「衣食住に関心ない。長生きしたくない」孤立死にも繋がる“セルフネグレクト”とは  猫170匹「多頭飼育崩壊」で自宅が糞尿まみれになる事例も
【映像】猫170匹「多頭飼育崩壊」で自宅が糞尿まみれ
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 自身のケアなど、生活する上で必要なことをしなかったり、する力がなく、自分に関心が持てなくなる状態「セルフネグレクト(自己放任)」。具体的には家のゴミ屋敷化、汚れた服を着ている、適切な食事をとれていないなど。きっかけや背景はうつ病や認知症、親しい人との死別や失業といった生活の変化などさまざまだ。明確な原因は分かっていない。周りに助けを求めない人も多く、放置すれば健康状態の悪化や、孤立死に繋がる恐れもある。

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 しかし、セルフネグレクトはまだまだ社会的認知が足りておらず、支援の仕組みも確立されていないのが現状だ。この課題について、当事者を交え『ABEMA Prime』で考えた。

■会社員のケイ子さん「長生きしたくない」

 「衣食住に全く関心がない。ご飯を食べること、洋服、お風呂、それから歯磨き、洗顔、メイク、そういうものに全く興味がないというか、なるべくしたくない」

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 会社員のケイ子さん(仮名・50代)の一人暮らしの部屋は、2年前から物やゴミが散乱した状態に。風呂は週に1、2回で、半月入らなかったこともあるという。

 なぜこうした生活を送るようになったのか。経緯はよくわからないというが、「50代を過ぎてから、いろんな面で落ちているということ。周りの親の世代が介護をして亡くなっていくのを目の当たりにしたり、それをフォローしていく立場が続いた。このまま生きていくことがすごく怖くなったというか、長生きしたくないので、生活を良くしていく気持ちが全くなくなった」と話す。

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 セルフネグレクトの自覚はあるが、誰かに相談することも、今の状態を変える気もないという。そんな中で生きづらさを感じないのか。「今日一日を生きるのは何とかできるが、10年、20年先というのはあまり望んでいない」と答えた。

 会社員として働いているケイ子さんは、お風呂に入らないことによる周囲の反応について「人はそんなに中高年の女性のことは気にしていなく、まだみんなマスクもしているので気にならない。さすがに言われたら考える」とし、働く気力については「自由な時間の過ごし方が分からないので、働いていた方が楽だ」と述べた。

 今の生活で楽しいと感じるのは、スポーツ観戦。しかし、「一瞬の話なので、それで継続的に気分が前向きになるものではない」という。

■父親がセルフネグレクト、「多頭飼育崩壊」で家は糞尿まみれに

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 セルフネグレクトを放置すると「多頭飼育崩壊」を招くことも。エリさんの父親が住む家で飼われた猫の数は170匹以上。餌や水は十分に与えられず、糞尿にまみれ、部屋には強烈な臭いが充満していた。元々は4匹だったが、同居していた母親が病気で入院し、状況が一変。治療代がかさみ、猫の不妊手術ができず、気づけば増えていたという。自身も3~5日に1食という状況で、エリさんに助けを求めた。

 当時、コミュニケーションはLINEがほとんどで、会うのは月に1回ほど。「私が2歳の時に母が亡くなり、祖父母に育てられた。父とは同じ家の中だが、生活が別々になっていた。父とそこまで仲が良いわけではなかった」といい、猫の数については「用事がある時に玄関先で会うだけで終わってしまっていた。そこまで増えていると分かっていなかった」と明かす。

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 生活費や猫の餌代で、仕送り額は1000万円ほどに。「当時はお金があれば、猫も父も生活ができると思っていた」。改善を求めることはなかったのか。「なんとかお金を捻出するから、去勢・避妊はやってほしいというのはあった。しかし、数が増えてくると、自身で病院に1匹ずつ連れていくのは難しいという理由で、進んでいなかった」と答えた。

 エリさんは限界を感じ、NPOに相談したが、「行政やNPOがどういった助けをしてくれるのか詳しく分からなかった。相談したら殺処分され、動物虐待になってしまうのではないか」と思い、抱え込んでしまっていたという。

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 行政の対応について、東邦大学大学院看護学研究科教授の岸恵美子氏は「多頭飼育崩壊であれば相談に乗ることができ、お父様の年齢が65歳以上であれば、地域包括支援センターで対応できると思う。ゴミ屋敷とは違って、多頭飼育崩壊の場合には早く対応しないと、本当にご本人も大変だし、動物の命が奪われてしまうことがある」とした。

■セルフネグレクトの兆候、相談先は?

 セルフネグレクトにはどういった兆候があるのか。岸氏は「身なりを気にせず汚くなってきたり、家の中のものを片付けない、ということがある。そのスパンが長くなってしまって、ある一定溜まると、限界を超えて“もうどうでもいい”となってしまう。ご本人何人かに聞くと、その限界点がどこかにある」と説明する。

 自分で気づけるものなのか。「外に出てみたり、あるいはお友達が尋ねてきたりといったことがあると、どうしたの?と言ってもらえると思う。自分ではなかなか気づけない」とし、気づいた時には「高齢者であれば、行政の地域包括支援センターに相談ができる。しかし、65歳未満の若い方の相談窓口がなかなか決まっていないところが課題だ」と話した。

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 セルフネグレクトの定義は、「健康や安全が損なわれたら、というのがある。どこからどこまでというのが明確にできなくて、それはご本人の意思を尊重しなくてはいけないから。ご本人が相談したくないという状況があるので、相談の押し売りができない部分がある」という。

 ケイ子さんも「セルフネグレクトがどんなものか自分も分からない。今は病気と診断されていないし、収入もそれなりにある。行政の援助や福祉なども、50代では多分当てはまらないと思う。だから相談しろと言われても、何かしていただきたいこともない状態だ」と話した。

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 一方でエリさんは「行政に行って、父の状況や生活費、食事のことを相談したことがあるが、やはり本人からの相談がないと何もできないということだった。私の場合は、猫のために動いてくれるNPOの方がいたので、父の生活も同時に救われたが、本人の気持ちを変えるのは難しい」とした。(『ABEMA Prime』より)

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