大谷翔平選手の元通訳・水原一平容疑者が大谷選手の口座から24億5000万円以上を不正送金したとして、アメリカ連邦検察は銀行詐欺の罪で訴追したと発表した。
「水原容疑者の量刑」や「大谷選手が盗まれたお金を取り戻せる可能性」などについて、カリフォルニア州で弁護士資格を持つ村尾卓哉氏に話を聞いた。
━━現地でどんな捜査が行われたのか?
「水原容疑者とブックメーカー(賭け屋)のボーヤー氏とのメールの履歴や水原容疑者が銀行の担当者をだましたときの通話記録を調べている。大谷選手も被害者として4月の頭に2回ほど取り調べを受けており、携帯電話を提供し、すべてのメッセージのやりとりやアクセス履歴を開示しているようだ。かなり短期間で総力をあげて様々な証拠を固めて訴追に至った」
━━水原容疑者の量刑はどうなるのか?
「有罪である場合は最長禁錮30年だ。アメリカでは量刑のガイドラインといって『このような犯罪類型だとプラス1ポイント』『こういうバックグラウンドの人はプラス何ポイント』などと加算されていき、縦軸である『犯罪の重さのレベル』、横軸である『前科』が一致するポイントで刑が決まる。水原容疑者の量刑は軽々に言い難いが、2〜3年という罪ではなく、少なくとも7年くらいのところに縦軸・横軸は分布し、そこから司法取引などに応じるかなどで変わってくるだろう」
━━司法取引に応じることで減刑となるのか?
「その通りだ。アメリカでは有罪だと認める代わりに求刑を軽くする『有罪答弁取引』がある。日本人が思い描く『事件の黒幕の情報を渡せば有利に扱う』という司法取引はアメリカでは多くはない。アメリカにおける一般の方が有罪・無罪を判断する陪審員制では、一人でも無罪と言えば無罪になってしまい、一度無罪になると検察官に控訴する権利はない。検察が99%有罪だという証拠を握っていてもリスクがあるため、容疑者が有罪を認めて裁判を受ける権利を放棄することが取引として成立する」
━━水原容疑者は銀行詐欺罪で訴追されたが、違法賭博などの罪に問われる可能性はあるのか?
「可能性としてはゼロではないが、今回禁錮30年という非常に重い刑の科された連邦法違反で訴追されたため、それに追随して上限が3年のカリフォルニア州法違反で当局が訴追するかというと、多分やらない」
━━ボーヤー氏との関係において、水原氏が被害者になる可能性は?
「それはない。水原容疑者は毎日のようにメールでボーヤー氏に『賭け金の上限を上げてくれ』とせがんでいる。そして『これが最後だ』『またすっちゃった、ごめん』などのやり取りがあってボーヤ―氏は『毎週月曜に5万ドル払ってくれたらいくらでも枠は広げてやるよ、ウェルカムだ』と言っており、正に『賭博依存症は怖いな』と思うようなやり取りだ。刑事事件としての被害者にはならない」
━━今後、大谷選手が責任を問われることはあり得るのか?
「それはないと思われる。訴状の中でもはっきりと『大谷選手の携帯を調べたところ、関与が一切認められない』とされている。さらに、今回の送金行為を行ったIPアドレスは水原容疑者が口座にアクセスしているIPアドレスと合致している。『客観的な証拠に基づいて、大谷選手は今回の取り引きにまったく関与していないことが認められている』とはっきり書かれている」
━━大谷選手は盗まれたお金を取り戻せるのか?
「まず水原容疑者には『被害者に対して被害額を弁済せよ』という命令が出るがもう“すっからかん”であるだろうから現実的ではない。次に銀行にも責任があるのでは、と考えられるが水原容疑者と銀行とのやり取りが具体的には分からない。保険適用については保険の内容次第だが、金額が大きいため全額ということはないだろう」
(『ABEMAヒルズ』より)
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