内閣府が12月に公表した調査によると、地方から東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の1都3県)へ転入する人が増えており、特に若い女性が地方から離れる傾向が深刻化しているという。
なぜ、物価や自然などの面において恵まれている地方は若い女性に選ばれないのか? 『ABEMAヒルズ』はその背景に迫った。
総数で見ると女性の東京圏への転入は男性を上回って推移しており、15歳から29歳の若者においても2015年以降、女性が男性を上回っている。
なぜ地方を離れ、東京圏を選ぶのか?
その理由については男女共通で「進学や就職したい先があった/選択肢が多かった」が挙げられているが、女性は「他人の干渉が少ない」「娯楽や生活インフラが充実している」「多様な価値観が受け入れられる」なども転入の理由として挙げている。
背景には「性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)」があり、男性に比べ女性は「集まりでお茶入れや準備などは女性がしていた」「住民間のつながりが強かった」「世間体を大事にする人が多かった」「就職した女性は結婚・出産で仕事を辞めることが多かった」と感じている割合が高いという。
都会と地方を行き来している慶應大学客員准教授でプロデューサーの若新雄純氏は「都会の人からすると『今は昭和じゃなくて令和だよ?』と驚くような男尊女卑が地方には残っている」と話す。
「都会から、ある地方のテレビ局に就職した女性アナウンサーはテレビ局の偉い男性に『これ、シュレッダーにかけといて』と書類を渡されて愕然としたのだという。自分は新人だから“アナウンサーとしてやるべき雑巾がけ”はなんでもするが、まさか全然自分の仕事と関係ないことを頼まれると思わなかったのだ。おそらく、その男性は意地悪とも男尊女卑な行為とも思っていなかったのだろうが、その自覚のなさがかえって怖かったのだろう。この地方のテレビ局を責めたいわけではないが、こういった現実もあるのだ」
さらに若新氏は「女性が東京圏に出るメカニズム」について「地方の中高生たちは『自分の母親の職場状況』や『地元に残った知人の話』なども聞いて絶望している。その結果、物価が高くて競争は激しくても、勝ち抜けば女性も対等に出世するチャンスがあり、産休・育休を経ても復帰できるような環境が整っている都会が魅力的に見えるだろう」と解説した。
女性の転出が増えた結果、地方では性別による「人口の不均衡」という問題が生じている。
20歳から34歳の未婚者の男女人口比(女性1人に対する男性の人数)を都道府県別に見ると、1.2を上回る県は24県、1.3を上回る県は7県もあり、特に若い女性の流出が進む北・東日本では相対的に未婚男性の比率が高いという。
さらに30歳から34歳の未婚者の男女人口比が1.6を上回る県は8県もある。
その要因について若新氏は「先ほどの“シュッレッダーおじさん”はもちろん問題だが、実はおじさんを止めず『シュレッダーぐらいかければいいじゃないか。私たちもそんなの当然やってきたし、あんた若いんだから。私たちはお尻を触られても笑ってたわよ、それに比べればマシよね』などと話す地方のおばさんたちにも原因はある。『私たちが全て受け入れて男性中心の社会を育ててきたから今の街がある』━━そんな女性もいるのだ」と説明した。
どこに住むかは自由であり、SNSなどで都会の暮らしがより身近になった今、若い女性に地方を選んでもらう方法はあるのか?
若新氏は「県外から新たに女性を呼び込むのは難易度が高い。やはり地元で育って地元に思い入れがある女性に一人でも多く残ってもらう方法を考えるべきだ。そのためには中高年などへの啓蒙が欠かせない。若い女性にいい思い出をたくさん作ってもらい、その上で女性が『この街では自分はちゃんと評価してもらえる』と感じてもらうことが重要だ」と述べた。
(『ABEMAヒルズ』より)
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