「結局何歳まで働けば…」年金保険料納付5年延長案が物議 「70歳まで働きたい」定年後に転職した当事者の本音と高齢人材の現実
【映像】定年後に転職 62歳の杉山さん(本人)
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 今、国会で社会保険料の負担を巡り、連日熱い議論が交わされている。11月1日、日本維新の会の音喜多政調会長が「給付と負担のバランスはすでに取れていない。総理自身も認識されていると思うが」と問うと、岸田総理大臣は「人口減少や少子高齢化が進むなか、負担能力に応じた負担とする観点を重視していく」と答弁した。

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 そうしたなか厚生労働省社会保障審議会の年金部会で、年金保険料の納付期間延長が提案されて議論となった。国民年金の納付期間を現行の40年間から45年間に5年間延長して64歳までとする案で、少子高齢化でも財源を確保し、支給額の低下に歯止めをかける狙いがあるとみられる。年金部会では賛成委員が多数で、来年中に改革案をまとめ、2025年の通常国会で提出を目指している。

 だが、「減税と言いつつきっちり負担は増やすと」「定年後65歳までどうやって納めればいいのか」「結局何歳まで働けばいい」(Xへの投稿から)と、不安と憤りの声もあがっている。

 65歳まで希望者全員の雇用が義務化されている日本で、いつまで働けばいいのか。『ABEMA Prime』では、定年後も働く当事者を招いて考えた。

「70歳まで働きたい」理由とは

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 現在はシニア人材の売り込み営業で働く62歳の杉山氏は、納付期限の延長に「国が決めたなら払わなくてはならないものだと思う。60歳で定年して、その後65歳まで何をするか。選択肢としては働かざるを得ない実情になってしまっている」と指摘。「60歳から65歳まで受け入れる企業はどれだけあるか。現状は厳しい。だから、これからは受け入れる企業側も枠を広げて考えていただき、高齢者を積極的に受け入れる体制を作っていければいいと思う」と述べた。

 サービス・接客業界に携わり60歳で定年退職した同氏は「自分は三十数年間同じところに務めた。定年退職をして、そのスキルだけでは人生もったいない、もう1つのスキルを作りたいと思った。できれば70歳まで働きたいという思いがあった。定年退職後で少し不安だったが、遅まきながら転職活動をして、今のシニアジョブで働いている。自分も高齢者で、仕事も高齢者に関するもの。だから、高齢者と各企業の気持ちをともに理解しつつ、やらせてもらっている」と、経緯を説明した。

 働く理由はそれだけではない。「経済面と生きがいの両面がある。趣味を活かしたい。毎日の生活も充実させたい。自分のライフスタイルをあまり変えずに確保しつつ、なおかつ経済的にもっと余裕を持ちたいというのがある」と語った。すでに年金は60歳までに満額を支払い、働いている間は受給せず繰り下げる予定だ。

やりたい仕事とミスマッチも 高齢人材の現実

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 杉山氏はシニアジョブの売り込みをしている経験を踏まえ、高齢者向け求人の現実を「例えば、自分は60歳を過ぎてもIT企業に勤めたいけれど、受け入れ側の企業はある程度の知識を求める。60歳以上は雇わない。そういった縛りを設けているので、今は企業側が選択肢を切っている側面がある」と指摘する。

 やりたい仕事と求人にミスマッチが生じている実情を踏まえつつ、一方で「どうでもいい仕事はない。意味があって仕事や企業があるので、そこに興味を持って飛び込むかどうかに尽きる」と述べた。

 実際、高齢者を常に求めているのは清掃員、マンション管理人、警備員、タクシー運転手などだ。これらの職種について「高齢者の受け入れ体制を持っているところが多い。ただ、忍耐強さが求められる。シフト制が多いからだ。例えば朝働いて、別の日は夜働く。そして次の日は休み。その繰り返しなので忍耐強さがないと続かない」と説明した。

 では、元の会社で65歳や70歳まで賃金が変わらずに働き続けられるならどうだったか。この質問に杉山氏は「定年退職をしてから1年間再任用をしたが、これ以上続けると、70歳まで働くために、別のスキルを持ちたいという希望がなくなってしまうので、1年を区切りとして転職にチャレンジした」と述べた。

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 定年前後の60歳から64歳が対象の調査では、65歳くらいまで働きたいと考えている人が約32%。70歳くらいまでと考えている人が約30%という結果も出ている(【上図】を参照)。

 ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「特に大企業は新卒一括採用のため、現場をやって営業、総務、人事と回りながらジェネラリストを養成し、60歳で定年を迎えた時に専門性が身についていない。元の企業に戻らない選択肢は、交通整理や管理人などの職種になる。しかし、今は30代で3〜4年おきに転職し、スキルを積み重ねていく人が大勢いる。するとその延長線上で“60歳でもそのスキルがあるならウチと契約させてください”というケースが今後間違いなく増える。急に仕事を変えなくてもやっていける可能性は充分ある。そのためには日本企業の働き方を変える必要がある。変わらない限り、皆にとって良い老後にならないのではないか」と指摘した。

(『ABEMA Prime』より)

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