「10月31日およびその直前の数日間にハロウィン目的で渋谷に来街を予定されている方は考え直してほしい」
ハロウィンを前に自粛を呼びかけた、長谷部健・渋谷区長。さらに、動画でも路上喫煙や路上飲酒など迷惑行為をしないよう発信し、駅前には「渋谷はハロウィーンイベントの会場ではありません」と、日本語と英語で書かれた大きな看板も掲げられた。地元の飲食店も対策をするという。
渋谷のハロウィンは10年ほど前からメディアで注目され始めたが、近年はゴミ問題や路上飲酒、暴力沙汰などトラブルが頻発し、負の面が問題視されてきた。5年前には軽トラックを横転させ逮捕者が出る騒動にも。規制強化の一方で、渋谷区は企業と組み、バーチャル空間の渋谷で行うハロウィンフェスを開催し、参加を呼びかけている。
池袋ではコスプレイベントを推進するなど、街で騒がないアプローチも進んでいる。日本のハロウィンイベントのあり方と未来について、『ABEMA Prime』で考えた。
2019年、駅前には「ハロウィーンを渋谷の誇りに」という看板が掲げられていた。日本ハッピーハロウィン協会代表の岡本恭和氏は、「去年もかなり人が集まったけど、特に大きな事件は聞いていない。今年はコロナが明けて規制がないこと、外国人もたくさん来ていることから警戒していると思う。手のひら返しとまでは言わないけど、なぜこんなに変わってしまったのかという感情はある」と話す。
渋谷でのハロウィンに参加経験がある会社員のゆみさんは「大学生の時が、渋谷のハロウィンが最も流行っていた時期で、1年生から4年生までしっかりコスプレをして行っていた。ただ、その間にも状況が変わって、4年生の時期にはコスプレをしていない方が見に来たり、盗撮もあった。最初は楽しめていたけど、最後のほうは危ないかなという思いもあった」と明かした。
編集者・ライターの速水健朗氏は「メディアが取り上げるようになったのが2014年ぐらい。それ以前は人々の質も高かったが、2015年ぐらいの時点で情弱しかいなくなっていると思う。リア充が集まる場所から、リア充を見に行く場所になり、見るべきリア充がいなくなって、見学者を見学する人たちが来ている。もう中味はなく、“今さらダサいよ”と伝えるしかない」と現状を憂いた。
プロデューサー・慶應大学特任准教授の若新雄純氏は「過剰に1カ所に集まる群集心理と、盛り上がりをどう各地に分散できるかだ。僕は賑わいを作りたいという田舎の仕事をたくさんしているが、そういう所はお金を払ってでもやりたい。ただ、1カ所だけで賑わいすぎるとパンクするので、例えば渋谷区が全国の5カ所くらいで協定を組み、いくつかの会場に分散させるということをやればよかった。“渋谷でハロウィンを育ててくれ”と言っておきながら、“渋谷に来ないでください”と言うのは、群集心理を全くわかっていない。“渋谷で始まったこの火の種を全国で分けませんか”と言うべきだ」との考えを述べた。
一方、岡本氏は「渋谷」という街だからこそ集まっていると説明。「とにかく渋谷に行けば目立てる、何か起こるだろうと、地方の方々もどんどん集まる。私は“ストリートハロウィン”と名付けているが、渋谷の通りに魅力があり、いろいろな方々と出会ってコミュニケーションをとることが楽しい。人が集まりすぎているので分散化してほしいが、他の街がもっと魅力を出して、“渋谷よりも面白いからこっちに来なよ”というアピールのほうがいい」とした。
渋谷のハロウィンの懸念点として、特定主催者がいないために自然発生的に人が集まることがあげられる。区が主催し、料金を取るという案は考えられないのか。
岡本氏は「主催とは言わずとも、渋谷区ももう少し責任を持つことをイメージしてほしい。今は“お手上げだ”と発信しているが、カウントダウンはスポンサーさんに助けてもらって、お金も集めてうまく運営されていたはず。料金を取るか取らないかは別にして、そういった声がけはできるのではないか」との見方を示した。
桂花ラーメン渋谷センター街店は「31日はお昼営業で、17時に営業終了する。たむろされて喫煙だったりが多いので、開店休業のような状態になってしまう」と話すように、飲食店などへの影響もある。
岡本氏は「逆にセンター街以外の商店街、たとえば渋谷駅東口商店街の方はハロウィンに来てくれと言っている。確かに大変だと思うが、もう少しやりようはある」とする。
若新氏は「店を壊されたり、被害を被ったりしたところがニュースで取り上げられやすいし、対応しなければいけない。ただ、渋谷も一枚岩ではなくて、実はハロウィンで楽しんでいたり、儲かっていい思いをしている所もあるだろう。バランスがすごく悪いという話だ。お祭りの賑わいや非日常みたいなものを上手にデザインする難しさを突きつけられている気がする。単純な禁止や規制は、お祭りの向き合い方としては違うのではないか」と疑問を呈した。(『ABEMA Prime』より)
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