晩婚化に伴い、高齢で子どもを授かる人も増加している。そんな中「父親が高齢だと生まれてくる子どもの発達障害のリスクとなる」というマウスの実験による研究結果が発表された。ニュース番組『ABEMAヒルズ』は、東北大学の研究グループに取材を行った。
【映像】研究グループが提案する“精子のアンチエイジング”とは?
東北大学の研究グループは父親の加齢が子どもの「神経発達障害」発症のリスクになることがマウスによる実験で確かめられたと発表した。加齢による胎児への影響といえば、主に“母親の卵子の質低下”などが指摘されてきたが、研究では“父親の精子の加齢”に着目した。
「父親の年齢と子どもの自閉症のリスクを集団として調べた時に、母親よりも父親の年齢の影響が子どもに大きく伝わることがすでに分かっていたので、私たちはマウスでそういったモデルが作れるかを数年来、研究してきた」(東北大学・大隅典子教授、以下同)
疫学研究では、すでに父親の加齢による「自閉スペクトラム障害」などの神経発達障害の発症リスクは報告されていて、大隅教授らはマウスの実験で検証を試みていた。
今回研究グループは、新たに遺伝子の働きを調節する「マイクロRNA」の変化に着目した。若いマウス、高齢のマウス、それぞれ精子でどのような働きをする種類のマイクロRNAの量が、加齢の影響でどう変化するかを調査・分析を行ったとのこと。
「マイクロRNAは最終的に『細胞の死』と『神経系』に影響を及ぼす」
加齢により変化した精子の「マイクロRNA」には、受精卵へ移行し、自閉症スペクトラム障害に関わる遺伝子の働きに変化をもたらすと報告されているものが含まれているという。つまり、子どもの成長に影響を与え、神経発達障害のリスクとなる可能性があると、大隅教授は話す。
「(加齢精子に)あらかじめ神経系の遺伝子の働きをブロックする(可能性のある)ものが多数見つかったことが驚きだった。間接的ではあるが、例えば神経発達障害のような脳の病気に父親の加齢が関わりそうだという状況証拠をつかむことはできた」
加齢した父親の精子が子どもの神経発達障害の発症リスクを上げてしまうのであれば、若い時の精子を採取しておいて、「体外受精」するという手段も考えられるが、大隅教授はそのリスクについても語った。
「実は体外受精の場合、精子や卵子が体の外に取り出され、酸素濃度等も違うシャーレの中で受精が行なわれる。そのため、自然受精で進むケースと比べて子どもが育つプログラムにどうしても多少の違いが生じる」
若い時の精子を凍結保存して将来、体外受精する場合においても、別途、体外受精にともなうリスクについても考えておく必要性があるのだ。
世界的に子どもの神経発達障害が増加している中、大隅教授はこの研究を進めることで「発症メカニズムの解明や予防につなげたい」と話す。
「私たちは『父が加齢するとよろしくない』と言うだけではなく、『アンチエイジングで治す』『予防するためにはどうしたらいいか』ということにも着手している。私たちが着目している栄養素の一つは青い葉っぱやブロッコリーなどにたくさん含まれている『葉酸』。もう1つは“ビタミンE”。後者はナッツなどに含まれている脂溶性のビタミンでありアンチエイジングの領域で注目されている。それを男性に飲んでもらった時に、『精子のアンチエイジングができるのか』というところが、今後の新しいポイントだと考えている」
(『ABEMAヒルズ』より)
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