それぞれの夢を書いた紙を掲げ、写真に収まる人たち。去年、あるムーブメントが歴史に刻まれた。それが、「#夢祭りギネス世界記録」だ。大人が当たり前に夢を語れる社会を作りたいという男性の想いから始まったこの活動。大人が夢を持つことはなぜ大事なのか、その想いに迫った。
「私の夢は日本から不登校の概念をなくすことです」「~僕の夢~ 介護を通じて沢山の人に出会うこと!」(Xから)
1300人以上が参加し、「1時間でTwitter(現X)に投稿された手書きメモの写真の最多数」として、2022年12月にギネス世界記録を達成した。発起人は“せら課長”こと、株式会社Omoitsuki代表の幸義一氏。
「1年に1回、『バカみたいに夢をつぶやく日があってもいいんじゃないの』と、みんなで夢があふれる1日を作ろうという呼びかけをしている」(幸氏、以下同)
幸氏は今年10月に『大人の夢の叶え方』(KADOKAWA)という本を発売した他、「夢」に関する講演会を行うなど、「大人が当たり前に、夢を語れる社会」を目指し活動している。自身も、かつてはごく普通の会社員だったが、たまたま読んだ本がきっかけとなり“2つの夢”を持つようになった。
「1つは、“大人が当たり前に夢を語るきっかけ”になりたい、そういう存在でありたい。もう1つは、まだ世の中にない素晴らしい、広めるべきアイデアを世界に向けてスピーチする“TEDスピーチ”に出たいと、そのときからずっと今も夢に持っている」
そして30代後半にして、企業のSNS運用を支援する会社を設立した。夢を持ったことで人生が大きく変わったという。幸氏が2020年から始めた“#夢祭り”という試みは、夢を持つ大人を増やし社会を良くしたいという思いからだった。
「『“#夢祭り”で初めて夢を口にした』『今まで誰にも言ったことがなかったのに夢を口にできた』など。今実際に夢を叶えていたりというのもある。そういう反響を多くいただいている」
そして、今年12月には4度目の開催も予定しており、次なる目標は1万人が参加する“#夢祭り”の実現だ。
「1万人が1日に夢をつぶやいたら、100万人以上がそれを受け取っていくと思うので、そうすると社会に対して“夢と向き合うきっかけ”を作ったと言えると思っている。マインドが変われば行動が変わってくるので、夢を語る人が増えれば『簡単じゃん。だったらこうしてみたら』『こんな人がいるから紹介しようか』と、夢を応援してくれる社会に変わっていくと思う」
自身も夢を持ち、そして多くの人の「夢」を見てきた幸氏。ワクワクすること。今できることの最大値を考えること。そして、自分自身のコンプレックスと向き合うことが大人が夢を持つための一歩なのではないかと話す。
「『いま満たされているんだよね』と言う人もいると思うので、そういう人はわざわざ夢を持たなくても別にいいと思う。ただ、もし何か人生のどこかで悶々としたときに、『本当はやりたいことあったんじゃないの?』と僕は思っている。自分の夢という軸・基準を持つことができれば、満たされた大人が増えていくのではないか。ひいては、子どもにもそれが波及していくのではないか」
“夢”について、慶応義塾大学の特任准教授でプロデューサーの若新雄純氏と、ニュース番組『ABEMAヒルズ』の柴田阿弥アナウンサーが考えた。
柴田:夢とはなんだと思う?
若新:よく「夢は見るものじゃなくて叶えるものだ」と言う人がいるが、個人的には真逆のスタンスで、夢は叶えるとかケチなことを言うもんじゃなくて、ただ見続けるのがいいと思っている。
叶うかどうかを考えると、「僕の人生で可能なのか」「親ガチャに外れて無理だ」など現実的に考えてしまい、人間は急につまらなくなる。「叶うかどうかわからないけど、こうあったらいいな」「こうなら楽しいかも」と思っている瞬間はわくわくする。あの状態が大事だと思う。
柴田:妄想みたいな。
若新:そう。だから思春期のころは金もないのにちょっと幸せだったのは、「そういうことがあり得るかも」と未来を自由に妄想できるから。
ところが、ちゃんと「将来どうなりたいか」「叶えたい夢を考えよう」と言いすぎるから、思春期の子まで実現可能かどうかを逆算してしまう。それは夢とは言わず、かなり短期的なただのプランではないか。
そのプランを1個ずつ達成していく人生も悪くはないが、人間は何か1個叶えても次のものを叶えたくなってきりがないので、叶わないかもしれないが、常に「まだこの人生は何かできそう」という余地があることが大事ではないか。僕は夢というよりロマンのようなものと捉えている。
柴田:ロマンならイメージがつかみやすい。
若新:叶うかどうかは別として、やりたいことを口に出していると人生に与える影響は大きいと思う。それに近い人に出会ったりチャンスを築きやすくなる。
何を成し遂げたかはあまり重要じゃなく、実感が大事だと思う。やりたいことがあるから「ちょっと今日も頑張るか」という気持ちでいられた。最近議論されているウェルビーイングも“あり方”みたいなものが大事だというので、叶ったかどうかにこだわりすぎない方がいい。
柴田:学生のころに夢を書かされたが、「そんなのは無理だ」と言われたりして、何のためにやるのかと思っていたが、すごく納得できた。ずっと、夢と目標がよくわからなかったが、ロマンと考えるとすごく楽。
「最近の若い人は夢がない」「もっと夢を持って働こう」「やりたいことを仕事に」と強要する雰囲気がちょっと気持ち悪かった。
若新:様々な情報から実現可能かつい逆算しがちだが、自分の能力、見た目、経歴では無理かもしれない思うとつまらなくなる。非現実的なものを持ち続けられている、幸せな状態の方が僕は大事。
(『ABEMAヒルズ』より)
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