正月まで1カ月を切り、おせち商戦も佳境に入ったが、コロナ禍を経てその役割が多様化しているという。今年注目のおせちについて、大手百貨店を取材した。
家庭で手作りするイメージのある「おせち」。ここ数年は、自宅で楽しめるごちそうとして、百貨店などで購入する人が増えている。新型コロナ5類移行後初の年末年始を前に、今年の売れ行きはどうなっているのか。
大丸東京店・おせち担当の柴田智さんによると、コロナ期間中の約3年間で売り上げは67%伸び、今年も前年並みで推移しているという。コロナ禍での巣ごもり需要や、帰省できない代わりに実家へおせちを贈るという人が増え、飛躍的に伸びたおせちの売り上げ。これまでおせちに関心が無かった人々にも食べる習慣が根付いたという。
また、売り上げが伸びた背景については「以前は、百貨店の主要な顧客層である60代70代のお客様が多数いらっしゃいましたが、ECを強化したことで30〜40代の方にもおせち料理をお買い求めいただけるようになりました」と話した。
購買層も広がったというおせちの需要。2024年はどんなおせちが人気なのか。
コロナ禍中になかなか会えなかった家族、親友にも今年は会えるということで、大丸東京店でも大人数で一緒に食べられるおせちの予約が伸びているという。
中でも今回、一番売れているというのが居酒屋探訪家として知られる吉田類さんが選んだ、酒の肴にピッタリの献立を40種類ほども詰め込んだ「おつまみ玉手箱」。ネーミング通り、まるで玉手箱のような美しさだ。
また、ここ数年でラインナップを強化した“個性派おせち”が今年も人気だという。
一例として、好きなものだけが詰まった「欲望おせち」。これはシャトーブリアンやイチボ、トモサンカクなど、牛肉の希少部位が詰まった「近江牛づくし」や、「松阪牛ローストビーフ食べ比べ」など、肉好きにはたまらないのが肉まみれおせちだ。
そして、洋菓子の最高峰、ピエール・エルメ・パリのおせちや、堂島ロールで有名なパティスリーモンシェールのおせちなど、色とりどりのお菓子が詰まった、スイーツ尽くしのおせちは目にも鮮やか。2個目のおせちとして購入する人が多いそう。
「食卓が華やかになりますし、通常のおせち料理はあまり食べない小さなお子様とか、そういった方にも食べていただけることが支持を集める理由かと思います」(柴田さん)
用途や好みで選択の幅が大きく広がったおせちだが「おせち」と聞いて思い浮かべるのは、エビは「長寿」、昆布巻きは「よろこぶ」、栗きんとんは「金運上昇」…など縁起をかついだ食の数々。
そもそも、おせち料理とは何なのだろうか?
国立歴史民族博物館 副館長 山田慎也教授によると、季節の節目の供え物=「御節供(おせちく)」が語源で、「正月に食べる料理を指すようになったのは江戸時代。『祝肴(いわいざかな)』といわれ、数の子、手作り、たたきごぼう、黒豆、昆布、スルメなど限られたものを重箱に詰めていた」という。さらに、「明治期に婦人雑誌で蒲鉾、きんとん、卵料理などが紹介されており、明治後期にはタンや牡蠣料理など洋食も登場。現在のようなおせちの形になったのは昭和初期頃」と見解を示した。多様なおせちが販売されている昨今については、「それぞれの時代で新年への願いを込めて食べられてきた。現在では、日頃は食べない特別な食を購入して食べることで、一年の節目を祝おうという営みになっている」と分析している。
行動制限がなくなり、久々に親族が集まるという家庭が増えそうな年末年始。家族の団らんに華を添えるおせち、あなたはどんなタイプを選ぶだろうか?
(『ABEMAヒルズ』より)
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