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 本来、大人が担うと想定される家事や介護などを日常的に行っている若者や子どもを指す「ヤングケアラー」。先月、子ども・子育て支援法などの改正案が閣議決定され、国や自治体の支援の対象とすると明記された。こども家庭庁も2024年度からキャリア相談支援などのため予算を追加し、支援充実に乗り出す。その中で、ヤングケアラーの息抜きを目的として、「キャンプ」への予算追加が物議を醸している。

【映像】ヤングケアラーが行う世話・家事の数々

 さらに、ヤングケアラーは「児童労働」「なくすべき」との声があがる中、NPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星氏の「ケアをしている可哀想な存在という押し付けが声をあげづらくさせてきた。ヤングケアラーをなくそう思想は危険だ」との発信が議論を呼んでいる。

 政府の支援策は妥当なのか。ヤングケアラーにどうリーチしていくべきか。大空氏、国会議員、元当事者を交え『ABEMA Prime』で議論した。

■元当事者「なぜ学校外の時間が取れる前提なのか」

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 小学生の頃にヤングケアラーとなり、自身が受けた児童虐待や警察での経験をXで投稿している村田氏は、こども家庭庁の支援策について「そもそも行く時間がとれない」と疑問を呈する。

「家で介護や育児、いろいろ家事をやらなきゃいけないからヤングケアラーになっているのに、なぜ学校外の時間が取れる前提なのか。当時の自分だったら、睡眠時間はないし精神的にも疲れているから、“とにかく動きたくない”“寝ていたい”があったと思う。また、私みたいに親にヤングケアラーをやらされていた場合だと、行くのを絶対に許してくれない。その時に自治体が親の反対を押し切れるかというと、できないだろう。これに行けるのは軽度のヤングケアラーで、学業に支障が出たり部活が全くできない、友達とも交流できない人は難しい」

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 ケアラー支援法の成立を目指し活動している立憲民主党の牧山ひろえ参議院議員は「キャンプと聞いた時に、えっ?と思った人は多いと思う」とした上で、「いろいろな前提条件をクリアしなければいけない。学ぶ場を失わせないよう休みの日に限定したり、その人の代わりに介護や家事をやる人を主催側が責任を持って探す。そして、リフレッシュできたり同じような境遇の友達と知り合ったり、何らかその人のためになる必要もある。ただキャンプは1つのとっかかりで、言葉がひとり歩きしてしまうのはよくない。何が良いのかは一人ひとり全部違うので、議論していろいろなメニューを用意すべきだ」との考えを述べる。

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 元経産省キャリア官僚で制度アナリストの宇佐美典也氏は「反発を浴びているのは、子育て世帯の生活感になじんだ政策ではなく、キャンプというものが突然出てきたから。学校に行けば“あの子の家は事情がありそうだ”というのは大体わかるが、今の時代は気を遣うところが多すぎてそこに踏み込めない。誰々がリーチして、事情を把握し、このメニューで行きましょう、という流れならわかる。メニューだけ先に用意しても、その上で動く人が本当にいるのかが見えない」と指摘した。

■一人ひとり異なる状況、必要な支援は

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 現状、ヤングケアラーの法律上の定義はなく、今国会で議論されている。「過程の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」というのがこども家庭庁案だ。

 大空氏は「見えている景色が、当事者と元当事者、支援者、国会議員それぞれみんな違う。そうなると、“ヤングケアラー”という言葉1つで属性を作るのは難しい。また、村田さんのような方がいれば、ケアが当たり前だと思っている人もいるなど幅広いレイヤーがある中で、定義しないことによって幅広く救うことができるという考え方も成り立つ」とコメント。

 また、支援については、「学校で寝ている子の家庭に問題があるのか、全件わからないのが現実だ。本来は全数調査をやらないといけない。地域包括支援センターの仕組みの中で、例えばケアマネージャーがすでに家庭に入っていたり、民生委員を活用する方針に一応なっている。とはいえ、民生委員も60歳以上の人が9割で、本当に家庭に入って子どもたちのケアができるのか。日本は福祉がすばらしい一方でそこはまだ不十分であり、メニューが非常にふわふわしているという、2つの課題がある」とした。

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 一方、牧山議員は「今改善すべきは窓口の問題。虐待は悪いとわかっているが、ヤングケアラーの定義は正式に決まっていない。そこは根本的に問題が違っていて、同じ所に行ってしまうと偏見を持つ人もいる。窓口を分けるのは大事だと思う」との考えを示す。

 村田氏は「問題は分けるべきだが、ポイントが違うと思う。私も相談に行ったが、相談員の方は親の味方ばかりで子どものほうを見てくれない。家庭問題と子どもの人権が一緒くたにされて、家庭のほうを向かなければいけないのではないか。窓口というよりも、119番みたいに通報すれば専門家が来て対処してくれるような、“ここに連絡すれば何とかなる”というものを子どもに1カ所作ること。これが大きな安心につながるし、子どもも言いやすくなると思う。もしくは、親の許可なく家の外に行ける権利があれば、私自身は助かったと思う」と訴えた。

■大空氏「ヤングケアラーを“かわいそうだ”“児童労働だ”と上から言うのは綺麗事」

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 大空氏は「『児童労働』『人権侵害』と叫ぶほど親が問題を隠し、SOSを上げられない」と警鐘を鳴らす。

「子どもがキャンプの集まりに行くには、おそらく保護者の許可がいる。その時に、“ヤングケアラーは児童労働だ”と言い続けていると、“児童労働に加担をしている親”という像が出来上がってしまう。また、SOSを出してしまったら児相に一時保護されると思っている親御さんもすでにいっぱいて、私たちの窓口には相談が結構くる。ヤングケアラーを“かわいそうだ”“児童労働だ”と上から言うのは綺麗事で、簡単にSNSで展開してはいけないと思う。それはつなぐ障壁にもなっている」

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 村田氏は「ヤングケアラーをなくす努力はするすべきだが、絶対にゼロにはならないし、ゼロだと思ってはいけない」と述べた。

「それは単純に問題を見えなくしているだけだ。大人になって自己責任で片付けられて、何の支援も受けられずそのまま苦しむことも多く、そういう人を1人でも少なくしたい。私は“被害者面するな”“甘えるな”と言われたことが多かった。大半の場合、子ども自身に非があるわけではなく、交通事故に遭ったようなものだと思っている。それで骨を折ったからといって恥ずかしいと隠す人はいないだろう。ヤングケアラーはそういう認識になってほしい」

(『ABEMAPrime』より)

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