台湾の新たな代表に選ばれたのは、与党·民進党の頼清徳氏。アメリカなど民主国との協力関係を深めた蔡英文政権で副総統を務め、かつて台湾独立派を公言したこともある人物だ。3期連続の勝利を果たした民進党だが、同時に行われた立法委員選挙では過半数割れに。今後、頼氏は難しい政権運営を迫られそうだ。
今回の結果を受け、中国の王毅外相は「独立の道に先はない」と強くけん制した。台湾統一のために武力行使も辞さない姿勢を示している中国。こうした脅威に台湾内では、民間団体が攻撃を受けた際の対応をレクチャーする場を設けているほか、2024年から兵役義務が4カ月から1年に延長し、有事に備える動きが起こっている。“台湾有事は日本有事”とも言われる中、日本がすべきことは何なのか、『ABEMA Prime』で考えた。
■台湾への進攻 「5月の新総統就任の前後を狙う危険性はある」
中国のけん制は、台湾内では「思ったよりも温和な、マイルドな表現ではないかという報道」だという。また、「目立ってアメリカ側の反中意識、マイナス感情をあまり高めたくないということで、中国もしばらくはおとなしくするんじゃないかという見方が有力だ」と説明した。
一方、自民党の和田政宗参議院議員は「私が考えるのは、5月の新総統就任の前後。アメリカも今年大統領選挙で動きづらい状況があり、最悪の事態も想定すれば、そこを狙う可能性はあるのではないか」と懸念を示す。
さらに、「習近平国家主席の今後も考えるなら、3期目の任期が2028年の3月まで。その前年に行われる共産党大会で4期目継続かどうかが決まるが、習主席は“台湾を3期目で統一する”と周りに示している。4期目にやろうとはならないと私は見ていて、2027年11月までに進攻するリスクは8~9割あると思っている」との見方を示した。
高口氏は、習主席の4期目継続が既定路線だろうとし、「少なくとも2032年までには台湾をどうにかしたいと、それまでに何かしらアクションがあっても不思議ではないというのは間違いないと思う。ただ、中国もすべて統率がとれているわけではなく、何らかの問題で暴発が起きたり、台湾側も一気に独立に舵を切るようなアクシデントが起こると、中国が軍事的なアクションを起こさざるを得ない論理にはしる可能性もある。“軍事的な問題は起きない”という判断はするべきではない」と述べた。
■アメリカとの関係に影響は?日本版「台湾関係法」は作るべき?
総統選と同時に行われた立法委員選挙では、どの党も過半数の57議席に届かなかった。高口氏は「台湾の総統は大統領と同じ存在だが、アメリカと比べるとその権力は弱く、議会の言うことを聞かないといけない。今回、過半数をとれなかったことで政権運営は苦しくなると思う。総統就任が決まった後の記者会見の場にいたが、頼氏を含めて民進党幹部はあまり喜んでいる感じはなかった」と指摘。
ねじれ議会のような状態で、アメリカとの向き合いに影響は出ないのか。「総統選に出た全ての候補はアメリカと連絡をとっていたので、大きな破綻はないと思う。どちらかというと、アメリカ大統領選の行方のほうがよっぽど大きな問題。トランプ氏が大統領に戻ってきたら?というのが一番大きな変数で、そこをみんな心配している」と話した。
和田議員はアメリカの「台湾関係法」を参考にした日本版の法律を作り、台湾との連携を強化すべきだと考えている。「“台湾有事は日本有事“とされるのは、“日本の尖閣諸島は台湾の一部。だから俺たちのものだ”と中国共産党政権は言っているから。その論理からすると、台湾侵略と尖閣侵略は同時に行われ、始まった時点で我々は戦争に巻き込まれてしまう。そこに楔を打ち込むために、全力で外交的努力や防衛協力など強固な関係を、日本·台湾·アメリカで見せる。戦争はボタンの掛け違いで起こるもの。中国は電撃的に台湾を侵略すれば尖閣も取れると思っているわけだが、日本·米国·台湾は絶対にそれをさせないという強い意思がある。そこを埋める努力は平和的、外交的な努力でもできる」と訴えた。
一方で、高口氏は「台湾有事を未然に抑えるためには、日本がある程度コミットする姿勢を示さないといけない。ただ、やりすぎてしまうと、中国の反発を招いて逆にリスクを高めてしまう。日本は基本的に兵器の輸出をしていないので、防衛力を直接供与するような形での日本版台湾関係法は踏み込みすぎだと思う。ただ、“台湾有事を起こさせない。何かあれば日本もコミットする“ことは常に発信しておく必要がある」とした。(『ABEMA Prime』より)
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