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【映像】日米首脳会談の真の狙いとは?
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 岸田総理大臣は日本時間の10日深夜、バイデン大統領と会談し、安全保障や経済・宇宙など幅広い分野で連携を強化していくことを確認した。

【映像】日米首脳会談の真の狙いとは?

 「フミオ、ようこそホワイトハウスへ。また会えてうれしい」(バイデン大統領)

 「ジョーから大変心温まる歓迎の言葉をもらった。改めて米国への公式訪問に招待いただいたことに感謝する」(岸田総理)

 なごやかなムードで始まった日米首脳会談。岸田総理は国賓としてアメリカに招かれたが、日本の総理大臣の国賓待遇での公式訪米は、2015年の安倍総理以来9年ぶりだ。

 およそ1時間半にわたって行われた会談では、安全保障・AI・宇宙など幅広い分野での連携強化を確認。

 バイデン大統領は「日本との関係はまさにアメリカにとって同盟が最も偉大な資産であることを力強く証明している」と話し、岸田総理も「日米同盟の抑止力・対処力の一層の強化が急務であることを再確認し、安全保障・防衛協力の強化で一致した」と応えた。

 今回の会談で最大の柱と見られていた「安全保障」。覇権的な動きを強める中国を念頭に、自衛隊と在日アメリカ軍の連携を円滑にすることで、防衛分野の一体化を進めたい考えだ。さらに、アメリカ・イギリス・オーストラリアの3カ国の安全保障の枠組み「AUKUS(オーカス)」が、日本と先進防衛技術分野での協力を検討するとした。

 経済分野においてもバイデン大統領は「経済面において、私たちの関係はかつてないほど強固になっている。日本は米国に対する最大の海外投資家だ」と述べ、現在の日米関係が良好であることを強調した。

 さらにAI・バイオテクノロジーなど、最先端技術の開発でも協力を深めるとしている。他にも宇宙分野では、アメリカが主導する有人月探査の「アルテミス計画」で、日本人宇宙飛行士の参加を発表。

 また、地域情勢をめぐっては岸田総理が「中国をめぐる諸課題への対応にあたり日米で緊密に連携していくことで一致した」と述べ、東シナ海や南シナ海における中国の一方的な試みに強く反対するとしている。

 11日には、フィリピンを加えた初の首脳会談を行う予定だ。

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 このタイミングでの「岸田総理の国賓待遇での訪米」についてアメリカ現代政治外交が専門の前嶋和弘教授は「バイデン政権はこれまでアメリカにとって重要な国のリーダーを国賓として迎えているが、日本の岸田総理は5人目だ。バイデン政権は岸田総理を歓待しながら、日米同盟・経済安保の重要性をもう一度確認した形。総花的ではあったがトランプ前大統領が安倍元総理を招いた時と比べ、事前に担当者が入念な打ち合わせを行なって、アメリカ側からも『こんな話が出る』と言ってあったようで、サプライズはなかったが大きなハプニングもなく行われた」と評した。

 11月のアメリカ大統領選挙は「トランプ氏優勢」の声も聞かれる上に、岸田総理は政治資金問題で支持率の低迷が続いている。アメリカ国民には今回の日米首脳会談はどう受け止められているのか? 

 前嶋教授は「米大統領選の現在の世論調査では完全に5分5分。共和党側には予備選があるため、トランプ氏が勝っているような印象が強いかもしれないが、最近2〜3週間でバイデン大統領が盛り返してきており、ほぼ並んでいるため、まだわからない。その中で、日本としては今のバイデン政権のうちにいろいろ話しておいた方がいい。トランプ政権が誕生した場合には日米同盟が揺れる可能性があるため、その前にしっかり確認し、揺るがない関係でインド太平洋をしっかり守っていくことを強調した形だ」と説明。

 アメリカ国内における岸田総理への認識については、「アメリカ人は日本の首相のことをそこまで分かってはいない。どうしても日本側の方がアメリカを意識する度合いが大きく、対して専門家を除きアメリカ国内では日本のことをあまり知らないことが一般的だ。その意味で、岸田総理については『日本の非常に礼儀正しい首相が来た』という印象で、岸田総理は晩さん会でもしっかりと英語で話している様子などから、岸田総理のことを良く見る人はいるとは思う」と分析した。

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 日米首脳会談では、尖閣諸島への安保条約第5条の適用を再確認、「AUKUS」と日本の協力など、インド太平洋地域の防衛協力などが大きなテーマとなった。

 前嶋教授は「1番のキーワードは中国。アメリカメディアも『中国の現状変更の動きに対して日米が協力した。そのための日米首脳会談が行われた』と報じるメディアが多かった」とした上で「在日米軍と自衛隊の連携強化」については「過去20年、ずっと出ていた話で、有事の際に日米間の担当者がしっかり動けるよう組織的な変革・変更を含めながら動いていく。事前の報道では、『日本とアメリカが一緒に防衛装備品を作っていく』という話が大きく取り上げられていたが、これについては『一緒に作るための協議をしていく』という言葉で終わったのは大きな変化。日本にとっては、まだこの大きな変化についていけない人も多い。簡単に言うならば、日本とアメリカが協力して武器を作る、という話になるので、抵抗を示す世論もあると思う。岸田総理はしっかりと説明する必要がある」と指摘した。

 今回の共同宣言では、AIや半導体、量子コンピュータなど先端技術での協力強化も柱の1つとなっている。その一方で、日本の情報セキュリティの甘さから最先端の機微の情報共有ができないのではないか? という懸念も指摘されている。

 この点について前嶋教授は「日本はアメリカにとって重要な同盟国であって、高い技術を持っていることは間違いないが、安全保障に関する情報が漏れる可能性はやはりある、という懸念は持たれている。そこで日米首脳会談の直前に、日本はセキュリティクリアランスを強化していく閣議決定が国会で話されたがこれは『日本も情報セキュリティー問題に対応している』という方向性で今動いているからだ。『まだまだ足りない』というのがアメリカの見方だが、これも度合いの問題であり、日本がセキュリティクリアランスのレベルを上げていけば、アメリカもそれに見合った技術協力を一緒にやれるということ。日本はようやくその段階に入った、スタートしたということだろう」との見方を示した。

 岸田総理は今回の訪米で、ノースカロライナ州でトヨタが建設を進める電気自動車向け電池工場、そしてホンダのアメリカ航空機事業子会社の訪問も予定しているが、アメリカ国内ではこの構造をどのように受け止められているのか?

 前嶋教授は自身の訪米時に、日本企業の影響を感じる出来事があったという。

 「日本企業のアメリカへの進出はアメリカ全体では見えにくいが、『投資先』では非常に目立つ。私が2012年にケンタッキー大学で講演した際は立ち見が出るくらいの超満員となった。なぜなら、ケンタッキー大学とトヨタの工場は近く、『ケンタッキーの雇用を支えているのはトヨタなのだ』という認識が強く、学術関係者ではない一般の人たちが『日本は今どうなっているんだ?』と熱心に質問しにきた。このようなことは全米各地で『点』として起こっており、11日にバイデン大統領が話していた『100万人以上のアメリカの雇用を支えている』という話はアメリカ全体としては知られていないが、実は日本の企業がアメリカにおける日本のイメージをよくしている面がある」

 さらに、再びトランプ政権となる可能性がある中、日米双方が「現政権の間に決めておきたいこと」が間違いなくあるという。

 「トランプ政権になると“逆戻りする”可能性がある。気候変動対策の協力、ウクライナ支援などについても確実に入っていた。この動きは日本だけではない。アメリカ、イギリス、オーストラリアの3カ国の安全保障の枠組み『AUKUS』についても、トランプ政権になると一気に骨抜きになる可能性がある。その前になんとか日本を入れてAUKUSをそのまま動かしたい、という狙いもある。簡単に言うと“トランプが来る前に”ということだ」
(『ABEMAヒルズ』より)

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