【スーパーフォーミュラ】第9戦(決勝・10月29日/鈴鹿サーキット)
日本最高峰のレース『スーパーフォーミュラ』で2連覇のベテランが今季、チャンピオンの座を明け渡した。今季は体調の問題で欠場し、王者争いで不利な状況だった。そうしたなか、王座防衛の望みが薄くなった最終戦で見せた諦めない走りが反響を呼んでいる。
今季の序盤から、幾度となくポールポジションを獲得し、レースでもほぼ確実に表彰台に登ってきた2年連続チャンピオンの野尻智紀(TEAM MUGEN)。今季も王者争い確実と思われたが、肺気胸を患い第4戦を欠場。ハンデを背負いながらも、最終戦を前に、ランキング1位の宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)に対して6.5点差と、チャンピオンの可能性を残して臨んだ最終戦だった。
予選2番手の野尻は、スタートで出遅れた同1位のリアム・ローソン(TEAM MUGEN)に進路を阻まれて失速。4番手まで順位を落とした。鈴鹿はオーバーテイクが難しく、ライバルとピットインのタイミングをずらすことでチャンスを伺う作戦に出た。23周目にタイヤ交換をすると、後方から松下信治(B-Max Racing Team)が迫る。松下は、エンジンパワーを一時的に上げるオーバーテイクシステム(OTS)を使用し、タイヤがまだ温まり切っていない野尻を一気にオーバーテイク。野尻は5番手まで落ちてしまう。
そして反響を呼んだシーンはこの直後に生まれた。絶対王者の野尻は残り6周のシケインで松下を捕え、そのまま一気に抜き去り、4位に浮上。3位までは15秒以上間隔があったため、追いつくことは難しかったが、最後まで諦めない走りを見せてくれた。これにファンは「のじさんの意地を見た」「のじさあああああああああん」「一つ取り返すノジ」と反応。
レース後、野尻はSNSで「期待に応えられなかったのに、たくさん『ありがとう』と声をかけていただいた。色んな感情が入り混じり表現が難しい。でもこれだけは言わせてほしいです。みんな、応援ありがとう」とコメントした。
3連覇は果たせなかったものの、ファンから「欠場したのに争えることがすごい」とコメントがあがった様に、最後までチャンピオン争いに絡み、ファンを沸かせてくれたのは間違いなく野尻とチームの実力だ。来年は、また絶対王者としてこの場所に帰ってきてほしい。
(ABEMA『スーパーフォーミュラ2023』/(C)JRP)