不倫をされた妻を名乗る“サレ妻”を名乗るアカウントがここ最近SNSで増えている。彼女たちはなぜネット上で声を上げるのか?
「今年の1月に結婚すると話していたが、年末の12月末にお別れをした」
『ABEMAヒルズ』の取材に答えてくれたのは、生後9カ月の子を持ち、妊娠7カ月だというA子さん(仮名)。
A子さんは生まれた子と妊娠中の子の父親である男性と婚約をしていたが、結婚直前に男性の浮気が発覚し、婚約を破棄。現在は弁護士を通じて、慰謝料と養育費の請求をしているという。
「時間が拘束されたり、弁護士費用がかかったり、思い出したくないことを思い出すなどの気持ちの負担も苦痛でしかなく『もう(慰謝料請求などを)しないで縁を切ろうか』と思うこともあるくらいつらい」
そんなA子さんが「励まされた」と話すのがSNSの“サレ妻”のアカウントだという。
“サレ妻”とは、夫に不倫をされた妻のことを指す。A子さんは、SNSで自分自身と同じような境遇に立っている「サレ妻」と名乗る人たちの投稿が励みになっていたという。
「限界ギリギリのところで、それでも自分の生活だったり、お子さんのためだったり…。不倫されて別れる選択をする人、いろんな理由で(婚姻生活を)続けている人がいる。(それを見て)『自分だけじゃない』と」
A子さんが目にしていたような”サレ妻アカウント”はここ最近、SNSで数多く見られるようになっている。
「『不倫された』『浮気された』という話は周囲に相談しにくいような内容だ。その上、周りの人に言ったら『名誉毀損』と相手から言われてしまいかねない。どこにも助けてくれる場所がないから『SNSで言うしかない』という方が多いと思う」
“サレ妻アカウント”が増えた理由についてこう話すA子さん。
その一方、夫の不倫相手の個人情報や写真を晒すといった過激な行為に及ぶ人もここ最近では見られるようになっている。
「サレ妻に限らず、現実ですごい我慢したり辛い思いをしている中、どこかで本音を吐き出す場所がないと自分を保てなくなるのでは」
許される行為ではないが、それほどまで思いつめてしまう人もいるのではないかとA子さんは話す。
不倫は犯罪ではないため、民法上の「不法行為」に当たる場合は慰謝料という形で民事上の責任を追及できるが、懲役や罰金などの刑罰を科されることはない。
このような中、A子さんは社会全体として不倫をされた側が守られる仕組み作りを訴える。
「カウンセリングや法律の見直しなど、やり方はいろいろあると思うが、それぞれにあったケアの方法をとれるような仕組みができたらいい」
その上で、浮気や不倫を“する側”に対しても思いを語った。
「浮気された人、不倫された人は別に浮気相手・不倫相手に負けたと思って嫉妬して傷ついているわけではない。一番愛して信じていた人に裏切られたことがつらくて傷つく。裏切らないでください。(浮気・不倫を)しそうになっている人、浮気ぐらい不倫ぐらいって考えている人に伝えたい」
SNS上で不倫について明かすアカウントが増えていることについて、精神科医の木村好珠氏は「自分の中に溜め込まないという意味では悪くない使い方だが、個人情報を晒すことは全く別の話だ」とした上でSNSが過激な行動を後押ししてしまう背景について説明した。
「SNSは自分と同じ意見の人だけを抽出できてしまう。そのため、同じような体験を分かち合って元気になれる一方で、似たような悩みを抱える人たちが集まったことで少し過激な方向に進んでしまう『リスキーシフト』という現象に陥る可能性がある。つまり、普段であれば『個人情報を晒す行為は名誉毀損にもなるし良くないよね』と理性が働くところで『大丈夫だよ。だって本当に辛いことでしょ?』などと周りに言われ、どんどん過激になってしまうことがある」
さらに木村氏は「女性側は女性を晒す」と指摘。
「男性が妻に浮気をされた場合、自分の妻を攻撃しようとするが、女性の場合、夫の不倫相手である女性に攻撃が向く。女性には自分よりも他者を優先する母性があり、人に何かしてあげることに喜びを感じる傾向があるが、そんな自分の立場を他の人に取られそうになると嫉妬心に火がつく。人間には承認要求の前に『自分はここに属している』という『所属の欲求』があるが、そんな立場を犯すような相手に対して攻撃をしたくなる心理が働く」
木村氏は「男女の不倫の傾向にも違いがある」と説明する。
「男性は肉体的な欲求が強い。女性に関しても肉体的な欲求が1番だが、その次に精神的な欲求が絡んでくる。そのため、女性の方が『精神的に自分を必要とされたい』という気持ちから浮気や不倫につながってしまう」
(『ABEMAヒルズ』より)
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