はしかの感染が日本でも相次いで報告されている。親がワクチンに否定的だったために子どものころに接種せず、その後はしかに感染・入院したという女性に当時の症状について聞いた。
「高校2年生のときだった。私が感染する少し前にクラスメートがはしかにかかって休んでいたので、おそらくクラスメートから感染したのだと思う。ワクチンは打っていなかった」
今から約30年前、はしかに感染したと話す南菜さん。重症化や後遺症などもあるはしかだが、一体どのような症状だったのだろうか。
「40度を超える熱が出た。それと同時くらいに顔などにプチプチと発疹が出てきて、母も『これははしかだ』となった。本当に起き上がれず、入院して、ひたすら点滴を打っていた。後遺症はなかったと思うが、1カ月ぐらいは本当に疲れやすく、体力は戻らなかった」
幸い後遺症はなかったようだが、1カ月ほど倦怠感などの症状が出ていたという。
1972年10月生まれ以降の人に始まっていたはしかワクチンの定期接種。年代的にもワクチン接種の対象だったはずだが、南菜さんは幼少時のはしかのワクチン接種をしていなかった。その理由は母親の影響だったようだ。
「うちの母が今の言葉で言うと“自然派のママさん”で、ワクチンや薬をすごく嫌っていた。母親は家族の健康をすごく気にしていて、悪い人ではないのだが、健康を守りたいという気持ちが強すぎた。食べ物にもすごく気を使っていて、体に悪いものを摂取してはいけないという考えが過度に強かった」
そんな自然派の母親から、はしかが完治した際にこのような言葉があったという。
「はしかが治った後に、『免疫がついてよかったね』と言われた。でも、かかった本人としてはそう言えるほど楽ではなかった。本当に一瞬死ぬのではないかというくらいつらかった」
高熱や発疹の症状で、最悪の場合、死に至ることもあるはしか。その予防対策について、いとう王子神谷内科外科クリニックの伊藤博道院長に話を聞いた。
「マスクやうがい、手洗いはウイルスを除去するという意味では効果はないわけではないが、実際は空気感染による感染力のあまりの強さにより、手洗いでは不十分。マスクもウイルスの粒子が非常に小さいため、すり抜けてしまう。このはしかのウイルスを予防できるのは、ワクチンのみである」
感染力が強く、免疫力がないと一気に広がってしまうはしかのウイルス。予防に有効なのはやはりワクチンだという。
「1回の接種だと、約95%の人は十分な抗体価がつくが、残りの5%の人は抗体価が十分にならないため、感染にはまだ弱い状態となってしまう。2回接種をするとほぼ100%の人が十分な抗体価がつくと考えられる。そのためには2回接種が必要であり、ぜひともワクチン接種、2回接種を考えていただきたい」(伊藤院長)
今、日本でも感染が相次いでいるはしか。南菜さんは感染の広がりを懸念しながらこの状況を見ており、「はしかはただの風邪とは違って、本当に重症化するリスクがある。ワクチンでだいたい防げる病気だと思うので、ワクチンを打ってほしい」と訴えた。
SNSの誤情報について伊藤院長は「『自ら進んで感染して免疫を得る』などは大きな間違いで、あまりにもリスクが大きすぎる」と警鐘を鳴らした。
なぜ誤情報が広がってしまうのだろうか? 明星大学心理学部教授で臨床心理士/公認心理師の藤井靖氏は「『ワクチンに対して中立な立場を取ってる人は、どちらかというと否定派の方になびきやすい』という研究データがある。その背景には否定的な情報を発信する人の声は肯定派よりも何倍も大きいという実情がある。しかも人は自分が心配している内容に言及している情報に触れた時に、どうしても選択的に目がいってしまう性質があるため、結果的に不安がさらに強くなる。対策としては、肯定派もデータなどきちんとした情報を数多く発信していく必要がある。ただし、否定派の中には政治的信条や陰謀論、スピリチュアリティに影響を受け、何かを強固に信じきっている場合もあるので、単純にデータや論理での反論や説得が難しい側面もある」と説明した。
※大人もワクチン接種は非常に大切だが、一方で厚労省はワクチンの需要が高まる中で、1回も接種していない子どもの定期接種のワクチンを確保することが必要として、ワクチンの販売事業者などに定期接種を実施する小児科等の医療機関へのワクチンの供給を優先するよう通達を出している。
(『ABEMAヒルズ』より)
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