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【映像】輪島市消防団員 津波警報の中で消化活動「今考えると怖い」
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 能登半島を襲った、最大震度7の地震。珠洲市·輪島市などでは火災が発生。多くの家屋が倒壊し、道路も寸断、さらに大津波警報が発令される困難な状況で、消防と共に消火活動にあたったのが地元の消防団だ。

【映像】輪島市消防団員 津波警報の中で消火活動「今考えると怖い」

 輪島市消防団・輪島分団の多田見栄一郎副分団長は、津波を避けるため高台に避難していたが、「山から見たら火が出ていたので、消防車両まで走って行った」と、火事を見てすぐに行動に移した。しかし、津波警報が出ている最中。難しい判断と大きな葛藤があったという。

 中には消防服に着替えている時に余震で家が倒壊し、犠牲になってしまった団員も。避難が呼びかけられている中での救助活動はどうあるべきなのか。命を守るためのルールを徹底するために必要なこととは。危険な状況下での活動で、安全はどう守ればいいのか。東日本大震災を経験した岩手県大船渡市の消防団と共に『ABEMA Prime』で考えた。

■消防団員「使命感のもと活動している」

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 消防団とは、各市町村に設置される消防署と同様の機能を持つ組織。団員は日頃別の仕事を持つ地域の住民たちで、非常勤特別職の地方公務員という扱いで全国に約76万人。報酬は年額平均3万円でボランティアに近い活動をしている。一定の訓練を受けつつ、火災や災害の時は自宅や職場から駆け付け、消火や救助活動·避難誘導などにあたる。

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 大船渡市消防団・第4分団長の滝田寛明氏は「私たちは使命感のもと活動している。第一に自分の身の安全を確保した上で、消防活動をするのが大事」 第11分団長の窪田将浩氏は「やはり地域の人たちは、他人ではなく家族。一緒の考えを持っているので、無意識に無理をしてしまうのではないか」と話す。

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 東日本大震災後の2012年、総務省は津波災害が予想される全国664市町村に対して、消防団活動の安全管理マニュアルを策定するよう要請。津波災害時に、退避を優先する必要がある場合には消防団員も避難のリーダーとして住民と一緒に率先避難する。

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 大船渡市消防団では、退避優先の「15分ルール」を策定。警報発令から退避完了までの活動可能時間を決めている。窪田氏は「防災訓練ではこのルールに基づいて行動をしていて、団員には周知されている」、滝田氏は「私も同じだ。日頃の訓練がいざという現場に活きるので、年に1回ないし2回、防災訓練を実施している」と徹底している。

■仕事中に地震、水門閉鎖へ「非常におそろしい思いだった」

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 東日本大震災における、活動中の消防団員の死者・行方不明者は254人。多くが避難誘導や救助、水門の閉鎖など住民を守る活動に従事している中でのことだった。

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 被災時、窪田氏は家族の安否を確認する前に消防団活動で水門閉鎖へ向かった。「ちょうど営業で車に乗っていたが、私外の団員もすぐに駆けつけた。“まずは水門を閉めるんだ”というのが最優先で、他のことを考えない状態だった」「防潮堤の上で監視をしていたが、想定外の津波で、高台の方に車で避難した。非常におそろしい思いだった」。

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 滝田氏は家族の安否確認後、高台に向かう避難誘導を行った。「職場にいたが、大津波警報が発令されたので、“消防団活動をしなくてはいけない”と真っ先に自宅へ向かった」。2人は難を逃れたが、3人の仲間が犠牲になった。「地域を守るという使命感の下、活動して亡くなったと思う。この死を無駄にせず、今後も活動していきたい」。

■消防団の共助に頼りすぎ?消防本部の課題も

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 消防の体制は、公助(行政による活動)による「常備消防」、共助(居住者等が連携して行う活動)による「消防団」、自助(住民が自発的に行う活動)による「自主防災組織」で成り立っている。

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 関西大学社会安全学部の永田尚三氏は「消防団は江戸時代の町火消しが最初だと言われている。しかし、当時は行政の消防サービスなんてなかった時代。自助から始まり、命を守るためにはある程度の自己犠牲はやむを得ないという組織の成り立ちがある。それを現在も引きずっている側面がある」との見方を示す。

 また、東日本大震災を例に2つの問題点を指摘。「水門管理という非常に危険な業務を、特定の地域では県や国が消防団の分団に事務委託することが慣習化されていた。問題は、消防団が行政にとってタダで使える都合のいい組織になっていること。もう1つは、消防団を組合でやっている地域では、管理が個々の構成市町村で行われる。そこで事務をするのは一般の行政職員の方々で、数年で交代されていく。安全管理の専門性が保たれていない危険性が認識されず、放置されてきた」と説明した。

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 さらに、改善点や課題についても指摘した。「有事の災害や火災の対応時は、消防団と消防本部は対等の立場に一応なっている。ただ、実際は消防隊員の指揮命令下に入って活動するケースが多い。一番望ましいのは、消防の判断に従うかたちで、逃げるタイミングを委ねることだ」「輪島朝市の地域が難しかったのは、奥能登広域圏事務組合消防本部は非常に小規模なのに、管轄区域は非常に広いこと。さらに財政上の問題もある中で、現場に投入できる消防力が限定的になることで、団員が担わなければいけなくなる」。(『ABEMA Prime』より)

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