「社会とつながっていたい」「色メガネをかけて見ないで」 “働きたい”認知症当事者の思い 偏見が阻む壁、受け入れ側の苦悩も
【映像】「やったっけ?」 認知症当事者のメンバーが働く様子
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 2025年には65歳以上の5人に1人が「認知症」になり得るとされている。「誰もが患者になる可能性があるからこそ、彼らが活躍する社会を作ることが当事者にも社会にとっても良いのではないか」。そうした意見がある一方、「自分がミスしたこと忘れて周りのせいにする。一緒には働けない」との厳しい意見も。認知症の人が働くことは難しいのか、『ABEMA Prime』で当事者の家族らと考えた。

【映像】「やったっけ?」 認知症当事者のメンバーが働く様子

■61歳で若年性認知症に「仕事はしたいが、迷惑をかけてしまう」

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 洗車をするのは、デイサービス「BLG八王子」のメンバーで、認知症のある要介護者の人たち。仕事はほぼ毎日で、月に2万円が施設に入り、参加者全員に働いた日数に応じて分配される有償ボランティアだ。

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 水野秀司さん(61)は今年4月、アルツハイマー型の若年性認知症と診断された。「仕事はしたかったが、迷惑をかけてしまう。物覚えが悪くなった」。30年以上、大手ファミレスチェーンに勤めていたが、仕事での失敗が続き退職を決意。仕事が好きでたまらなかった水野さんは、体は元気だからとBLG八王子に通っている。

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 洗車を任せている車販売店「Honda Cars U-Select八王子」の高橋邦雄氏は「我々がやらなきゃいけない洗車業務の半分を以上減らすことができるので非常に助かっている。僕らも仕事でのミスは必ずあるので、認知症の方だからと気にしたことはない」と話す。

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 BLG八王子・代表取締役の守谷卓也氏にあるのは、「何もできないとか、道に迷うとか、喋ることもできないっていうようなマイナスのイメージを払拭できたら」という思い。施設内の壁には「仕事がしたい」「社会とつながっていたい」「色メガネをかけて見ないでほしい」といった心の声が貼られている。

 メンバーには重度の認知症の人もいるそうだが、仕事への支障はないのか。「できないことを見つけるのではなく、その方が何をやりたいか、何ができるのかをご本人と話しながら見つけて活動をしている。1人で1台の車を洗うのは難しいけど、メンバー全員で作業を分担したり、得意なことに細分化することで成立する」「同じ所を拭いていることもあるが、毎回ではないし、たまたまかもしれないし、水滴が見えづらかったのかもしれない。でも2回拭くということは、それだけ丁寧に拭いているという解釈もありだと思う。『そこはさっき拭きましたよ』『そうだったね』というやり取りもある」と答える。

 その上で、「諦めて自信を失うのが一番怖いこと。単純な作業かもしれないが、成功体験を積み重ねるのが大事だったりする。あとはサポートだ。ただ、できることまでやってあげるとマイナスになってしまうので、その人に合ったサポートができるといいと思う」と呼びかけた。

■認知症の母親をスタッフに「働くことが一番の特効薬になるのではないか」

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 認知症の人が飲食店でスタッフとして接客する「まあいいかCafe」。注文を間違えても「まあいいか」と受容する社会を目指し、約2カ月に1回、主に京都市内で実施。仕事をした当事者には、2時間で2000円程度の有償ボランティア代が支払われる。

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 主催者の平井万紀子氏は、約10年前に母親がアルツハイマー型認知症と診断された。「9年前に同居を始めたときから“働きたい、まだまだ私は働ける”と毎日言っていた。母にとって働くことが一番の特効薬になるのではないかと思った」ときっかけを話す。

 まぁいいかCafeに参加している人たちにはどのような変化が見られるのか。「“何をやった?”と瞬間的に忘れてしまうので、参加後の効果は分からないが、今を生きているということをすごく感じる。杖をついてしか歩けなかった方が、杖なしでおぼんを持って働いていたり。母もとても楽しそうに働いていたので、その姿を見るのが嬉しかった」と振り返る。

 平井氏の母親は認知症が進み、今は特別養護老人ホームに入っているという。一方で、「コロナで施設を行ったり来たりできないが、状況がもっと落ち着けば、特養の中でまぁいいかCafeをやって、母に活躍してもらいたいという夢はずっと持っている」と明かした。

■認知症への偏見、雇用面の課題

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 認知症当事者の雇用について、番組が取材した中小企業の取締役は「中小企業の場合、社員1人が生み出すお金が大切。雇いたい気持ちもあるが、利益を出せないのであれば雇えない。企業としてはボランティアをしている感覚になる」と話している。

 雇用面の課題について守谷氏は「我々はデイサービスの活動時間内での有償ボランティアをやっていて、働くとは意味が違ってきてしまうかもしれない。さらに、最低賃金を上回ってはいけないという壁がある。そういったものを取り払うことができたら大きいが、法律も関わってくるので難しい」と話す。

 認知症に偏見がある中、隠して働きたいという声は多いのか。平井氏は「人によると思う。うちの母の場合は知られたくないほうが強かった。ただ働くことが楽しかったので、“私は認知症だ”と現場では言っていた。あとは年齢にもより、若年性の方は明かすことのメリットがないので、言わずに働く方がほとんどだと思う」とした。

 正しい知識と理解を持って手助けにつなげる「認知症サポーター」という仕組みもある。守谷氏は「実際に研修を受けたことで、“自分はなりたくない”と余計偏見を持ってしまうケースもある。また、日本はお世話をしたい文化だが、受講したことで、認知症の人を探し始めてしまったりする。どうしても重度の方をイメージしてしまうが、当事者も全部をお世話してもらいたいとは思っていないわけだ。そこでうまくいかないことはあるが、認知症を正しく知るという入り口としては頑張ってもらいたい」と訴えた。(『ABEMA Prime』より)

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