「味」の感じ方は人それぞれだが、もし“他人の味覚”を共有することができたら…。そんな技術が実用化されようとしている。
【映像】“子どもが感じるトマトスープの味”を再現した無臭の液体
「新しいコミュニケーションの形として、言葉や映像、文字だけでは伝えきれない動きや触覚や人の感覚を、相手が理解できる形に変換して伝える技術となっている。今回はその感覚のうち、『味覚の共有』を実現させた」(NTTドコモ 慶応義塾大学特任教授/博士 石川博規氏、以下同)
NTTドコモと明治大学らが共同開発した「味覚を共有」できるシステム。遠く離れた場所にいても「他人が感じた味」を体験できるという世界初の技術だ。
「同じものを食しても人によって感覚が違うため、感じる味は変わる。だが例えば、子どもが感じている味覚を大人が擬似体験すれば、『美味しくない』と訴える理由を理解できるようになる。“相手の伝えたい感覚を自分事として感じ取れる”システムだ」
大人が「美味しい」と思っている食べ物でも子どもからすれば苦手…。食べ物自体の味よりも「食べた人が舌でどう感じているか」がわかるという。一体、どのような仕組みなのか?
「まず味覚を基本五味で分析する。そしてそれを実際、食品添加剤で調合して再生する」
人の感じる味を「甘味」「塩味」「酸味」「苦味」「旨味」の5つの味で調査・分析。また、味の感じ方には個人差があるため、様々なアンケートで「味覚の感度」を測定しデータ化する。それらを踏まえて、5つの味の液体を調合し味を再現するというもの。
この味覚共有システムは数年後、商用化を目指しているとのことで、近い将来アニメや映画で登場人物が感じた味覚を視聴者が体感することも可能になるという。さらに、味覚の次は「におい」を考えているそうだ。
「味というのは『しょっぱい』や『甘い』だけではなく、『見た目』や『食べた感覚』などで『におい』にも大きく左右されるので、そこと組み合わせることによって可能性が広がる」
メタバース空間でもリアル空間と同じように感じる世界を創りたい。2030年頃に実現を目指す超高速回線6Gでは、遠隔地にいる人ともリアルタイムに感覚を共有することが可能になる。そのプロジェクトの陣頭指揮をとる石川氏。目指す先はどこなのだろうか。
「昨年は『触覚』。一昨年は『動作』の共有をしている。この分野は、まだ世界でもあまり例がない。『相手に(感覚を)共有していくもの』というのは世界初となっている。今、これをドコモだけでしようとすることもあまり考えておらず、逆にオールジャパンとしていろんなパートナーと組んで、世界に打って出ようと考えている。世界中にこのサービスが普及して、皆さんが『Well-being(幸福)』というような幸せになっていければいいと考えている」
この味覚を共有できる技術について、共同で研究を行っているH2L株式会社の創業者で、琉球大学工学部の玉城絵美教授は「ここまで早く産業に繋げることができると思わなかった。6Gを通じて、ただの味の再現ではなく“他の人が感じている味”を知るというのは、なかなか難しかったが、今回実現して、新しい技術をそのまま産業に持っていけるのには感激した」と話した。
(『ABEMAヒルズ』より)
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