今月リリースされるアプリ「Focus on(フォーカスオン)」。自分が気づいていない疲れを可視化して、共有する機能が備わってるという。
使い方は「朝晩1回ずつ今の疲れを5段階で選択、さらに困りごとやその時にとった行動を日記のように記入する」というシンプルなもの。
その入力した“疲れ度”が一定値を超えた時にアプリ側から「そろそろ休んで!」とアラートが届き、さらに自分の気持ちとピンチを信頼・安心できる人に共有してくれるのだ。
一般社団法人 Focus on代表にして開発者、発達障害を抱えながら立命館大学に通う現役大学生でもある森本陽加里さんはアプリのメリットを「頑張りすぎて気づいたら限界を突破してしまう人が多い中『アプリのアラートのおかげで休みやすくなった』という声が届いている。また、『周囲への伝えることができて良かった』という声もあった。例えば、発達障害を抱えたある高校生は周囲の目もあって日々の困り事などを逐一担任の先生に伝えることは難しかったがアプリを使うことで『知っておいた方がベターなこと』を共有できるようになった」と説明した。
そんな森本さん自身も、発達障害で人とのかかわりに悩み、社会生活に順応しようとしていた一人だ。チャイムの音が矢が刺さるように痛く感じる、友だちのボディタッチが苦手など、学校になじめず小学生の頃は不登校と復学を繰り返した。
通常学級でみんなと同じように過ごす中、周囲の子どもたちの頑張りどころと疲れ具合が自身の体感とずれていると感じた森本さん。しかし、そのことを周囲には言えなかった。その経験がこのアプリのもとになっている。
森本さんは「Zoomなどで話すと、『発達障害に見えない』などと言われるが、実は『そう見せているだけ』で無理もしている。『本当に困ってるところを理解してもらえない』という経験は非常に多かった。自身の状態を把握しつつ、感覚を周囲に理解してもらえるツールを作りたいと考えるようになった」と振り返った。
森本さんが高校生の時に考えたアプリの原案は高校生ビジネスプラン・グランプリの全国大会まで進み審査員特別賞を受賞。その大会でプレゼンをして、発達障害の当事者たちの声が聞けたことで、アプリの開発に本腰を入れる決心ができたという。
「Focus on」は数あるセルフ系アプリや日記アプリの中でも、人に共有するというところに違いがある。そこには、森本さんが自分の経験から最も大事にしている点だという。
「私自身、疲れていても“休む気力”がないこともあった。また実際のところ、誰かのサポートがなければ困り事が解決しないこともあるため、信頼できる人に共有し、協力を得られる形を目指した」
さらに森本さんは開発を進める中で「Focus on」を使ってほしい人についても変化があったという。
「高校生の時は自分にベクトルが向いていたため、発達障害の方向けを想定していたが、大学に入り、いろんな検証をする中で発達障害の診断はないが同じような困り事を抱えている方、鬱病の傾向がある人、気分のアップダウンが激しい人などがいることに気づいたため、今は発達障害の有無にかかわらずアプローチしている」
自分の疲れを可視化・共有できるアプリ「Focus on」について世界ゆるスポーツ協会代表 澤田智洋氏は「自身の得意なこと・やりたいことではなく、自身の特性も踏まえた上で“ある種の弱さ”から発想している点が素晴らしい。また、『疲れた』という言葉にあるグラデーションを誤解なく伝えられる点も評価したい」と述べた。
さらに澤田氏は「Focus onはまるで縁側のような存在だ」との見方を示す。
「縁側は同じ風景を共有することができる。例えば悩んでるAさんに対しBさんが特に何も言えなくても、同じ縁側にいるだけで無言のままでも傷が癒えていく。このアプリも自分の疲れが的確に共有されることで、縁側のようにある種主観的な情報が移行されるため、同様の効果もあるのではないか」
最後に澤田氏は「Focus onは現代人に足りない自己観察のきっかけにもなる。毎日セルフチェックすることで、ある意味そこに句読点を打ちながら区切りをデジタルで打っていく。その上で、大事になる前にSOSを出せるという利点は大きい」と述べた。
(『ABEMAヒルズ』より)
■Pick Up
・「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
・ネットニュース界で話題「ABEMA NEWSチャンネル」番組制作の裏側