ここ数年、大学発のスタートアップや学生による起業が急増している。『ABEMAヒルズ』はその現状と背景に迫った。
学生起業の支援などを手掛けるガイアックス起業家教育事業の吉川佳佑氏によると学生の起業熱の高まりの背景には「起業が身近になったこと」があるという。
「SNSを開けば有名起業家の投稿や実際に話している様子を誰でも見られることに加え、各自治体や大学、そして民間企業のサポートも手厚くなってきているため、起業に一歩踏み出しやすくなっている」
ガイアックスによると、起業に興味がある学生が集まる「起業部」などのサークルは2018年から倍増し、43大学まで拡大。また、経済産業省の調査では大学発のベンチャー企業が2017年度頃から急激に増加するなど、学生の起業熱の高まりが数字にも表れている。
学生起業倍増のもう一つの要因として文部科学省が2014年からスタートした起業家人材の育成を目指す「アントレプレナーシップ醸成促進事業」がある。この事業では「起業をテーマにした授業」「投資家の紹介」「起業相談窓口の設置」「インキュベーション施設・ラボの設置」「大学のファンドの設立」など幅広いサポートを実践している。
急激な社会環境の変化から生まれるニーズを察知し、新たな価値を生み出す起業家を育成するアントレプレナーシップ教育。いまや大学だけでなく、中学校や高校でも取り入れられるなど年々注目度が高まっている。
学生が起業するメリットについて、吉川氏は「もし起業に失敗しても再チャレンジすることも、起業の経験を生かして就職活動にシフトすることもできる。昔のように会社を設立するために何千万円も必要ということもなく、非常に少ない額から起業できるのも利点だ。デメリットやリスクはゼロではないが、例えばベンチャーキャピタルと呼ばれる投資家から出資を受けた際にも、必ずしも得たお金を返済する義務がないなど、大きな借金を背負うリスクが少なくなってきている」と説明した。
一直線に就活→就職というルートを辿ることなく、先に起業し社会の仕組みを知る。ひと昔前では人生を賭けた大勝負というイメージだった起業がより身近な選択肢の一つとなっている。
アントレプレナーシップ教育についても吉川氏は「起業の知識だけではなく、対人関係を学べたり、プレゼンスキルや人と協働する力が身につく」とその魅力を語る。
では、「学生起業に成功する人」にはどのような特徴があるのか。慶應大学教授で教育経済学を専門とする中室牧子氏は「リスクを取れる人、自分に対する自信が強い人は成功する傾向にある」と見解を示した。
「ビジネスプレゼンいった技術的な面だけでなく、心も重要ということだ。『メンタル面を鍛える』という意味においては中学校・高校からアントレプレナーシップ教育を行うことも有意義だろう」
(『ABEMAヒルズ』より)
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