7回目を迎える大会にも、新たな風が吹く。将棋界の早指し団体戦「ABEMAトーナメント2024」は、今大会からより厳選された11人のリーダーがドラフト会議に出席、エントリーチームと合わせて計12チームで戦う。新リーダーも2人誕生したが、そのうち1人が中村太地八段(35)だ。王座の獲得経験もある実力者だが、その誠実な人柄は将棋界ならば誰もが知るところ。1年目ながら、実にリーダーらしいリーダーだ。今大会のリーダー就任に「一つの目標としていたことでもあるので、すごく嬉しい気持ち」と語る中村八段は、早くも調和と強さを併せ持つチームを頭で思い描いた。
中村八段は第4回、第5回大会はチーム羽生、第6回大会にあたる2023ではチーム山崎のメンバーとして参加した。大会初の3連投3連勝も成し遂げたことがあり、超早指しにも高い適性を持つことも証明した。昨年度に順位戦A級入りを果たしたこともあり、晴れて今大会はリーダーに選出。「無事にリーダーになることができました」と、素直に笑顔で喜びを表現した。さらには「リーダーになって選ぶ側の楽しみと難しさ、責任といいますか、いろいろなものがかかっているんだなと思いました」と、まとめ役の重みを早くも感じ始めている。
過去に自身が所属したチームの居心地のよさは、「チーム中村」を構成する上でも重視しているポイントだ。2年連続で指名してもらったレジェンド・羽生善治九段(53)には、大会期間中に自身のYouTubeチャンネルにも出てもらったことがある。「羽生先生に選んでいただいてすごく光栄なこと。すごく優しくしていただいて、いい雰囲気、空気感を作っていただきました」と感謝の言葉が続く。このイメージが強いからこそ、自分のチームも同じようなものを求める。
優勝を目指す強さと、居心地のよさ。両立できれば最高という王道の目標だが、それもまた中村八段らしいところだ。「バランスのいいで、優勝を目指して頑張れるようなチームという風に思っています。先輩、後輩問わず居心地のいい、一つ同じ方向に向かって進んでいけるようなチーム作りを目指したいです」と、堂々と言う。ただ、リーダーとなった自分がどうなるかについては、自分が一番わからない。「自分がどんな感じになるのかわからないです。なんか人が変わったようになるかもしれないので」と微笑んだ。
やるからには勝ちを目指す。自身も大会ではあまり上の方まで勝ち進めていないだけに、団体戦で好成績を収めるうれしさは感じたい。それが自身がリーダーともなればなおさらだ。将来的には、将棋界を背負う人材とも言われている中村八段が、リーダーという立場で戦うことは、今後のおいても大きな意味を持ちそうだ。
◆ABEMAトーナメント2024 第1、2回が個人戦、第3回から団体戦になり今回が7回目の開催。ドラフト会議にリーダー棋士11人が参加し、2人ずつを指名、3人1組のチームを作る。残り1チームは指名漏れした棋士が3つに分かれたトーナメントを実施し、勝ち抜いた3人が「エントリーチーム」として参加、全12チームで行われる。予選リーグは3チームずつ4リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。試合は全て5本先取の9本勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)