能登半島地震をめぐって問題になったSNSへのデマ投稿。その一方、本当に助けを求める人も存在する。こうしたなか、正しい情報を見極め救助に繋げることは可能なのか。専門家に聞いた。
「逃げれられませんでした。助けてください。情報を拡散してください」
各地に甚大な被害をもたらした「能登半島地震」。救助を求める投稿には、東日本大震災の津波の映像を使用したものや、存在しない住所を記載した明らかにウソのものもあるが、SNSで拡散された。
その一方、本当にSNSで助けを求めた人も…。
「SNSで助けを求めることしかできず、もうこのまま死ぬのかなと感じていた」
妻とともに、倒壊したアパートに生き埋めとなった男性。投稿から約2時間後に救助されたという。
被災した際、SNSは危機的な状況を伝える手段となり、他の通信手段がない時には助けを求める唯一の方法ともなりうる。こうした本物の情報を見極めて救助に活用することは可能なのだろうか。
「残念ながら、現状では災害時のSNS活用は十分ではないと考えている」
こう話すのは、災害時におけるSNSの活用や分析、防災ツールの研究を行う東海大学の内田理教授。今回の地震に関する一連の動きをこう分析する。
「明らかに『これは当事者じゃないだろう』という投稿もあった。最近のSNSは閲覧数で収益が上がるという仕組みが導入されている。閲覧数を稼ぐ目的で、不正確な情報を投稿したり、拡散したりという事例が今回は見られた」
閲覧数稼ぎを目的にする悪質なデマの拡散が問題視されるSNS。しかし、ここ数年、自治体が災害時の情報収集の手段として活用するケースもでてきている。2019年に発生した台風19号の際、長野県の防災アカウントが情報収集に当時のTwitterを利用。その後の救助に繋げたという。また、埼玉県和光市や茨城県かすみがうら市など、災害時に独自のハッシュタグの利用を促している自治体も存在する。
「119番通報ができない状況も現にある。現状、その代替となりうる手段の一つにSNSはあると思う」(内田教授)
こうしたなか、求められるのが「正しい情報」をどう抽出するか──。
大きな災害が起きたとき、人間は冷静に行動ができないということを前提に、システムの方で情報を制御できないか。内田教授らが開発した災害情報共有システム「DITS」は、GPSの位置情報を元に正確な現在地の情報を表示し、Xでハッシュタグとともに救助要請を投稿できるという。
「実際そこにいない人はこのシステムで投稿することはできない。正確な情報を集めることに繋がると思っている」
内田教授は、こうした研究が誤った情報の拡散を食い止めることにつながると期待をのぞかせる。
「SNSに救助要請が投稿されること自体はあって良いものだが、現状の使われ方は改めていく必要がある。私の研究がそれに貢献できれば」
今後、災害時にも咄嗟に使えるように国や自治体と連携してシステムの改良を重ねたいという内田教授。デマの拡散という負の側面がクローズアップされたSNSにも、使い方によっては“命を救う手段”になると訴えた。
「次の災害までに誤った使われ方がされない、できないようになり、うまくSNSを使って、救える命が増えればというふうに考えている」
この問題に対し、『ABEMAヒルズ』に出演した森永康平氏は、次のように述べた。
「民間のSNSサービスを使うと、インプ稼ぎのような問題が止められない。災害用のシステムは国が運営したほうがいい。今回、虚偽の情報がこれだけで回ったという事実があるので『災害用のSNSは必要』という機運が高まるのでは」
(『ABEMAヒルズ』より)
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