「ドンドン」「ワクワク」など、音や状態を表す言葉「オノマトペ」。これらの言葉を見たり触れたりできる一風変わったイベントが開催されている。
「ニャー」という言葉を発するだけで身体能力が上がったり、匂いが言葉を呼び覚ますことはあるのだろうか…?
「ドキドキ」や「キラキラ」などの擬音語や擬態語、オノマトペの持つ不思議な魅力を五感で楽しめるのが、ITOCHU SDGs STUDIOで開催中の「オノマトペ処方展」だ。オノマトペにはどんな力があるのか?『ABEMA NEWS』の楪望キャスターが、伊藤忠商事 企画担当・菰田有花さんと体験した。
楪:何やら広いスペースですが、こちらは?
菰田:スポマトぺというコーナーです。オノマトペには体の潜在能力を引き出す力があるのではないかと言われているので、さまざまな体力測定のコーナーを用意しています。
オノマトペを声に出しながら運動すると、いつもより体が柔軟になるなど思わぬ力が引き出せるという。。まずは前屈に挑戦。声を発さずに行った1回目は46cmだった。これを「ニャー」というオノマトペを声に出しながらやってみるとどうだろうか。
楪:先ほどは46cm。それ以上になるのか、いきます!ニャー! え!?すごい!
菰田:すごい、52cm。6cmぐらい伸びましたね。
楪:本当ですか?
菰田:本当なんです。個人差はあるのですが。
楪:1回目、手抜いてないですからね笑。
菰田:オノマトペを使うことで緊張が和らいだり、逆にしっかり力が入ったり、そういったところに効果があると言われています。
楪:例えば、スポーツ選手がボールを打つタイミングなどで声を出しますよね。
菰田:あれもすべてオノマトペです。
楪:意味があるんですね。
ではジャンプではどれだけ影響するのか。「とうっ!」というオノマトペで試してみると…
楪:とうっ!
菰田:39cm!
楪:おーっ!6cm伸びた!やっぱり効果あるんだ。
潜在能力を引き出す力がありそうなオノマトペ。運動中は声を出した方が調子が上がるかもしれない…
続いて、「さわるかぐマトペ」を体験。物に触った感覚やニオイを頼りに、オノマトペを思い浮かべてみるというコーナーだ。小さな突起がたくさんついたボールを触ってみる。
楪:まず「トゲトゲ」。柔らかいから「プニプニ」「ツンツン」とか?「イガイガ」。
菰田:今出してもらった「イガイガ」の他には「ムニュムニュ」だったり、「ぷにゅぷにゅ」だったり。人によって表現はさまざま。
ニオイのオノマトペも試してみると…
楪:おー!これなんだろう…まず「ツーン」としますね。「ピリピリ」「ビリビリ」、しびれる感覚もありますし。
感触やニオイからいくつも出てくるオノマトペ。実は日本は、世界でもオノマトペの数が特に多く、「オノマトペ大国」と言われているそうだ。他にも、スタンプを押すことで、自分の心の状態を見ることができる「わたしの処方せん」コーナーや、コミュニケーションが楽しくなるような、オノマトペの新しい使い方を学べる「新薬マトペ」など展示が盛りだくさんだ。
楪:こうみると、例えば「ガクブル」「ピエン」とかも昔はなかったような言葉がどんどん新しくオノマトペとして生まれてきてるんですか?
菰田:3歳の子どもにショベルカーを見せて「表現してみて」と言うと、新しい存在しないオノマトペを口にするような実例もある。新しくどんどん人間の知能で生み出せる言葉というのがオノマトペの特徴です。
オノマトペを社会で活用しようという試みもある。例えば、上野駅などに実験的に設置されていた「エキマトぺ」は、駅のアナウンスや電車の音などをAIで識別し、リアルタイムにオノマトペとして表示する装置だ。聴覚に障害がある人にも、視覚的に音を楽しめるようになっている。
同じく、オノマトペを可視化することで聴覚障がい者にスポーツ観戦をより楽しんでもらえるシステム「ミルオト」の開発も進んでいるという。
菰田さんは、「オノマトペは誰もが日常的に使っている言葉で、誰にでも伝わりやすい言葉として実は社会や日常の課題を解決する可能性があるのではないかと気付いてもらうきっかけになれば」と、企画への思いを語る。
企画を訪れた人たちに反応を聞くと、「オノマトペがこんなにいっぱいあるんだなと、改めて字で見るとすごく感じて、子どもにもわかりやすくていいなと思ったので、どんどん使っていこうと思う」「言葉の力ですごく能力が上がったり、オノマトペにそんな力があるんだなと思った」と話している。なかには新しいオノマトペを発見したという人も。
楪:これ使おうかなっていう言葉はありましたか?
来場者:「めうめう」です。
楪:どういうときに使ったらいいんですか?
来場者:わからないけど、心が温かくなったら使おうと思います。
オノマトペの可能性について、コピーライターで世界ゆるスポーツ協会代表理事の澤田智洋氏は「言語化というのは、ある事象を言葉で割り算するようなもの」と話す。
「例えば『お腹が痛い』といった言葉でこの状態を“割り算”すると、必ず言語化したときに“割り切れない何か”がある。言葉は絶対に不完全なので、オノマトペは『キリキリ』『ズキズキ』などでそれを補完してくれるとてもいい言葉だ。オノマトペがない日本社会はもっとすれ違いや誤解が生じると思う。それが『ふわふわ』とか『にゃんにゃん』などの言葉で通じるところがある」(澤田氏、以下同)
「娘と川で遊んだとき、絶対に『さらさら流れてる』って言わないように、自分の耳で聞いたまま伝えようとした。とはいえ、水の流れが『きゃーきゃー』に聞こえたと伝えたところ娘は全くピンときていなかったが笑。自分なりにオノマトペで世界を捉えて表現するのは遊びとしても楽しい」
オノマトペは、きちんとした言葉では表せられない“こぼれてしまう感情”、人間の表情や空気感も表すことができる。
澤田氏はオノマトペの可能性に期待を寄せる。「オノマトペは暗号みたいなものだから、コミュニケーションにうまく使えるといい。例えば夫婦喧嘩した時には、絶対お互いに語尾に“むにゃむにゅ”を付けるといったルールを決めておけば、“なんで皿洗ってなかったのむにゃむにゅ”みたいな感じで笑、オノマトペを介在させることによって、ちょっと我に返るかもしれない」
番組の徳永有美キャスターは「人間は生きていく上で、言葉にしすぎるとただただ傷つくことがたくさんある。ごまかしたり、ふわっとした音でコミュニケーションを取るのは大事かもしれない」と話す。これについて澤田氏は、「言語化が大事だと技術文脈で言われるが、逆も大事だと思う。僕は言語にしすぎないことを『なんとなく化』と呼んでいる。怒っていても『腹立つ!』ではなく『キーッ!』と言うほうがいい場合もある」と語った。(『ABEMAヒルズ』より)
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