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 「私たちは勝つんだ。選択の余地はない。勝たなければこの国は終わりだ」(トランプ氏)

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 秋のアメリカ大統領選へ向けた共和党の指名候補をかけた戦い。23日、東部・ニューハンプシャー州で行われた予備選挙で初戦のアイオワ州に続いてトランプ前大統領が勝利した。

 一騎打ちとなった2戦目において元国連大使 ニッキー・ヘイリー氏は「バイデン大統領に勝てる共和党候補」としてアピールを続け、巨額の広告費を投入して巻き返しを図っていた。ニューハンプシャー州は無党派層が最も多い州として知られ、その取り込みが勝敗の鍵を握ると言われていたがトランプ氏は、強固な岩盤支持層だけにとどまらない強さを見せつけた。ヘイリー氏は選挙戦から撤退しないと表明しており、2月24日に行われる地元・サウスカロライナ州での予備選が正念場となる。

 現代アメリカ政治外交が専門の前嶋和弘教授は「トランプ氏の横綱相撲だった。予備選は始まったばかりで、この2つの州では、獲得を目指す代議員全体の5%に過ぎない。それでもこの2つの州で勝つと全米のメディアが注目し、より勢いがつく。これまでの世論調査を見てもトランプ氏が共和党の候補になる可能性は高いとみられる。今回はネームバリューのある前大統領ということで、より勢いがついている」と序盤戦を評価した。

 一方、対抗馬のヘイリー氏については、「選挙戦は人を大きくする。仮に今回勝てなくても2028年の次の大統領選挙における共和党の最有力候補の一人となった。ヘイリー氏はサウスカロライナ州という南部出身であり、インド系でもある。アメリカではヒスパニックの人は増えているが、伸び率はインド系を含むアジア系が高い。これからのアメリカを引っ張っていく象徴になれる人だ。加えて、女性のリーダーが民主党ではなく、共和党から出るということも興味深い。なぜならアメリカでは女性は民主党に投票する割合が、共和党に投票する割合よりも3〜5ポイント高いというジェンダーギャップがある。これまでは民主党側は『女性活躍推進』をずっと訴えてきたリベラルのイメージがあったからだが、それがひっくり返って新しい時代が生まれてくるかもしれない」と分析した。

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 強さを見せつけるトランプ氏は、なぜここまで人気があるのか?

 前嶋教授は「今のアメリカのキーワードは『分断と拮抗』だ。20年ほど前の世論は真ん中にあったが、そこからどんどん右と左に分かれていった。そもそも『2020年の選挙は盗まれた』と信じ、バイデン氏が大統領であることを認めていない人が共和党支持者の6、7割を占めている。彼らは『民主党は4つの刑事訴追を行うなどして我々のリーダー・トランプを貶めているとんでもない奴らだ』と思っているところがある。パラレルワールドのように、彼らの中ではトランプ氏がずっと大統領のままなのだ」と指摘した。

 この分断と拮抗について、ビジネス映像メディア「PIVOT」のチーフ・グローバルエディターである竹下隆一郎氏は「本当に今のアメリカにはトランプ大統領とバイデン大統領という2人の大統領が存在しているかのように見える。2016年、トランプ氏の台頭を予言できなかったことについて反省したメディアは、それ以降、各地で様々な意見を聞こうとしたが、結局うまくいかず、分断が続いてしまった。例えば『ニューヨーク・タイムズ』には相変わらず『ニューヨーク・タイムズ』の世界があり、それ以外のメディアにはその世界がある。そしてどちらも『相手が間違っている』と主張する状況が続いている。世界的にも、イスラエルとハマスの問題のように様々な対立が起きている。昔のように東西、とか共産主義・資本主義などの対立軸ではなく、軸がありすぎて混乱の時代に陥っている」と分析した。

 11月の大統領選に向けてアメリカ国内の熱量はどう高まっているのか? 前嶋教授は「予備選がしっかり始まっている共和党側は盛り上がっているが、民主党側はバイデン大統領の対抗馬が出てこないため、まだの状況。今後トランプ氏が共和党の候補としてリアルになっていくにつれて、民主党側にも火がついてくる。アメリカでは最初から支持が分かれている中で、大統領選は実質6つか7つの激戦州で決まる。その激戦州での調査では現状、どこもトランプ氏がリードしているが、それは、アウトサイダーであり、予備選も共和党は既に始まっているからこその熱量だろう。あと数カ月で民主党側も熱量が高まってくる。その結果、おそらく両者の支持は五分五分となり、夏以降、大接戦となっていくことが想定される」と述べた。

 トランプ氏とバイデン氏が再び決選となった時、その結果は世界にどのような影響を与えるのか?

 前嶋教授は「トランプ氏が大統領になった場合、例えば自動車産業においては、電気自動車ではなく化石燃料に戻るだろう。また、気候変動対策もやめていく形となるため、アメリカの自動車産業は迷っていて、電気自動車へのシフトが比較的遅いのはそのためだ。日本企業も状況を注視している。パリ協定からは離脱し、同盟国との関係も、『アメリカのメリットが一番』、『アメリカを貿易赤字にさせる国はいけない』として多国間ではなく、二国間の話になっていく。一方、バイデン政権が継続した場合は、基本的に現状の継続となるが、2022年の中間選挙から下院が共和党多数となり、『大統領は民主党、上院は民主党、下院は共和党』となり、ウクライナ支援なども全然動かなくなっている。“動かない政治”もまた問題だ」と双方の課題を指摘した。
(『ABEMAヒルズ』より)

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