84歳のレジェンド棋士が、独自のワールド全開のマシンガントークで令和の天才棋士を圧倒した。将棋の藤井聡太竜王・名人(王位、叡王、王座、棋王、王将、棋聖、21)が、ABEMAの特別番組に出演した際、VTR出演したのがデビュー戦の相手だった加藤一二三九段。史上初の中学生棋士で、タイトル8期を誇る名棋士だ。2017年6月に現役引退となったが、VTRでは藤井竜王・名人との思い出から自身の好物まで、あちこちに話の方向が飛んでいく「ひふみんワールド」が全開に。藤井竜王・名人も「独特の価値観が…」と圧倒された。
【映像】藤井聡太竜王・名人も困惑 加藤一二三九段のワールド全開
2023年に史上初の八冠独占を果たした藤井竜王・名人に対して「誠におめでとうございます。空前絶後の大記録。当面、タイトル戦の防衛戦に励むことになると思いますけども、これからも大いに活躍して将棋界を明るくしていただくことを期待しています」と祝福すると、2016年12月に行われた対局を回顧。「藤井四段がまだ14歳。藤井さんにとってデビュー戦が私と対局でした。私の先手番で矢倉で戦いが始まったんですけど、途中で藤井さんに非常に巧みに戦われまして、終わってみますとほとんど私に勝つチャンスがなかった。完敗の一戦でした」と、後に八冠独占を果たす天才棋士の、伝説の始まりともいうべき一局について語った。
ここまでなら普通の棋士でも語れそうなところだが、ここからはもうワールド全開の独演会だ。特徴でもあった長いネクタイについては「たまたま長くして戦ったら気分がよくて、長く結ぶ習慣がついた。藤井さんは常識的な方だから、ネクタイは普通に結んでいいと思います」と、唐突なアドバイスを飛ばした。さらに将棋めしについては「千駄ヶ谷に『ふじもと』という鰻屋さんがありまして。昼は2匹のうな重、夜は3匹のうな重、40年くらい食べ続けた」という有名なこだわりから「藤井さんは21歳でしょ。(うな重は)ちょっと重いと思う。各地を転戦しますけど、例えば天ぷら定食とかお刺身定食とか(がいい)。今の若さだとビーフステーキもやっぱり重い」と、なぜか胃腸も若いはずの藤井竜王・名人に対して、パンチの強い食べ物を勧めないという“珍手”を繰り出した。さらには「藤井さんは結構気を遣って地元の食事を注文して偉い。私なんか各地を転戦しても、自分の好きな食事だけ食べていました」と、自由奔放だったことを明かした。
ここでようやくワールドも折り返し地点だ。今度はおやつトークが始まった。「みかんなんかいいと思う。どんな季節でもみかんは注文できる。あとはあの、あの、なんだっけ。チーズケーキ。私のライバルだった中原誠名人はおやつがチーズケーキでした。私は途中からカマンベールチーズ。チーズだったら頼めば出てきますからね」と話し終わると、用意周到なスタッフが差し出したチーズを思い切りもぐもぐ。そして唐突に「きーよしー、こーのよーるー♪」と歌まで披露し始めた。締め括りは人生観について。「もしこれから先、何年か経って、しっかりとした自分の人生を考える日がくれば、加藤一二三九段を見てください。加藤九段は非常に将棋棋士として精進したけれど、途中で深い人生観を持って、それで長年に渡って嬉々として行き詰まらないで棋士として対戦した」と、棋力ではなく人生について思い悩んだ時は、自分を手本にしてほしいと伝えた。
怒涛のVTRが終わると、聞き手を務めた中村桃子女流二段(36)が「ワールド全開といった感じでした」と笑うと、藤井竜王・名人も「本当に加藤先生の世界が止まらない感じ。中原先生がチーズケーキをよく頼まれていたというのも、知らない話がたくさん出てきておもしろかったです」と楽しげだった。そしてやはり中村女流二段も、うなぎが重いという点を疑問に感じたようで、質問すると「でも普通は若い方が食べられるということが多い気がするので、加藤先生独特の価値観が…」と笑い混じりに困惑していた。なお、デビュー戦の思い出としても、やはりカマンベールチーズの件がインパクト抜群だったようで「対局中に加藤先生がカバンを取りに行って、何を出してくるんだろうと思ったら、やはりカマンベールチーズ。それを出して食べられていたというのが非常に印象的でした」と、思い出し笑いをしていた。
(ABEMA/将棋チャンネルより)