社会保障の改革工程表で、75歳以上の人が医療機関で支払う窓口負担を原則2割へ引き上げすることが検討されている。改革後は、児童手当の拡充など少子化対策の財源に充てる考えだという。
現在、75歳以上の後期高齢者の医療費は全体の40%弱を占めていて、75歳以上の窓口負担は一定以上の所得がある人は2~3割、残りの約70%は現在1割負担となっている。
この75歳以上の医療費を原則2割へ引き上げる案について、『ABEMAヒルズ』はダイヤモンド・オンライン編集委員の神庭亮介氏に聞いた。
「病気を抱え通院を必要とする後期高齢者の方からすると、苛立ちもあるかもしれない。ただ、『祖父母世代に比べて孫世代が1億円損をする』と言われる世代間格差の大きさを考えると、引き上げはやむを得ない。今、現役世代は3割負担、後期高齢者は原則1割負担となっている。現役世代は税金や社会保険料の『天引き地獄』に苦しんでおり、これ以上負担を増やすのは現実的ではない。後期高齢者も含めた全世代での公平な負担が必要だ。また、お金を支払う人(現役世代)と使う人(高齢者)が食い違っていることにも問題がある。“他人のお金”となると、どうしても使い方が緩くなりがちだ。なかには、1割負担で安いからと、毎日のように不要な通院をしている人もいるだろう。2割、3割と負担が増えると自然に抑制が働き、際限のない医療費の膨張を抑えることにもつながる」
では、現役世代と同じく後期高齢者も3割負担にした方がいいのか。
「現在検討されているのは2割負担だが、最終的には現役世代と同じく3割に引き上げるべきだ。日本の家計の金融資産の63%を60代以上の高齢者が保有している。年金収入などのフローだけでなく、ストック(資産)にも着目して、『本当に困っている人』が誰なのかをしっかり見極める。そのうえで、世代間格差を縮める努力をしていく必要がある」
2割に引き上げをした後は、少子化対策などの財源に充てるとあるが、この使い道についてはどうか。
「一見いいことをしているようだが、お金をたくさんかき集めて、それをまた配り直すという壮大な無駄をしている。現役世代は重たい社会保険料負担に苦しんでいるので、シンプルにそれを引き下げれば少子化対策になる。最初から集める額を減らせばいいだけで、わざわざ配り直す必要はない。社会保険料を下げることで、世代間格差の是正を図る方が効率的なのではないか」
(『ABEMAヒルズ』より)
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