「恋愛していないだけでその子の性格に難があるんじゃないかとか、恋愛している人が人として優れているみたいに思われてる風潮はすごく感じる」
そう話すのはデミロマ会議さん。恋愛指向のひとつ「デミロマンティック」を自認している。
デミロマンティックとは、深い信頼関係や絆がある人にのみ恋愛感情を抱くが、基本的にめったに他人に対して恋愛感情を持たないセクシュアリティのこと。
「(交際は)確かに本当に信頼している人とじゃないと嫌という人は多いと思う。多分倫理的というか頭で考えてそういうふうに制限している気がする。しかし、デミロマンティックは本当に思いすらしないというか、『信頼できる人じゃないからやめよう』ではなく、そういう感情が湧いてこないというのが大きな違いだ」
他の人が当たり前のように人を好きになったり、出会って数カ月で付き合ったりする恋愛のサイクルについていけないデミロマ会議さん。自分の恋愛観を説明しても、なかなか周囲の理解を得られなかった。
周囲に「理想が高いんじゃない?」「一回付き合ってみたら変わるよ」などと言われるうちに、次第に周囲に対して心の壁ができてしまったという。しかし、自分の恋愛観に「デミロマンティック」という名前があることを知ったとき「すごく安心した」という。
「自分みたいな感覚が言葉があることによってある種『認められた』じゃないが、すごく安心というか腑に落ちたというか、こういう言葉を知ることができてよかった」
ダイバーシティ採用広報サイト「JobRainbow」によると、恋愛指向だけでも10以上に細かくカテゴライズされている。自身もLGBT(ゲイ)の当事者として「JobRainbow」を立ち上げ、マイノリティの人々の就職や転職を支援してきた星賢人さんは、性的指向や恋愛指向の定義が細分化されることの意義について話す。
「当事者自身もなかなか言葉にたどり着けなくなっているくらい増えている。言葉があることによって属性やイメージが固定化されやすく、言葉が増えすぎることはデメリットにもなり得るが、言葉があることでコミュニティと繋がれるようになる。デミロマンティックも『自分と同じ恋愛の仕方をする人がいるんだ』『自分は大丈夫なんだ、ちゃんと生きていけるんだ』と気付けるのが大きい。安心感を得られるという意味で大きなメリットがあるのでは」
またデミロマ会議さんが悩んでいた「恋バナ」については、「世間話の延長線上にある一般的なテーマだと思う」と前置きした上でこう話す。
「こういう人たちがたくさんいるから『絶対恋愛の話をしちゃダメ』みたいなマインドになると話せることがどんどんなくなってしまう。そのため、『恋愛の話はしちゃだめ』ではなく、例えば話す時に相手の様子を見て『そういう話って嫌な人もいるよね』という前提があれば、気付けたときはそれ以上深入りしないなど、いろんな人の中に前提条件を増やしていくことができればもっと気持ちよくコミュニケーションができる」
性的指向も恋愛指向も、個人のアイデンティティ。年齢やルーツの違いといった、人々が当たり前のように持っている個性の一つとして、自分自身・そして周囲に受け止めてほしいと話す。
「まずは自分の状態を素直に受け止めて肯定することが大事だ。もし悩んでいる方が周りにいれば、『あなたはそのままでいいんだよ』と言葉をかけて、その人をありのままで受け止めていただけたらと思う」
ノンフィクションライターの石戸諭氏はデミロマンティックについて「考えてみると、一人ひとり恋愛の感覚やどういう人を好きになるのかはバラバラであり、バリエーションがある。さまざまなところで『多数派とは違う』という人がいるため、今後はいろいろな言葉や概念が広がっていくだろう。これは悪い傾向ではないと思う」と述べた。
その上でいわゆる「恋バナ」について「そこまで無邪気にするものではない」と指摘した。
「例えば、僕らの若い時は男子同士が集まったとき、軽い気持ちで『誰が好きなの?』などと聞くことがよくあった。多数派は女性を恋愛対象にしているので、こういう話が始まると無意識のうちに女性をイメージして会話していた。しかし、“よくある話”でも、あとでゲイの当事者から『自分に嘘をつかなくてはならないから恋愛話が苦しかった』という話を聞いた。それを知った時に、少し配慮できるようになる。これは『恋バナはしちゃいけない。タブーにしよう』という話ではなく『恋バナは無邪気にやるような話ではない』ということ。親しい友人同士で無邪気に話していい局面とそうでない局面があることがわかる。そんなふうに考え方が変わっていくことが大事だ」
『ABEMAヒルズ』の柴田阿弥キャスターもこれに同意し、「友達であれば理解を求めることもできるが職場での恋愛の話はタチが悪くセクハラになりかねないと思う。私も『なんで結婚願望ないの?』などと言われたことがあった。その際は周囲が『それはハラスメントではないか』と指摘して距離をとってくれたが、そもそも職場の人にそんなことを言われる筋合いはない」と自身の経験を振り返った。
石戸氏はコミュニケーションに必要な配慮について指摘する。
「同じ職場でもいろんな考え方の人がいて、『自分が思う当たり前は当たり前じゃない』と常に思っていなければ、うっかりどこかで誰かの傷をえぐるようなことを言ってしまうかもしれない」
(『ABEMAヒルズ』より)
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