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【映像】“日本ならでは”の支援とは?
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 ロシアによるウクライナ侵攻開始から2年。今なお激しい戦闘が続き、犠牲者が増え続ける中、国際世論では“支援疲れ”から停戦を求める声も上がっている。

【映像】“日本ならでは”の支援とは?

 「ウクライナが成功を収めるためには支援と団結が重要だ」「ロシアはウクライナ支援の遅れを利用している」

 ゼレンスキー大統領は危機感を示し、ロシアへの制裁強化やウクライナへの支援の継続を呼びかける。

 徹底抗戦の構えを強調するウクライナ軍だが、アメリカのニューヨーク・タイムズ紙(2月18日)は「ウクライナ軍は開戦以来、最も不安定な立場にある」と報じるなど、戦況は不利とされている。

 最大の支援国であるアメリカでは、ウクライナ支援の予算がすでに枯渇。2月13日、追加支援の予算を盛り込んだ法案は上院で可決されたが下院で可決されるかは極めて不透明な情勢だ。

 そんな中、大統領選を3月に控えるロシアでプーチン政権批判の急先鋒として知られるナワリヌイ氏が2月16日に収監先の刑務所で死亡。またスペインではロシアから亡命した元パイロットが殺害されたことが明らかになった。

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 ナワリヌイ氏が死亡したことを受け、アメリカのバイデン大統領はロシアへの追加制裁について「大規模な制裁を発表する」と述べた。

 一方、日本では2月19日、ウクライナの復興に向けて官民連携で支援策を議論する「日・ウクライナ経済復興推進会議」が開かれた。

 会議には両国の政府、企業関係者らおよそ300人が参加。地雷対策・がれきの処理・農業の生産性向上など、7つの分野での支援が決まった。日本は長期的な支援でウクライナの復興を後押しする姿勢を示している。

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■ヨーロッパだけでアメリカの代わりはできない

 慶応義塾大学 総合政策学部 鶴岡路人准教授は、ナワリヌイ氏の死亡について、「『政府を批判するものは許さない』という国内向けの強いメッセージであり警告だと思われる。プーチン政権は国際社会、特に米欧からの反発は織り込み済みで、国内へのメッセージを優先した。ロシアからウクライナに亡命した元パイロットがスペインで殺害されたが、ナワリヌイ氏の死亡とタイミングが重なったことは、どこまでロシア政府中枢の意図だったかは別として、『裏切ったり批判するとこうなるぞ』という強い警告を国内に発したと思われる」と分析した。

 ロシア国民はプーチン政権に対してどう考えているのか?

 鶴岡教授は「一般的な国民にとって大事なのは生活だ。政府批判によって仕事を失ったり、収監されてしまっては家族が困るため、ほとんどの人は疑問に思っても声を上げられない状況にある。そういった状況を作ることを、まさに政府は狙っていて、今のところ成功してしまっている。ウクライナへの全面侵攻が始まってから一時は反対運動が盛り上がったが、反対運動のコストが高すぎた。法律が改正されて厳罰化が進んだ結果、声をあげ続けられる人が少なくなっているのが現実」と指摘した。

 鶴岡教授は現在の戦況について「よく“膠着状態”などと言われるが、実際には、前線は非常に脆弱であり、ウクライナ側で武器弾薬が足りなくなってきており、場所によってはかなりロシアが押し気味に進めている。またこれまではロシアによるミサイル・ドローン攻撃を迎撃できていたが、迎撃ミサイル・対空砲の在庫がどこまで続くのかは大きな懸念事項だ。もしこの防空システムが機能しなくなると、首都、あるいは軍の施設・補給拠点の被害も大きくなる。そうなると、前線を維持することも難しくなってしまう瀬戸際にある」との見解を示した。

 さらに鶴岡教授はウクライナ支援への世界のスタンスについて「支援疲れがあるのは当たり前だ。武器の供与、あるいは財政支援にはコストがかかり、ずっと続けたいと思っている国はない。とはいえ、『疲れたらやめてしまうんですか?』ということになる。アメリカは内政上の問題から支援が止まっている状況、対してEUでは大規模な支援パッケージへの合意もあり、イギリスやドイツでは今年度の支援の増額も決まっている。支援が止まったり少なくなってしまうという方向と、ここでしっかり支えなければ、という2つの考え方がせめぎあいになっているのが現状だ。とはいえ、武器が足りないという状況は、アメリカの支援が止まってしまうと、ヨーロッパだけですべてを肩代わりはできない」と懸念を示した。

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■“日本ならでは”の支援

 2月19日、日・ウクライナの経済復興推進会議にて日本側が示した支援策について鶴岡教授は「日本は武器の供与ができない中で、“日本ならでは”というところで様々な検討・努力をしてきた。 特に地雷対策は非常に重要であり、ロシアがウクライナの国中に地雷を撒いており、農業をするにもまず地雷除去が必要だ。もう1つ強調したいのは、ウクライナはいわゆる途上国とは違うということだ。様々な産業が発展している国でもあり、IT・ICT分野などは、今回は官民一体の支援ということで、ここは民間企業にもしっかり出ていってもらいたい分野とみている」と考えを示した。

 さらにウクライナでは、戦禍で多くの学校が破壊されており、教育の問題も懸念されている。

 鶴岡教授は「前線に近い、特に東部ではシェルターで授業をしている状況にある。これが続くと、教育に遅れが生じ、5年後、10年後に学校教育を充分に受けられなかった世代が大人になっていく。これはウクライナにとって中長期的に深刻な問題になっていく可能性が高い」と指摘した。

 ロシアによる侵攻から2年。“戦いの出口”について鶴岡教授は「停戦という議論も多いが、まず、交渉につく共通の出発点すらない状況。ロシアは『今回の戦争目的は変わらない』と言っており、2022年の秋にロシアが併合したと主張しているウクライナ東部、南部の4州について『交渉の対象にならない』としている。こうなるとウクライナとしても交渉自体を始められない。交渉の出発点に立つためにも、ウクライナとしては少しでも戦況を有利にしたいが、なかなか武器が届かないという状況。ロシアもウクライナも今の段階ではまだ、交渉する意思はほとんど見えない」と見解を示した。
(『ABEMAヒルズ』より)

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