藤井聡太八冠 “勝率1%からの逆転劇”に「相手に間違えさせる意味でAI超えた」 将棋AI開発者に聞く人工知能の現在地と未来
【映像】「AGIを知らないとやばい」と言及する孫正義氏
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 藤井聡太竜王・名人が八冠を決めた王座戦の第4局で、AIが終盤1対99で藤井竜王劣勢と予測するなか、わずか一手で数字が逆転優勢となり勝利したことが話題となった。AIを積極的に活用して強さを磨いた藤井竜王・名人は、劣勢の局面を「自然に進めても苦しくなってしまうので、なんとか(局面を)複雑にできればと考えて指した」と述べた。

【映像】「AGIを知らないとやばい」と言及する孫正義氏

 一方、将棋や自動運転、ChatGPTなど、様々な分野でAIの進化が続くなか、ソフトバンクの孫正義社長は、「AGI(汎用人工知能)を知らないとやばいことを知ってください。日本はやばい。ChatGPT4を仕事関係で使っている人は手を上げて。…10%いっていない。手を上げなかった人は人生を悔い改めたほうがいい」と述べた。

 AGIは人工汎用知能の略で従来AIの進化系とされるが、こうした人工知能の現在地と未来は? 『ABEMA Prime』では、将棋AIの開発者とAIによる自動運転EV量産化を目指す企業の共同代表と考えた。

藤井竜王・名人『AI超え』の一手とは?

藤井聡太八冠 “勝率1%からの逆転劇”に「相手に間違えさせる意味でAI超えた」 将棋AI開発者に聞く人工知能の現在地と未来
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 AIは永瀬九段が99対1と勝率分析をしていたが、運命の123手目を指したところ、9対91と数値が逆転した。将棋AI「水匠」開発者の杉村達也氏は「藤井先生の1%はおまけで、将棋AIなら100%勝てる局面だった。そこから永瀬先生のミスで大逆転が生まれた」と解説。

 また、「藤井先生はその一手前まで14%勝てる可能性があったが、続く勝率1%となった一手で、相手に間違えさせれば逆転できる局面にした。永瀬先生はAIが示す候補5手どれを選んでも優勢を保てたが、運命の123手目は候補5手になかったもの。結果、60秒以内に1つしかない正解の手を指せるかという局面に追い詰められてミスが生じた。AIは“これは勝ち、これは負け”と人間の感情を捨てて計算で出している。AIは逆転を誘わない。相手に間違えさせる意味では藤井先生はAIを超えた手を選べたのかもしれない」と分析した。

 さらに、「将棋AIには局面のデータだけを入力をする。そこに人間の感情を入れるなら、例えば脳波、体温、呼吸の数などを入力したらおもしろいかもしれない。人間は間違いや疲労もする。将棋界では相手のミスを誘って逆転できるのは良いことだが、政治の世界なら間違えてほしくない。その意味でAIに近づいてほしいところはある」と述べた。

27年に自動運転EV量産へ AIで交通革命も? 

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 AIを使った未来はどこまで見えているのか。『自動運転でテスラを超える』を掲げる『Turing』共同創業者の青木俊介CTOは「テスラはニコラ・テスラという電気の巨人、超有名人から社名をとっていて、我々はアラン・チューリングという情報学の神様からとっている。彼はいわゆるチェスAIを50年ほど前に作っている。コンピュータは人間のつまらないことや計算を代替するところからスタートした。我々の柱は完全自動運転AIを作るのが1本。もう1本は令和だけど自動車メーカーを作ろうという柱だ」と述べた。

 青木氏は「孫さんの講演でも、AGIによって自動運転ができるのではないかと、ひとつの例として出ている。運転する時は文章と画像だけではなく様々な情報を使っている。孫さんが言う『マルチモーダルAI』だ。運転免許を取れる18歳以降の人間は様々な常識を獲得し、“老人が自転車に乗っていて倒れそうだ”、“子供の時、この角度は見えなかった”、“この時間帯のこの車は危ないから避けよう”など考えている。これらは自動運転の実現に必要なので、AGIに限りなく近い自動運転用AIを作っている」と述べた。

 アメリカや中国では完全自動運転のタクシーサービスが始まっているが、「日本は完全に遅れている。私自身アメリカで研究・開発をしてきた。向こうは進むのが早く、エンジニアの数も多い。自動運転をやってみよう。事故が起こってしまったので一度ルールを付け替えようという感じだ。規制も技術開発に費やす時間や資金の集中力も全く違う。日本では、お金を出す人が1年後にチェックして、半年後にまたチェックしてとやっている。ChatGPTは2015年に団体が立ち上がって、ある日突然ChatGPT3.5が出てきてユーザーが使えるようになるまで7年間ほどずっと潜っていた。日本の国家プロジェクトで7年間、何も出てこなかったら不安になるのではないか」と指摘。

 そのうえで「ゴール地点は人間より安全であれば良い。“自動運転で事故が起きたらどうするのか”との意見もあるが、人間も事故を起こすし、飛行機が墜落することもある。死亡者が少しでも減って安全になるのであれば、AIを入れていく社会であるべき。だからこそ孫さんの発言は、応援であり挑戦状だと受け取った」と述べた。

人間ならではの創造力とAIの未来

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 将棋の世界ではAI同士が戦うことでより強いAIが生まれる。人間は関与していない。

 杉村氏は「昔はプロ棋士の指した手をできるだけ真似ようとして強くなっていった。今は将棋AIのほうが強いので、AI同士で戦って勝ち負けを学習し、より強いAIが生まれている。その繰り返しで無限に強くなる仕組みになっている。今はほぼ9割以上の棋士が将棋AIを使っている。将棋AIの手は多すぎて暗記できない。そのため、自分のクリエイティビティと将棋AIの技術を兼ね合わせて“どれだけ相手の裏をかいて逆転するか”という準備をしている。棋士は将棋AIの真似をしているだけではない」と述べた。

 青木氏は「我々は車を売っていかなければ商売として成り立たないので、車を売って、そこに自動運転をつけようと思っている。将来的には全ての車が自動運転になっていく。100年、200年後から見た時、今の馬術や競馬の騎手のように“人間は運転をしていたらしいよ。あいつ運転ができるらしいよ”という世界になるのではないかな」と述べた。

(『ABEMA Prime』より)

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