001年のアメリカ同時多発テロの時のように朝から晩までニュースが流れていた。ただし、ハマスによる攻撃というショッキングなニュースからイスラエルの報復という流れになってから少しだけ落ち着いた印象だ。とはいえ、依然として熱気は高い。
━━BBC(英公共放送)はハマスをテロリストと呼んでいないが、アメリカメディアではどうか。
アメリカのFOXニュースなどを見るとテロリストという言葉が飛び交っている。特にFOXニュースの視聴者の多くはアメリカの保守・キリスト教の福音派だ。福音派の人々は、ユダヤ教があってキリスト教が成り立っているという考えで、アメリカのユダヤ人よりもイスラエルを強く支持するため、ハマスはテロリストという表現になる。
━━世代間の違いはあるのか?
若い世代の方が「社会主義」という言葉に抵抗をもたない。若ければ若いほどリベラルという傾向があり、パレスチナ問題についても「二国家共存」と考えている人が比較的多い。
また、民主党の中には、イスラエルを全面的に応援することに意義を唱えている議員もいるが、大きな目で見れば共和党も民主党も全体的にはイスラエル支持だ。
━━政権は介入に積極的か?
世論は「イスラエルを応援すべき」というムードだが、バイデン政権の動きは慎重だ。ハマス対イスラエルという構図ならこれ以上大きくならないが、ハマスとヒズボラの後ろにはイランがいる。今後イランがどう動くかでアメリカの動きが変わるだろう。現状、米空母はヒズボラ対策として東地中海に派遣されている。本当にイラン対策であればペルシャ湾に行っているはずなので、それを見るとある程度慎重だと感じる。
━━今後の支援の流れや、アメリカの影響力は?
これから議会でもイスラエルの追加支援の話が出てくるだろう。おそらく、追加支援をしながら、世論を見ながらイスラエルを徹底して応援していくだろう。
アメリカにとってイスラエルは同盟国であり、言い過ぎかもしれないが、アメリカの中の福音派のこともあるため“イスラエル問題はアメリカの国内問題”とも考えられるのだ。
現状、イスラエルから地上軍派兵の連絡を受けたバイデン政権は、NOとは言っていない。とはいえ、今後事態が複雑化してイランの影が出てくるとアメリカとしては困る。イランのバックにはロシアもいるので、アメリカがこの地域に介入すると世界戦争になる恐れもある。そんな未来を避けるため、イスラエルを支援しつつもある状況まで来たら「止める」という形をとるだろう。
(『ABEMAヒルズ』より)
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