紙幣や硬貨と同じように使える中央銀行によるデジタル通貨、CBDC。世界各国でCBDCの研究が進む中、日本でも「デジタル円」の導入が検討されている。実現は可能なのか?
BIS=国際決済銀行は3日、日本やアメリカ、ヨーロッパの中央銀行7行などと共同で、デジタル通貨を利用した国際決済の実用化に向けた実証実験を開始すると発表した。実現すれば、国をまたいだ決済も、安全でしかも簡単にできるようになると期待されている。
現在、世界各国で導入の検討が進んでいるCBDCは円やドルといった法定通貨建てで国が発行するデジタル化された通貨だ。
CBDCには、個人や企業を含む幅広い利用を想定した「リテール型」と、銀行など金融機関同士の取引を想定した「ホールセール型」がある。
中国は数年前から一般市民を対象に実証実験を行うなど、「デジタル人民元」の発行に向けて積極的に準備を進めているが、日本はどの程度進んでいるのか?
元日銀・決済機構局長でフューチャー株式会社 取締役グループCSOの山岡浩巳氏は「ホールセール型であれば、近い将来に実現できる可能性は高いとみている」と話す。
デジタル通貨には、「コストの削減」や「利便性の向上」などのメリットがあげられるが、民間企業の電子マネーやビットコインに代表される仮想通貨と比べて、大きなメリットとされているのが、国が発行するため「安全性が高い」こと。
山岡氏も「大きな支払いをする時に、中央銀行が発行しているデジタル通貨であれば、発行者がつぶれて価値がなくなる可能性はないため、大きな額の支払いに安心して使える」と評価した。
一方でデメリットもあり、「セキュリティ面」や「個人情報の保護」に関して不安視する声もある。
山岡氏は「銀行は集めたお金を貸出、あるいは投資の原資として使っているが、銀行預金からCBDCにお金が移ってしまうとその原資が減ってしまう。また、金融危機が起き、『この銀行は危ないのでは』などという評判が立った際に一気に預金者がお金をCBDCに移すことで、預金の流出が一層加速するのでは」と懸念を示した。
「円」を電子データにした「デジタル円」。この未来の決済インフラを作るためには、民間と中央銀行の協力が必要だと山岡氏は言う。
「例えば、Suicaは非接触型であっという間に(決済)処理できるが、そんなに大きな金額には使われていない。だが、CBDCと連携すれば民間の優れた技術を中央銀行の信用も使いながら大規模な取引にも応用できるかもしれない。あるいは、お金そのものにプログラムを組み込んで『約束していた物が実際に届くのを確認した瞬間に決済する』などといった取引の自動化もできるかもしれない。可能性はいろいろ広がっていく」
(『ABEMAヒルズ』より)
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