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【映像】QRコードでホームドアが開閉
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 キャッシュレス決済やチケット発券など、様々な場所で活用されているQRコード。埋め込まれた情報を高速に読み取ることができる技術が、意外な用途で大活躍していた。

【映像】QRコードでホームドアが開閉

 自動車部品大手デンソーの開発から2024年で30年を迎え、おなじみとなったQRコード。その技術を活用し、世界初となる駅のホームドア開閉システムを生み出したのが東京都交通局の岡本誠司さんだ。

「電車が入ってきてピッタリ止まって動かないということが確認できたら、都営交通の場合はその段階でホームドアが開く。開いたのを見て車掌が車両の扉を開けるというやり方をしている。その後、開けたり閉めたりすると、それに追従してホームドアも開いたり閉まったりする」(東京都交通局・岡本誠司さん、以下同)

 車両に貼られたQRコードの動きをホームに設置されたカメラが読み取り、車両のドアが開いたらホームドアも開き、閉まればそれに合わせて閉まるというシンプルな仕組み。このシステム導入の背景にあったのが、浅草線ならではの複雑な事情だった。

「都営浅草線では相互直通、京浜急行や京成電鉄、いろんな会社の電車が走っている中で、今まで都営新宿線や大江戸線でやっていたようなホームドアの制御の仕方ができない。どうやったらできるのかをずっと検討していた」

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 通常は車両とホームに無線装置を設置し、その通信によって車両とホームドアの連動を行っている。そのため、ホームドアを導入するには使用する車両すべての改造が必要で、莫大な費用が伴う。

 複数の鉄道会社が乗り入れる浅草線では、それぞれの会社で設備投資が必要になるため、足並みをそろえてホームドアを設置するのは難しい状況だったという。

 そこで閃いたのが、QRコードの活用だった。東京都交通局はデンソーウェーブと協力し、独自のシステムを開発した。

「ホームの車両乗り口の上にカメラが付いているが、背の高い人が車両の近くに行くとカメラとQRコードの間に頭が出てくるので読めない。そこを解決するために、結構高い位置から斜めに撮っている。カメラを斜めから見ると画が歪むが、歪んだ状態でも読めないといけない。また我々だけではなく、外を走っている京浜急行など他の鉄道でも使えるようにするとなると、直射日光が当たる。直射日光が当たった部分と当たっていない部分でコントラストがついてしまい全体が読めなくなる。これを何とかしなきゃいけない」

 ドアの開閉を確実に読み取るため、このシステム専用のQRコードを新たに開発。ステッカーを貼るだけでホームドアとの連動が可能となり、20億円以上かかるとされていた車両の改修費を270万円ほどに抑えることができたという。

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 このシステムの実現によって2024年2月、都営地下鉄では全ての駅でホームドアの整備が完了する。今では他の鉄道会社にも採用され、乗客の安全を守るホームドアの整備が進んでいる。

「視覚障害者の人はホームにいると、『どっちに歩いているのかわからなくなる』という。ホームから階段に行くつもりで歩いていたら、転落してしまう経験者も多いといい、『なんとかしてくれ』という本当に悲痛なお願いがたくさんあった。このタイミングで浅草線にホームドアをつけることができて、ホームからの転落事故という死傷事故につながる重大な事故を防ぐことに関与できて本当に良かった」

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 QRコードは、開発元のデンソーが仕様をオープンにし、特許を誰でも自由に使えるようにしたことで世界中に普及した。PIVOT チーフ・グローバルエディターの竹下隆一郎氏は、海外でも評価の高い日本の技術について、さらなるプロモーションの必要性を指摘する。

「海外の人とミーティングするときにQRコードの話をすると、『日本発なんだ!』と言ってくれるので、もっとアピールしたいまた、『30年』というのが象徴的だ。日本は給料が全然上がらず、『失われた30年』『停滞の30年』と言われている期間。最近アメリカの経営学者と話していると、『もっと違う見方をするべきだ』と言われた。もちろんその30年は停滞していたが、その間に不良債権処理や構造改革が進んでいて、日本の技術は上手く転換されて、様々な商品や世界中の仕組みの中に、もう組み込まれている。『いい線を行っていたんだ』という学者がいる。QRコードはまさに象徴的だなと思う」

「この30年のグローバル競争は、GoogleやAppleなどは消費者が手にする、最後の商品を作っていたから、すごそうに見えた。あるいはいろいろなアプリが出てきたり、もちろんそれもすごいがその中身もすごかった。アメリカは例えば『Intel、入ってる』のように、この辺りのアピールが上手い。北欧だったら教育、アメリカならシリコンバレーやイノベーションなどがある中で、日本は、寿司、天ぷら、富士山以外にも、地味だけど魅力的な技術、その『物語』を魅力の一つとして発信するべきだと思う」

(『ABEMAヒルズ』より)

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