最近、SNSで相次いで子のいじめをテーマにした作品がマンガ化されている。総務省の調査によると「いじめを誰にも相談できない」という声は23.8%、背景には「悪化するから」「自分が我慢すればいいだけ」などの不安の声がある。
2人の子どもを育てるmoroさん(46)も自身の体験をマンガにして発信。5年前に当時小学2年生だった娘がいじめにあい、一旦解決したものの、中学校で加害者と同じクラスになり、13歳の娘は誰にも相談できず、一人で抱え込んだという。「娘に申し訳ない。なんでも話が聞ける感じならもっと早く対応できたのに」と当時を振り返る Moroさんだが、気付いた後も対応を巡り“壁”を感じた。「担任の先生がことなかれ主義で、娘がきちんとすればいじめはなくなるという認識の先生だった」と語る。実はSNSでも、学校への対応に不満を漏らす声が多い。
いじめに親はどうすれば気付けるのか?大人はいつ介入すべきなのか? 『ABEMA Prime』では、子どもがいじめ被害にあった母親と元教師を招いて考えた。
娘が不登校に…いじめの実態と親の苦悩とは
小学2年生の娘が、いじめ被害に遭い不登校に。当時の対応に後悔しているというフリージアさんは「クラスの男児生徒からお腹を殴られたり、“死ね、殺すぞ”などの暴言を吐かれ、唾を吐きかけられることが日常的にあった。下校時に公園の茂みに隠れていて追いかけ回されたり、他の家庭の話では金銭を強奪された例もあった」と実態を語る。
しかし、当初は、「違和感は感じていたけれど、いじめとは思わなかった」という。では、どのように気付いたのか?
「学年が変わった時期で、運動会などの行事もあり、それで疲れているのかな?としか思ってなかったが、同級生が“毎日いじめられているよ”と私に教えてくれた。子どもたちはいじめと認識しているけれど、学校や教師、私を含めた大人が認識していなかった」ときっかけを明かした。
その後、娘の要望で学校見学に行ったものの、不登校に。現在は週に2、3日登校できるかどうか。加害児童が大きな声を出したりするのを見聞きすると、いつ自分に向かってくるかという恐怖心で学校に向かう足取りは重くなる。フリージアさんは「1日に5分でも10分でも、子どもと触れ合う時間、観察する時間を持って、気づけたら良かった。あとは親の保身だが、“これくらいのことで騒ぐのは…”、“モンスターペアレンツ扱いされるのでは”と思ってしまった」と後悔を滲ませた。
公立中学元教師に聞く学校側の対応手段
一方、公立中学校の教員を10年間務め、今はいじめ被害の相談を受けるのぶさんは、「子どもたちが親に心配をかけたくない気持ちが大きいと思うが、学校でのトラブルや人間関係を親に相談するという選択肢がない子もいる」と指摘する。
具体的な対策について「まず教員側としては加害者を教室から出すことが重要。いじめの背景は全て人間関係。大勢いればトラブルは起きる。その時にいじめ行為をダメだと突きつけてあげることが大事」と言及。理由について「曖昧にするとあとで悪化した時、“いや、あいつもやっていたじゃないか”、“他の人もやっているのになぜ私だけ怒られるのか”と、取り返しがつかなくなる。子どもが困って家族に相談する頃には、もう学校ではどうにもできない状態になってしまう」と述べた。
また、加害児童への指導方法について「怒ることはあまり効果がない。怒った結果、その場で理解する子は、相手を追い込むようないじめをするタイプではない。怒っても“うるせえよ”と思いながらあとでやり返すような子が、後で大きなトラブルを生む。だからこそ一度集団から出すことが重要」と実態を明かした。
実際にいじめが起きた際、現場ではどのように対処するのか。 のぶさんは別室に加害児童を出す対応を例に、こう説明した。
「特別教室など空いている教室で、一日個別指導をする方法がある。クラス内に加害児童がいると、他の子は気を使って何も言えない、行動できないので、いじめに対して強く出られない環境になる。加害児童が一旦クラスから出ると空気が変わる。そこで周りの子に“あれはやっぱりダメなんだ”ということを学んでもらう。
なおかつ、いじめをしていた子と落ち着いて話すチャンスもできる。怒鳴ってしまうと反発されるのでコミュニケーションも取れない。加害児童との関係がダメになるとどうにもできなくなるので、被害者と加害者を切り分けてそれぞれフォローすることが必要だ。
悪化してからでは遅い。親に相談して“なぜ加害者を出席停止にできないの?”と言われた時には、加害者は10人、15人と増え、“もうクラス全員やっているじゃん!”という状況になってしまう。全員を出席停止にできるのか?それは無理だ。その前に手を打たないと適切な処置にならない」
加害児童を守りすぎ? 出席停止命令も“ほぼ”使われず
のぶさんが言及したとおり、いじめ防止対策推進法 第二十六条(【図】を参照)では、加害児童などの保護者に対して、当該児童の出席停止を命ずる等ができるとされている。ただ、2013年度の施行から小学校で3回、中学校で16回しか使われていないのが実態だ。
フリージアさんのケースでも、同法を踏まえて学校長に“適切な処置を講じてほしい”と交渉したものの、「加害児童にも未来がある」となかなか取り合ってもらえなかった。
タレントの池澤あやかは「大人なら第三者を挟んで金銭的にやり取りしたり、警察が逮捕するなどドライな手立てがたくさんあるのに、子どもたちのいじめに対しては、お互いの努力やいずれかを悟すなどウェットな方法しかないのが現実」とコメント。
フリージアさんは、「被害者ばかり我慢を強いられるのではなく、被害児童が守られる社会になってほしい。いじめという言葉で片付けないでほしい。学校は治外法権なのか。なぜ法律を守らないのか。同時に、親や学校・教師など大人は、加害児童がいじめ行為によってSOSのサインを出していることも忘れてはならない」と訴えた。
(『ABEMA Prime』より)
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