インバウンドの増加や国内の行楽客が回復し、電車など公共交通機関が混雑するようになったことで、不満の声が出ているのが「みどりの窓口」。JR東日本はコロナ禍だった2021年、ネットでのチケットレス化推進や感染対策などのため、440カ所あったみどりの窓口を2025年までに140カ所まで削減すると発表。現在209カ所まで減っている。
JR東日本は8日、みどりの窓口の削減を一時凍結すると発表した。いまだに対面販売を望む人が一定数いること、一部の割引や、切符や定期券の区間変更など、窓口でしかできない業務があることに加え、インバウンドの増加などを理由だとしている。しかし、「発券システムの使い勝手の悪さを改善すべきでは」という指摘も。
デジタル化が進む中、電車など公共交通機関の対面サービスはどこまで維持すべきなのか。『ABEMA Prime』で考えた。
JR東日本で17年勤務したライトレール社長の阿部等氏は「窓口を減らしても行列ができないよう、オンライン購入や話せる券売機などを充実させるステップを踏まずに強引に閉めてしまったのが問題。コストを節減する、利用者に便利なものを開発するという流れは間違いないが、残念ながらその中身が伴っていなかった」と指摘。
一方、乗り鉄・書き鉄のフリーライター・杉山淳一氏は「凍結では足りない。むしろ窓口を増やしたほうがいい」と主張。「コロナ禍で利用者がガクンと減ったが、今また戻ってきたことで渋滞が起こっている」とし、デジタル化の課題をあげる。
「インターネットはクレジットカードが必要になってくるが、中高生はカードを持ってないかもしれない。券売機は現金でもできるが、高齢者はどうしてもボタン操作が苦手だ。それから障害のある人はサポートが必要だし、外国人観光客への対応もある。世の中、多様性と言っているわりには、デジタルについてこれない人に関して許容が低い感じはする」
■各社のサービスによって乗り方に違いも
東京から大阪へ新幹線で出張する場合、えきねっとで購入した時のきっぷは、行きはJR東日本かJR東海の券売機で、帰りはJR東海の券売機で受け取る必要がある。一方、みどりの窓口であれば、いずれもその場で購入と受け取りができる。
杉山氏は「みどりの窓口はJRグループ全国共通のサービス。それがネットやアプリになった途端に境界ができ、使い勝手が悪くなってしまった」と指摘する。
モデル・ラジオナビゲーターの長谷川ミラは「東京を基準に、西に行く時は『スマートEX』、東北に行く時は『えきねっと』と分けている。これは面倒くさいので、希望としては全部まとめてほしい」と訴え。これに杉山氏は「ユーザー側が知識を持っていないと使いこなせない状態というのはちょっとおかしい」との見方を示した。
阿部氏は「全国で統一性があることと、会社ごとの工夫によって競争が働いて良い方向にいくこととの、バランスの問題だと思う。あとは窓口販売とネット販売で値段差をつければ、ネット販売に移るインセンティブが働くし、お客様も納得感がある」と推奨。「いきなり窓口を減らして社会に影響を与えていると同時に、自ら売上を減らしてしまっている。30分も行列に並ぶんだったら車や飛行機で行くという人が、この1年間は全国で毎日数千〜万単位で出たのではないか」と推察する。
その上で、「公共性と、企業経営上も問題だ。ただ、一旦組織で決めたことを改めるのは、社長といえどもそう簡単にできる話ではない。マスコミに叩かれているわけでもないのに謝罪して、方針変更をしたのは大英断だ。これを機に良い方向にいってほしい」と期待を寄せた。(『ABEMA Prime』より)
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