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【映像】100万円も 世田谷区の返礼品一覧
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 年の瀬で本格化する「ふるさと納税」のかけこみ寄付。地方創生のため2008年から始まり、2022年度には約890万人が利用するまでに浸透したが、「待った」をかける声があがっている。小池百合子都知事などが「受益と負担という地方税の原則を歪めるものである」とし、総務省に抜本的な見直しを求めたのだ。税金が他の自治体に流れ、都の税収が減っていることを問題視したほか、返礼品競争などにも疑問を呈した。

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 特に悲鳴をあげているのが、東京・世田谷区だ。最新の数字では、税収の約99億円が流出し、保坂展人区長は「流出に歯止めが掛かっていない状態」と危機感を示す。とはいえ、地方の税収が増えているなら本来の目的を達成しているのではないか。ふるさと納税の問題点について、『ABEMA Prime』で保坂区長と考えた。

■「限度を超え始めている」

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 世田谷区の当初予算総額3619億8700万円(2023年度一般会計)における、99億円の減収が与える影響について、保坂区長は「限度を超え始めている」と主張する。

 「区民サービスに影響が出ないようにしてきたが、この勢いが続くと”どこを削るか?”という話になる。道路の補修や、老朽化した学校の建て替えが今は多く、後者は1校に40億円前後かかる。年間3校、十数年かけて90校を建て替えていく計画だが、何年か後には規模を縮小するとか、“もう少し待ってくれ”という話になりかねない。新型コロナも大変だったが、いつ何が起こるかわからない。92万人の暮らしを預かっているので、区が機能しないということは絶対に避けたい」
 

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 また、地方からも「不公平」という声があがっている。山形・酒田市の矢口副市長は「地方が18歳まで育てた子どもたちを都会に吸収されている」「ふるさと納税の制度がなくなれば、地方交付税を充実させるとか別の制度がないと、とてもやっていけない」と話している(2021年の番組出演時)。

 プロデューサー・慶應大学特任准教授の若新雄純氏は「理想は都会のお金持ちが田舎に寄付する状態だけど、今は全国どこからでもできる。つまり貧乏な自治体は、力を入れないとなけなしの税収が外に出ていくだけになる。これまで地元を支えてきた名士も、“良い返礼品があるんだったら”と外に寄付してしまうだろう。役所では、この数年で専門の課ができたり、職員が配置されたりしている。制度がある以上、やらなくては損な状況だ」と指摘する。

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 保坂区長は、制度の廃止ではなく、寄付額に上限を設けることを提案。「これだけ定着しているものを、止めるというわけにはいかない。ただ、無尽蔵にできるのはどうなのか。ものすごく稼いでる方は1000万円の寄付もできる。だけど、地方を支えるなら特産品を応援するのでもいいわけで、青天井である必要はない。議論は必要だと思うが、上限があれば世田谷区からの流出は99億円もいかない」とした。

■「不交付団体」だと75%の減収補填なし

 ふるさと納税による減収は、1位が横浜市で272億円、2位が名古屋市で159億円、3位が大阪市で149億円、4位が川崎市で121億円、5位が世田谷区で98億円(8月時点)。総務省は、自らの税収だけで財政運営が可能な自治体について、減収補填がされない「不交付団体」を認定しているが、実は上位3つの市は入っていない。

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 保坂区長は「補填は75%だから、例えば横浜市は204億円戻ってくる。つまり一番苦しいのは川崎市で、その次が世田谷区だ。交付団体から不交付団体になる場合もあるのだが、それはもはやペナルティだ。また、今年の補填額は3600億円を超えている。大阪・関西万博の国費(最大1647億円)の倍以上の税金を突っ込んでいることを考えると、“私はふるさと納税をしていないから無関係”とは言えない」と問題提起する。

 その上で、「本来は国会議員がちゃんと議論すべき話題だが、各党とも偉い人は地方出身なので、タブーになってしまっている。先ほど言った上限の話と、もう少し社会的意義のある福祉や自治体のサポート、例えば、児童養護施設を出た若者を応援する給付型奨学金、医療的ケアの子どもたちに非常用電源やキャンプを贈る、高齢者を支えるボランティア活動など、税金の使途を決められる利点もある。そういうところをもっと優遇させてほしい」と訴えた。

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 東京・港区議会議員の斎木陽平氏は「私は福岡出身だが、いろんな地方出身者が集まっているのが東京だ。その人たちの福祉や教育をケアするための財源でもあることは理解していただきたい。この問題を突き詰めていくと、人口問題だと思う。若い人たちが東京で子どもを産めなくなっている中で、東京都としてはもっと手厚くしていきたいが、その財源が流出している。港区からは69億円が出ていっているが、これは子ども1人に200万円ずつ配れるくらいの金額だ」と述べた。

 保坂区長は「この制度はみんながライバルで、向こうから取れ、あっちから取れ、という関係だ。実は都会がすごく弱いのが、災害。大きな地震が起きたら、日本全体の力を借りないと再生できないだろう。だから、地方を支えることは大賛成だが、この制度はちょっと乱暴過ぎる。3600億円を補填に使うなら、その財源で別の使い方を考えていただきたい」とした。

(『ABEMA Prime』より)

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