穏やかな18歳の若者だが、その勝ちっぷりは壮絶かつ圧巻だ。将棋界の早指し団体戦「ABEMAトーナメント2024」予選Dリーグ第1試合、チーム稲葉 対 チーム佐々木の模様が6月1日に放送された。チーム稲葉の藤本渚五段は現役最年少棋士。若手棋戦でも優勝歴があり、2023年度には51勝で最多勝にも輝いた若手期待の星だ。第4局では、相手チームのリーダーでA級棋士の佐々木勇気八段(29)と対戦。切れ味抜群の指し回しで快勝すると、佐々木八段からは「ボコボコにされました…」と嘆くことになった。
藤本五段は2022年10月に四段昇段を果たしてプロデビュー。初年度こそ7勝5敗、勝率.583と新四段としては苦戦したが、2023年度にブレイク。各棋戦で勝ちまくり、60局も指し51勝9敗、勝率.850と圧倒的な成績を残し、将棋大賞では最多勝を獲得、勝率も藤井聡太竜王・名人(王位、叡王、王座、棋王、王将、棋聖、21)と最後まで争うなど、飛躍的に注目度を高めた。レーティングでもトップ20に入り、今後の活躍がますます期待されている。
成長ぶりを見せたのは第4局だ。A級棋士・佐々木八段との対戦は先手・藤本五段が矢倉、後手・佐々木八段が雁木のスタートに。雁木得意の藤本五段にとっては珍しい出だしになったが、これが相手の虚を突く形にもなり、序盤から気持ちよく攻めてリードを奪った。
どちらかと言えば受けに定評がある藤本五段だったが、ペースを握った将棋で攻めの手がどんどんと伸びていった。解説の村中秀史七段(43)が「指し手が早いので、形勢に自信を持っているかもしれないですね」というように、テンポのいい指し回しで佐々木八段は防戦一方に。終盤には、なんとか粘ろうとする佐々木八段の手をことごとく切り返し、これでさらに痺れることに。村中七段も「いてててて。全て指した手を逆用されている」と、佐々木八段の心情を代弁するような解説もあった。
完璧な内容で藤本五段は89手で勝利。敗れた佐々木八段はチームメイトの元に戻ると「ボコボコにされました。これ以上悪いのはないんで」と苦笑いするしかなかった。
◆ABEMAトーナメント2024 第1、2回が個人戦、第3回から団体戦になり今回が7回目の開催。ドラフト会議にリーダー棋士11人が参加し、2人ずつを指名、3人1組のチームを作る。残り1チームは指名漏れした棋士が3つに分かれたトーナメントを実施し、勝ち抜いた3人が「エントリーチーム」として参加、全12チームで行われる。予選リーグは3チームずつ4リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。試合は全て5本先取の9本勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)