ここ数年、「会社の電話に出られない」という退職理由が増え始めている。『ABEMAヒルズ』では「電話恐怖症」の背景と対策を取材した。
「電話恐怖症」━━電話に出る、または出ようとすると、“緊張が走り、体調が悪くなる”など、心身症状をともなう苦痛を感じる状態で、最終的には職場に足が向かなくなることも。株式会社ソフツーの調査によると20代の7割以上が「電話に苦手意識を感じている」という。
企業向けのカウンセリングやメンタルサポートを行う日本メンタルアップ支援機構の大野萌子代表理事によると、この10年で「離職理由=電話に出られない」というケースの増加に悩む人事担当者や「電話への恐怖から仕事を続けられない」という新人からの相談も増えているという。
なぜ電話恐怖症になる人が増えているのか? 大野代表理事は「自宅に固定電話がなくなってきたことで、子どもの頃に電話の取り次ぎや伝言を受けた体験をしていない若者が増えた」と分析した。
また、「コミュニケーションツールの進化」にも関係があるという。
「メッセージツールを主に利用するようになると、文字でのやり取りに慣れてしまい、瞬発力が必要な電話にひるんだり、焦ったりしてしまう。そんな経験から苦手意識を感じる方が多いようだ」
大野代表理事はそうした“慣れていない電話への対応”がもとで、業務中に「集中力が途切れてしまう」といったストレスや、クレームへの対応で精神的な負担がかかってしまう点も「電話恐怖症」を深刻化させる原因だと指摘する。
そんな「電話恐怖症」になりやすい人には完璧主義の傾向があるという。
「メールなどの場合、きちっと読み直したり、自分の考えをまとめてから返事ができるが、電話はその場で対応しなければいけない。その違いにジレンマを感じるのではないか」
これまで育ってきた環境や性格による影響が大きいというが、「電話恐怖症」を克服するために学生のうちから取り組めることがあるという。
「話す『場数』を増やすことが大事だ。文字ツールばかりに頼ってると、スキルが上がらず、ボキャブラリーも増えず、言葉を短縮する若者言葉の弊害もある。また、社会人になる前に本や記事を読むなどして、端折らない表現やボキャブラリーを学ぶことも大事だ」
大野代表理事は多くの人が苦手意識を持つ電話にも「相手の声色や細かいニュアンスを確認できる」などという強みがあると説明する。
「何かすれ違いを感じたときとか、『あれ?』と思ったときに文字でのやり取りを続けると、どんどん深みにはまることが多い。トラブル案件になりそうなときでも電話で話すことで誤解が解けるケースは少なくない。補助ツールとして使えば有効性が高いのではないか」
「電話恐怖症」について、ダイヤモンド・オンライン編集委員の神庭亮介氏は「強制的に時間を奪われ、そこまで親しくない人と話さなければいけない状況に抵抗を感じる人が多いのでは」との見方を示す。
一方で神庭氏は「職業によっては電話連絡が必須の場合もある。事件・事故・急患などの緊急事態や一刻を争うトラブルでは、メールよりも電話が適しているだろう。ミスマッチが起きないように、苦手な人は仕事を選ぶ段階でよく確認しておいた方がいい」と指摘する。
「企業の側もメールやメッセージで済む話で、無駄に電話をかけるべきではない。業務で電話が必須の場合も、『若い世代は電話に慣れてない』という前提に立って、丁寧に研修を行う必要がある」
(『ABEMAヒルズ』より)
■Pick Up
・「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
・ネットニュース界で話題「ABEMA NEWSチャンネル」番組制作の裏側