将来の妊娠に備えて卵子を冷凍保存しておく「卵子凍結」。フィギュアスケート、アイスダンスの選手、小松原美里さんもその選択をした女性の一人だ。不安を抱えながら競技生活を続ける中で、卵子凍結を決めたきっかけは何だったのか。その想いを聞いた。
【映像】夫でアイスダンスのパートナーの小松原尊さんと美里さん
「今できることをするという中で、確実にこれは今自分のためになる、未来の自分にとっての投資になるという選択をしたと思う」(小松原さん、以下同)
フィギュアスケーターの小松原美里さん、31歳。北京オリンピックでは団体銅メダルを獲得するなど、アイスダンスで活躍するトップアスリートだ。小松原さんは今年7月に卵子を凍結保存し、SNSなどで積極的に卵子凍結について発信している。そこにはフィギュアスケートが技術だけでなく、見た目もジャッジされる“審美スポーツ”だからこその悩みがあった。
「人の上に乗るリフトをしたり、体重管理がすごく大事な種目をしているので、ちょっと痩せすぎてしまったり、ストレスや食事制限などで生理が来なかったり、すごく不安に思うことがたくさんあった。30歳を過ぎてどんどん年齢を重ねて、どうやったら女性というキャリア、そしてフィギュアスケーターとしてのキャリアを両方上手に、どちらも諦めることなく突き詰めていけるかなと思ったときにこの選択があった」
卵巣から卵子を取り出し、将来の妊娠にそなえて凍結保存しておく卵子凍結。夫であり、アイスダンスのパートナーでもある尊さんとも話し合った末に決断した。
ここに至ったのは、同じアスリートであるスノーボードの竹内智香選手が、卵子凍結をしたという記事を読んだことがきっかけだった。
「こんな選択をする方がいるんだ、この選択があるんだ、アスリートとして女性として、自分もここから学べることがあるんじゃないかなという気づきをもらった。(竹内選手と)実際に話すと、『(卵子凍結は)お守りみたいなものだよ』と。確実に成功するかはわからないけれども、『自分の保険として持っておける素敵なものだよ』と教えてくれた」
竹内選手に勇気をもらい、クリニックに通い始めた小松原さんは、まず、卵巣に卵子がどれくらい残っているかを調べるAMH検査を受ける。30歳の平均値は4.02なのに対し、小松原さんの検査結果はどうだったのか。
「自分は0.76しかなくて。0.76というのは閉経間近の状態だったので、今回調べて卵子凍結しようと思わなくて『(2026冬季)オリンピックの後でいいや』と思っていたら、もう遅かったかもしれない」
ミラノ・コルティナダンペッツォオリンピックの開催時には34歳。その前のタイミングで卵子凍結を決めたのは、競技も妊娠も諦めたくないという思いがあったからだという。
「次のオリンピックに向けて、自分がどれだけ自分自身のベストに近づけるか、より不安なものを取り除いて、どれだけピュアに演技できるかというのをすごく大切にしている。もし、34歳になってから子どもを授かりたいとか考えたとしても『できるのだろうか』というモヤモヤが、卵子凍結という手段があることを知ってだいぶ薄くなったし、軽くなったように思う」
そして迎えた採卵日。採れた卵子の数は6個。その中から、受精できる状態だった5個の卵子を凍結保存した。
「全身麻酔でやったが、朝9時ぐらいから手術を開始して、お昼にはもう病院を出ていた。割と簡単でびっくりした。自分自身の重たい生理のときより楽に終わった」
当日はテレビ局の取材が同行していたため、特別に卵子を見せてもらったそうだ。
「この子たちが自分の体の中で育って、たくさんの方に手助けしてもらって、待っていてくれているというか。目にすることによって『会ってみたい、この子たちを育ててみたいなあ』という気持ちになったのにとてもびっくりした」
思わず芽生えた、母になりたいという気持ち。卵子凍結という選択が小松原さんの人生のステージを広げてくれたようだ。
「女性が仕事と、私の場合だとスポーツ。フィギュアスケートというキャリア、そして女性としてのキャリアもどちらも輝いていいなと思っている。私みたいな例が少しずつ増えていくことによって、(卵子凍結を)やりたくない人は全然やらなくてもいいし、やりたい方が簡単にできるような世の中になっていけばいいなと思っている」
(『ABEMAヒルズ』より)
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