将棋の藤井聡太王位(竜王、名人、王座、棋王、王将、棋聖、21)に渡辺明九段(40)が挑戦する伊藤園お〜いお茶杯王位戦七番勝負第1局が7月7日、愛知県名古屋市の「徳川園」で2日目の対局を行っている。ABEMAの中継には、鈴木大介九段(49)が出演。両者の対戦成績が藤井王位の20勝4敗と大きく偏っていることについて、「天才は天才に相性が悪い」と考察した。
藤井王位と渡辺九段の公式戦初対戦は、2019年2月16日に行われた第12回朝日杯将棋オープン戦の決勝戦。当時七段だった藤井王位が大会連覇をかけて最強のタイトルホルダー・渡辺棋王(当時)と対戦した。結果は16歳6カ月の藤井七段が渡辺棋王を破り、連覇を達成。この衝撃は今もファンの記憶に強く残されている。
その後は、タイトル戦を主戦場として棋聖戦、王将戦、棋王戦、さらに名人戦の大舞台で激突。5期のタイトル戦のすべてを藤井王位が制し、渡辺九段は保持していたすべてのタイトルを藤井王位へ譲る結果となった。これまでの通算成績は藤井王位の20勝4敗。将棋界をけん引するトップ棋士の渡辺九段がこれほどの苦戦を強いられている事実は、将棋界の七不思議と言っても過言ではない。
ABEMAの中継に出演した鈴木九段は、「渡辺さんは“羽生世代”を打ち破った大天才だが、天才は天才に相性が悪い」とズバリ指摘。さらに、「それまでは自分が天才として優位性を持って将棋を指していて、相手が畏怖を感じて指してくれていたところに藤井さんが出てきた。どっちが天才かわからない、同じくらいの天才であると仮定した時に、今まで戦ってきた相手が渡辺さんに対して思っていた(畏怖の)気持ちが藤井さんには無い。そこが結構大きいのでは」と加えた。
また、「将棋は実力のゲームだが、その実力を決めるのは人間なので“信用のゲーム”なんです。相手より強い、天才だと思わせることが結果的に勝ちにつながるところがあるんです」と自身の経験を踏まえた印象を語った。
それでもここまで星の差が付いている事実は、鈴木九段にとっても驚きの様子だ。「初手合いの頃から、渡辺さんはやりづらかったと思います。『藤井さんはどれほどのものぞ』『自分もこれほどの実績を積んでいるんだから自分の方が厚いだろう』という気持ちから、『なかなかやるな』となり、数年で藤井さんがタイトルを獲っている中で当たっていたので、対策も立てづらかったでしょうし、指しづらさもあったと思います」とコメントした。
捲土重来を期して藤井王位と6期目のタイトル戦の舞台に上がった渡辺九段に対し、「今回は約1年ぶりに挑戦者になったということで、渡辺さん自身の中でも消化できてリフレッシュした気持ちで指せるのではと思います。王位戦は初挑戦ということで、今回にかける思いも強いのでは」とその思いを汲んでいた。
(ABEMA/将棋チャンネルより)