政府は多子世帯の大学の授業料を無償化にするなどの少子化対策を盛り込んだ「こども未来戦略」の案を公表した。
政府は11日、2028年度までに3.6兆円を投入する「こども未来戦略」の案を明らかにした。扶養する子どもが3人以上いる多子世帯に対して、上限はあるものの大学の授業料や入学金を無償化にする考えだ。
例えば3人のうち2人が大学に在籍している場合、2人とも無償化の対象になる。ただ、3人の内1人でも扶養から外れて2人以下になると全員対象外となってしまう。教育費を理由に理想の子どもの数をもてない現状を払拭するのが狙いで、所得制限は設けないとした。
政府は今月中の閣議決定を目指している。
この政府案について、東京工業大学の西田亮介准教授は「従来の少子化対策や政策における公平性という観点からは疑問が残る」と述べ、次のように評価した。
「多子世帯の中でも“3”という数字を強く印象付ける政策だ。人口が増加するということにフォーカスするのであれば『子どもが3人はいないと増えませんよ』と受け取ることはできる。ただし、『所得』という観点でいえば、子育て世帯の所得は全世帯の平均よりも高く、しかも多子世帯は、その中でも比較的裕福だと考えられている。そう考えると、3人以上いる多子世帯だけを支援することに違和感は残る。公平性の観点でも子どもが少ない世帯にも経済的な理由で進学が困難という人もいるだろう
この政策は少子化対策に有効なのだろうか。
「前提として、日本は『結婚を経て子どもが生まれる』ケースが多いため、第一の少子化対策としては、『結婚する人たちを増やすこと』が重要だ。そして次に、1人目、2人目を産んでもらいやすい制度・環境作りをする必要がある。少なくない子育て世帯において3人目どころか2人目にも至っていないからだ。今回の政策では結婚や1人目、2人目の出産には何のインセンティブもない。そういう意味では、従来の少子化対策の考え方ともズレた政策だ」
最後に、西田氏は「いま子どもを生んでも20年後にこの政策が続いていると信頼できない点も重要だ」と明かした。
「この手の政策が機能するといった時には、長く続いていくことが期待できなければならない。しかし、日本では実際に10年前には児童手当が子ども手当に変わり、また児童手当に戻った。二転三転している。さらにその過程で『年少扶養控除』は廃止になった。手当がついたり、なくなったりするわけだ。
小池都知事が『(都内の)高校の授業料無償化』を打ち出してきたり、いま、子育て支援は人気の政策だ。そういったなかで、政府が苦し紛れに出してきたような印象は強い。来年には国政選挙が行われる可能性もあるなかで『20年後もこの政策はあるのか』『数年後には所得制限がつくのではないか』などと想像してしまい国民がこの政策の継続性を信頼できないとすれば、何の役にも立たない政策になりかねないだろう。政府がどうやって信頼性を確保していくのかも問われている」
(『ABEMAヒルズ』より)
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