<大相撲五月場所>◇十三日目◇24日◇東京・両国国技館
大関・琴櫻(佐渡ヶ嶽)が前頭十枚目・湘南乃海(高田川)を立ち合い変化からの上手出し投げで下し、3敗対決を制して10勝目を挙げた。まさかの変化に館内騒然となり、「お客さんドン引きや」「会場がざわついてる」などとファンもどよめいた。最も印象的だったのが、初の賜杯が遠ざかる痛恨の4敗目を喫した湘南乃海。悔しさを押し殺して浮かべた表情と深々の一礼がすべてを物語っていた。
十二日目までを終えて幕内優勝争いは琴櫻、小結・大の里(二所ノ関)、湘南乃海、前頭十四枚目・欧勝馬(鳴戸)の4人が3敗でトップに並んでいた。十三日目の取組では、琴櫻と湘南乃海の直接対決が組まれ、3敗同士の白熱した相撲に期待が寄せられていた。
だが取組は一瞬で決着がついた。立ち合い琴櫻が右に変化すると、湘南乃海はそのまま前方へ突っ込んでしまい、前のめりに転がった。予想外の琴櫻の変化に館内騒然となり、客席からはどよめきが沸き起こった。敗れて4敗に後退した湘南乃海は起き上がると、背中にべっとりと土をつけ、悔しさを押し殺しながら深々と礼をして花道を下がっていった。突き落としのように見えたが琴櫻が上手に手をかけており、決まり手は上手出し投げ。勝った琴櫻は10勝目を挙げた。
取組を受けて、ABEMAで実況を務めた藤井康生アナウンサーは「3敗同士の熱戦を期待しましたが、呆気なく終わってしまいました」とポツリ。決まり手が上手出し投げであることが館内にアナウンスされると、「あ、上手を取っていたんですね。それにしても、土俵の砂をべったりと背中にもらった湘南乃海は4敗となりました」と語った。
琴櫻の立ち合い変化にがっかりした観客も少なくなかったようだが、ABEMAで解説を務めた元横綱・鶴竜の音羽山親方は「琴櫻のほうが勝負に徹して相撲を取った」と好意的にコメント。「湘南乃海の“(相手が)思いっきり当たってくるだろう”という考えが甘かったなと思います」と続けると、「でも、まさかこうやって(琴櫻が)横に動いてくるとは思わなかったと思います。とにかく思いっきり頭で左の肩にいって自分の立ち合いだと思ったと思いますので、しょうがないですね」と湘南乃海の悔しさにも理解を示していた。
館内騒然となった琴櫻の立ち合い変化に、ABEMAの視聴者からは「お客さんの顔よ」「お客さんドン引きや」「会場がざわついてる」「ざんねんだわ」とコメントが殺到。一方、「食うほうが悪い典型」といった意見や「こういうのも相撲の面白さだと思う」と楽しむファンもいるなど、さまざまな声が寄せられた。
このほか十三日目の取組では、大の里が圧倒的パワーで前頭四枚目・宇良(木瀬)を下して3敗をキープ。欧勝馬は敗れて4敗に後退した。幕内優勝争いは3敗で琴櫻と大の里がトップに立ち、4敗で大関・豊昇龍(立浪)、関脇・阿炎(錣山)、前頭筆頭・大栄翔(追手風)、湘南乃海、欧勝馬の5人が追いかける混戦模様の展開となった。(ABEMA/大相撲チャンネル)