将棋界の新団体戦「ABEMA地域対抗戦 inspired by 羽生善治」の開催が11月17日に発表された。全国を8つのブロックに分け、各地域の出身や縁のある棋士がエントリーし、選ばれた棋士が団体戦を行う。屋敷伸之九段(51)は、8地区で最大エリアとなる『北海道・東北地区』の監督に就任。抱える思いは「ファンと一緒に」。地域チームと出場登録棋士、棋士とファンら、“二人三脚”での地域活性化を目標に掲げた。
札幌市出身の屋敷九段は、1988年10月に16歳でプロデビュー。1990年、18歳6カ月で初タイトルの棋聖位獲得は、2020年7月16日に藤井聡太竜王・名人(王位、叡王、王座、棋王、王将、棋聖)に更新されるまで、31年間にわたり最年少タイトル獲得の記録だった。1991年には北海道から文化、スポーツ等の分野で輝かしい活躍をした個人、団体に贈られる「栄誉をたたえて」を受賞。以降、北海道の将棋界をけん引する第一人者として、今も活躍の場を広げている。
今大会では出身地だけでなく、エリアを東北に拡大し『北海道・東北地区』の監督を務める。屋敷九段は「非常におもしろい企画。(エリアは)広いですけど、熱心なファンが多い地域という認識です。ファンの皆さんとともに北海道・東北を盛り上げていきたいと思っています」と瞳を輝かせた。
全国各地で高まる将棋熱だが、北海道・東北エリアもその一つだ。2020年10月には、北海道研修会が新設。自身も幹事を務める研修会では、現在15人前後の会員が在籍いているといい「熱心にプロや女流棋士を目指して将棋を指しています」と目を細める。「アマチュアの方の大会もたくさん行われていますよね。そちらの方も若いファンや将棋を指す子どもたちが増えている」と実感を深めているようだ。さらに北海道・東北では、タイトル戦、女流タイトル戦も数多く開催されている。屋敷九段は「立会でタイトル戦に伺うことが多いのですが、ファンの方に声を掛けられる」といい、対局者だけでなく立会人にも応援の声があることに「ありがたい現象ですね」と大きくうなずいた。
全国的に「ファンの方や将棋を指す子供たちが増えている印象がある」と語る屋敷九段だが、やはり勢いを感じるのは藤井聡太竜王・名人(王位、叡王、王座、棋王、王将、棋聖、21)のおひざ元・中部エリアだという。「もともと熱心な地ですが、藤井八冠の影響でファンの方が増えている印象がありますね」。14歳2カ月でのプロデビュー以降、屋敷九段の最年少タイトル獲得記録を塗り替え、一気にトップ棋士へ。その興奮と盛り上がりは東海地区から中部エリア、そして日本全国へと波及した。
藤井竜王・名人の実績と言えば、圧倒的な将棋の戦績だけに留まらず、全国各地で行われるタイトル戦の対局中に注文する食事やおやつの“爆売れ”現象も挙げられる。11月10・11日に北海道小樽市で行われた第36期竜王戦七番勝負第4局でも、藤井竜王・名人が注文した“塩バタちゃん”こと「塩バター大福」は連日完売が続くなど、ご当地PRとともに経済効果も生んでいる。屋敷九段は全国屈指の食の宝庫・北海道、さらに海の幸・山の幸が豊富な東北の両エリアを抱えるとあり、「私もスイーツ系は私も好きなので、地元に行くとソフトクリームは結構いただきます。そのあたりも含めてファンの皆様にアピールできればと思います」と“宣伝部長”としてのやる気もみなぎらせていた。
広大なエリアながら、地域チームの人数では関東や関西エリアは下回る。それでも、「フットワークの軽い棋士が多いというイメージ」と心配はしていない様子だ。監督とメンバー、地域チームとファンなど、様々な“二人三脚”でエリア中を駆け巡り、「一緒に盛り上がっていくことができる大会にできれば」。監督・屋敷九段は、走り出したら止まらない。
◆ABEMA地域対抗戦 inspired by 羽生善治 全国を8ブロックに分けた「地域チーム」によって競う団体戦。試合には監督とチームから選ばれた出場登録棋士の4人の計5人が参加可能。試合は5本先取の九番勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールール。試合は1試合以上出場する「先発棋士」と、チームが3敗してから途中交代できる「控え棋士」に分かれ、勝った棋士は次局にも出場する。先発棋士は1人目から順に3人目まで出場し、また1人目に戻る。途中交代し試合を離れた棋士の再出場は不可。大会は2つの予選リーグに4チームずつ分かれ、変則トーナメントで2勝すると本戦進出。ベスト4となる本戦は通常のトーナメント戦。
(ABEMA/将棋チャンネルより)