アメフト部員の薬物事件の対応に追われる日本大学をはじめ「組織の問題点」が注目される事案が相次いでいる。どうすれば「閉鎖的な組織」特有の体質を改善することはできるのか? 組織論の専門家に見解を聞いた。
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「1.全てを内部で収めるムラ社会の存在、2.情報伝達を阻害する秘密主義、3.学外者を排除する排外主義」
日本大学アメリカンフットボール部の薬物事件の対応を巡り、学内の検討会議で議長を務めた久保利英明弁護士が指摘したのが経営陣の組織風土だ。
組織論を研究する同志社大学政策学部の太田肇教授は事件をきっかけに露呈した日本大学という組織の問題点をこう分析する。
「二重の意味で“共同体”になっている。1つは事件が起きた寮あるいはアメフト部という組織が閉鎖的な共同体であり、もう1つは問題に対応した大学組織も内向きな共同体だ」
麻薬取締法違反の疑いで逮捕・起訴されたアメフト部員、北畠成文被告は初公判において部内で大麻を吸っていたのは「10人程度だったと思う」と述べ、「副学長がもみ消すと思った」との認識を示している。
当初は個人的な犯罪だとみていた大学側も集団的・常習的に行われた疑いがあったと結論付けており、日本大学スポーツ科学部 益子俊志学部長も「大麻の使用を知らなかった学生もいる。しかし全員が知らなかったということではなく、知ってる学生はいただろうという感触はある」と発言している。
これに対し太田教授は「外から見たら大麻の使用は絶対許されないことだが、内側ではそれほど悪いことだと認識されていない。『外にバレなければいい』というような気持ちがどこかで働いていた可能性はあると思う」と見解を述べた。
問題が公になれば、多くの部員や関係者が巻き込まれることに…。組織を守るため、できるだけことを大きくせず解決したいという内部の独特な慣習や規範がこの問題の背景にはあると太田教授は分析する。
■「上昇思考」が妨げる
組織から生まれた問題は、プロ野球界でも━━。
若手選手へのパワーハラスメントがあったとして12月1日、楽天の安楽投手が自由契約となり、球団側はパワハラの現場を見聞きした選手がおよそ40人いたことを明らかにした。なぜ選手たちは声をあげられなかったのか?
太田教授は「問題は大多数を占める“傍観者”だ。“上”から目をつけられたくない、周囲から除け者にされたくない、あるいは問題を指摘しても潰されてしまうのでは、などの思いからなかなか告発に踏み切れなかったのでは」と推測する。
さらに、宝塚歌劇団で9月末、25歳の劇団員の女性が死亡した問題。歌劇団側は「いじめやハラスメント」は認めていないものの、「長時間にわたる活動に、上級生からの指導が重なり、心理的負荷となった可能性は否定できない」としている。
太田教授は「スポーツ界や芸能界における上下関係の弊害」には2つの共通点があるという。
「1つは閉鎖的で外の目が中に入りにくい、あるいは人の移動・入れ替わりが少ないこと。もう1つは固定的な人間関係ができるとおのずと、上下関係が序列化されてしまうことだ。スクールカーストなどと言われるものに似たような構造ができる。そんな組織の中、誰もがレギュラーになりたい、表に出たいなどの上昇志向を持っているため、理不尽なことがあっても我慢してしまう」
一方で、先輩と後輩の関係性は、時に一生続くような素晴らしい信頼を築ける場合もある。その違いについて太田教授は、「上の者が権威を振りかざす、あるいはその地位を守るために下の者に対して 高圧的な部分があると良い関係にはならない。良い関係ができるかどうかは、『上に対して意見が言えるかどうか』この点に尽きる」と見解を示した。
閉鎖的になってしまった組織が体質改善する方法はあるのだろうか?
太田教授は「閉鎖性を打ち破り、オープンな組織にしていくことが重要だ。そのために人の出入りを増やし、外の目が内に届く仕組みを設けるべき」と述べた。さらに、「理不尽な世界から逃げられる“別の居場所”を持つことは大切。ここしかないと思うと逃れられないが、他の場所があるとなったら自分はそこに逃げればいいという気持ちになる」とした上で、日本では特に、1つの共同体に閉じこもる傾向が強く、周囲から見えない不祥事の原因にもなっていると指摘した。
(『ABEMAヒルズ』より)
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