賃上げ要求の満額回答が相次いだ今年の春闘。市場では「日銀がマイナス金利政策の解除に踏み切る」との見方が強まっている。
日銀がマイナス金利を解除した場合、私たちの生活はどう変わるのか? 経済アナリストの森永康平氏に聞いた。
━━マイナス金利が解除された場合、住宅ローン金利は上がるのか?
「仮にマイナス金利を解除したとしても、急激に住宅ローン金利が上がることはまずないだろう。だが、特にタワーマンションなど、都内で多い『夫婦でパツパツのペアローンを組んでいる世帯』はちょっと金利が上がるだけでも、かなり家計に影響が出る」
━━銀行の預金金利は上がるのか?
「銀行間での金利競争が起こり始めており、わずかではあるが上がるだろう。昔のように6%、7%ということはあり得ないが『ほとんどつかない』から『わずかながらつく』という世界に変わるだろう」
━━為替への影響は?
「仮にマイナス金利を解除されても金利の上げ幅は0.1%程度だが、一度引き締め方向に動くとなると投資家たちは『マイナス金利解除の次は利上げをするのでは?』などと先を読む。一方で、アメリカでは6月頃に利下げをするのではと多くの人が予想している。日銀が金利を上げてアメリカが下げるとなると金利差が縮み、為替が若干円高方向に動く可能性がある。仮に130円前後まで円高が進んだとしても少し前に戻るだけだが、企業は135円程度を想定しているため、輸出産業などに影響が出て、好調の日本の株式市場にとってはネガティブな要因になる可能性はある」
━━今後、日本人の給料は上がるのか?
「マイナス金利の解除に関係なく余裕がある大手は上げるだろう。だが中小零細は厳しい会社が多く、賃金格差が広がってしまう可能性もある」
━━デフレを脱却し、物の値段は上がるのだろうか?
「この意見は少数派だと思うが、個人的にはもう少し緩和状態を続けてもよかったと考えている。どうして急いでしまったのか。今は世界的に物の値段が落ち着き始めているため、デフレを脱却する好機だった。そんなチャンスの腰を折ってしまうリスクを高めたのではないか。今年の後半、国内の物価が若干下がる局面が出てきてもおかしくない」
「そもそも、日銀が金融緩和してるから物価が上がったわけではなく、ロシアによるウクライナ侵攻などが物価高騰の原因だ。日銀のマイナス金利解除と物価にはあまり因果関係がない」
━━マイナス金利解除後、また戻す可能性はあるのか?
「あり得ることだ。過去に二度、日銀は金融緩和をやめて引き締めへの転換を行なっているがどちらも失敗しており、すぐに戻している」
(『ABEMAヒルズ』より)
■Pick Up
・「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
・ネットニュース界で話題「ABEMA NEWSチャンネル」番組制作の裏側