上川外務大臣が中心となり外務省が立ち上げた、ポストSDGsを考える有識者懇談会。産業や学術など各界の有識者が集まり、第1回の会合が4月に行われた。
【映像】ひろゆき「言える人ほぼいない」 SDGs“17目標”一覧
「SDGs」とは、貧困や飢餓の解消、環境や資源の保全、ジェンダー平等など17の分野で目標を決め、2030年までの達成を目指すというもの。2015年に国連で採択され、日本は2016年に推進本部を設置して本格的に動き出した。今回のポストSDGsは、その国際的な取り組みを日本がリードし、2030年以降の未来も見据えていこうというものだ。
一方で、「中身が見えてこない」「あと6年で達成なんてとても現実的とは思えない」といった声も。そもそも必要なのか、日本はリードできるのか。『ABEMA Prime』で考えた。
■「『SDGs』で盛り上がっているのは日本だけ」
信州大特任教授でESGコンサルタントの夫馬賢治氏は「あまり期待していない」と述べる。「外務省はSDGsから一番遠い省庁。目標達成のために重要なのは産業政策と言われていて、どういうイノベーションを生み出していくのか、企業は何をしていくのか。例えば経産省や農水省、国交省がやらなければいけないが、外務省は触れないだろう。ポストSDGsで何か出てくるということは、この懇談会からはないと思っている」。
また、「SDGsで盛り上がっているのは日本だけ」と指摘。「SDGsという言葉が国連でできた時、一般市民にもわかりやすい17のアイコンがあって、“世界でこういう課題がある”というのはわかりやすかった。ただ、これらは直前にバタバタと決めたわけではなく、元々ずっとやっていること。日本では時代の転換点のように語られているが、そこが国際感覚がない1つの現れ。Amazonでピンバッジを売っているのは日本だけだ」と述べる。
SDGsの達成度で、日本は166カ国・地域の中で21位(2023年)。「良質な教育」「産業と技術革新の基盤」は達成できているが、深刻な課題として「ジェンダー平等」「つくる責任 つかう責任」「気候変動対策」「海の環境保全」「陸の環境保全」があげられている。
オウルズコンサルティンググループCEOの羽生田慶介氏は「ヨーロッパが作った世界観の中で、その地域を抜いた国で日本はトップで、まだ扱いがいい。GDPやIMDの世界競争力などよりは、こういったもので勝負したほうが日本は産業としても与しやすいと思う」との見方を示す。
ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏は「SDGsの17目標を言える人はほぼいない。“二酸化炭素を減らそう”なら10年後みんな覚えているが、SDGsが何かよくわからないまま良いことをした気分になれるだけで、次に名前が変わって忘れられて何も残らない。それをやったほうがいいというのはよくないと思う」と苦言を呈する。
これに夫馬氏は「“SDGsでイノベーション”という言葉で語っているのが日本。例えば17のうち4、5つが環境にまつわるテーマで、こことの相性は世界中で認知されている。一方、企業にとって貧困や飢餓の問題はまだ遠い。そもそもSDGsという言葉が生まれる前から、イノベーションと親和性があるものについて産業界は動いていた。親和性が低い領域についてはまだ手が出しづらいという課題が残っている」とした。
■ルールメイクで先行する欧米 日本が目指すべきは?
羽生田氏は、欧州やアメリカがルールメイクで先行する中で、日本も積極的に出ていくべきだと主張する。「“ヨーロッパの言うとおりにしても世の中は良くならなかった”という恨みは、アフリカなんかでは強い。それこそ東南アジアがこれだけ成長したのは日本のおかげではないかと、日本にルールメイクをしてほしいという思いはそこそこある」「企業レベルでは、もっと“言ったもの勝ち”という気持ちでやったほうがいい。日本企業はどうせ自分だけのためのルールは作れないので、どんどん主張して世の中に揉んでもらうべきだ」。
そこで目指すべきは「人権分野ビジネス」だという。「日本らしさを価値にしていくことが大事。“悪さをしてはいけない”という類のものはヨーロッパが強いが、日本はマイナスをゼロにするのではなくゼロからプラスにするのが強い。生きづらさをなくしていくなど、できる余地はいっぱいあると思っている。そこをマーケットにして、ルールメイクをしていく」との考えを述べる。
一方、夫馬氏は「高齢社会」をテーマにあげ、「SDGsには“良いものを食べて、交通機関に乗って憩いの場で遊びましょう。こういう場を作りましょう”と書かれているが、こんなことで日本の高齢社会問題は解決しない。いつまで働くか、体力が落ちても働くにはどうするのか、といった視点が一切ないわけだ。せっかく日本がイノベーションを起こそうとしても、世界に関心を持ってもらえなかったらお金が入ってこないし、海外で仕事も生まれない。日本がまさに今やろうとしている分野を盛り込んでいくことだ」と訴えた。
ひろゆき氏は「夫馬さんの言っていることはありだと思う。例えば、北欧は高齢者になるともう開腹手術をしないし、がんになっても痛み止めを飲ませるだけだ。しかし、日本は80歳でも90歳でもお金がかかる治療をする。これを逆にルールにして、“あなたたちの国は高齢者に厳しすぎる”と言い、他の国の社会福祉費を多くする。そうすると、日本だけが弱い状態から少し上がるのではないか」と持論を展開した。(『ABEMA Prime』より)
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